風起洛陽 ~神都に翔ける蒼き炎~ (风起洛阳)

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うん。面白い。えー!あの人そうだったの!とか。この人はそうでしょうねと思ったり。伏線はちゃんと全部回収してくれる感じです。

揺るがぬ絆、貫く愛――

武則天が建立した王朝・武周の時代、神都・洛陽は不穏な空気に包まれていた。ある日、訳ありの父娘が朝廷高官の百里延(ひゃくりえん)を父に持つ男・百里弘毅(ひゃくりこうき)に会いにやってくる。二人は密告をするために来たというが、百里弘毅はなぜ自分のもとに訪れたのかまったく心が当たりがなかった。
話を聞こうとすると、突然刺客が現れ父娘は殺されてしまう。その後、百里延の懇願により幼なじみの柳然(りゅうぜん)と婚姻を結ぶことになった百里弘毅だったが、婚礼の晩、百里延が殺されてしまう。
容疑をかけられたのは、不良井と呼ばれる貧民街で暮らす高秉燭(こうへいしょく)。5年前に何者かに仲間を殺され、仇討ちのために1カ月前から刺客を尾行していた男だった。
宮中警備を担う内衛の武思月(ぶしげつ)は、皇帝から命を受け高秉燭を捕まえるために彼を追う。しかし事件の調査を続けるうち、武思月は高秉燭に特別な想いを抱くようになる。

原作は「三国機密」「長安十二時辰」の馬伯庸。長安の次に洛陽ということでしょうね。面白かったけれど、個人的には、「長安」の作り込み方のほうが好きかな。「長安」ほどの衝撃はなかったけれど、「長安」を見てなかったら、おー!と思ったと思う。

時代設定としては、「神都」と呼ばれた洛陽に女帝(聖人)がいるというだけで、則天武后時代、「周」と決め打ちできます。一応国名は出さないということになってるのでしょうか。

2021年 风起洛阳

お話は

不良井という、日本で言う被差別部落的なところかなあ?それとも異民族系かなあ?というようなところの出身の、高秉烛は仲間(自分を兄貴分と慕ってくれた子供たち)仇討ちがしたい。高秉烛はもともと不良師(「長安」でも出てきた、岡っ引きの親分さんみたいなの)をやってたっぽいんですよ。何かの事件で仲間を殲滅させられ(「長安」そっくりだぞ?)、大理寺で死体係みたいなのをやりながら事件を追っかける。

百里弘毅は工部尚書の百里さんの子です。何かに巻き込まれていくのだけど、初めからひねくれ気味で、ネックになっていたのは兄さんのことかな。柳さんのお嬢さんと結婚しろと言われているが、その気がない。(阿爺って呼んでたから、おじいちゃんかと思ったら、お父さんだったのね。)結局結婚するんだけど、この人はかなり好き嫌いが激しい人で、七娘はむしろ好きに入ってるから。結婚式のときにお父さんが亡くなって、この事件を追いかける。

武思月(月華君)は宮廷女官というよりも、内衛の女衛士なんですよ。もともとはお嬢さまらしいけれど、女だてらに、とはいえ女帝時代ですから。あまり良く思われていなくて捜査を妨害されていたのを、聖人の特命ゆえに捜査がしやすくなる。両親は亡くなっていて、実の兄(ひょっとすると年齢差があるので異母兄かも)に育てられた。

「武」が内衛ならば、「李」(唐の国姓)が联昉(なんか、秘密警察組織っぽい)。ということで、史実をどこまで反映させているかは別の問題としても、本当に武則天時代の周を舞台にしている。

春秋道という妙な宗教組織があって、これがテロリスト集団なんだけども、調べれば調べるほど実は…なお話です。

武思月の「武」という苗字が引っかかってきて、ひょっとして聖人は則天武后そのものということでしょうか。よく検閲に引っかからなかった。最近は実在の人物をモデルにしたら歴史の改変は許さないと、キャラクターの名前を変えざるを得ないんです。それで公開が遅れに遅れたものまである。今の中国はなんでもありだから、さっさと見たほうがよさげな雰囲気がプンプンしていた割には、終わり方を見ても、問題ない、の、かも。

というのも、中国ドラマの古装劇には、このスタイルでしか世に問うことができない「何か」がある場合があるじゃないですか。

例えば、馬鹿っぽく見せておきながら、ストレートにジェンダー問題を扱った「虎われて」とか。青臭く政治とは何かを語った「琅琊榜」は政権転覆を行う話でもあるので、現代劇ではご法度だよ。「ジャクギ」なんて毛沢東を引用してほめ殺しでしたからね。ボーイズラブがいけないならば、と「陳情令」がとくにそうなのだけど、有り余っているお金を美術に突っ込んでひたっすら美しい絵柄で雅にブロマンスを展開したり。

本作は、そういう、メッセージめいたものがないんです。

美術もセットもそこそこ作りこんで、衣装なども唐代の再現を試みようとしたのだと思うし、女性を活躍させたいなら、則天武后時代にしておけば「あったかもね」と主張することもできる。(便利だよね、則天武后)

終始、初めから最後まで、エンターテイメントなんですよ。中国ドラマに求める、きれいな絵柄とポリティカルコレクトネスを満たして、ストーリーも作りこんでいくのを満たしてくれてる感じ。

それで検閲を通ったのかなという感じ。

王一博はぎりぎりですり抜けていくようで、結構石橋を叩いて渡るんだな。安心してみていられる。

キャスト

とにかく、男2女1のトリオが何かの事件をそれぞれの方面から探っていくということでしょうね。ということで。

高秉烛を演じるのは黄軒です。小物の皇帝白楽天と演じる人の位が落ちてきてるような気がするんですが、いやー、小汚いだけというよりも男っぽさが出る感じ。器用ですよねえ。で、浅黒く塗るだけでこの人こんなに兵馬俑にいそうだとは思いませんでした。

繊細な小物の皇帝に、文人白楽天と、アクションができるイメージがなかったのだけど、ちゃんとアクションをしているように見せられるし、体も厚みがあるんだな、この人。そこまで改造して臨んだのかもしれないけれど、長安の雷佳音よりも強そうに見えます。

百里弘毅を演じるのは王一博。グルメな人物で魚のしゃぶしゃぶとか、ヨーグルトにドライフルーツを入れて蜂蜜をかけて食べてたりするけれど、表情の作り方というかなんというかが陳情令の藍湛っぽさがあって、これからどう裏切ってくれるか。ただ、これは本人の声だよね。おー、さすが洛陽人。

意外にお坊ちゃん育ちの百里弘毅にもアクションシーンがあって、そら藍湛(美ゴリラ)だしな…と思ってしまうくらい、藍湛のイメージからうまく抜け出せないのが微妙。高秉烛のシーンに朱祁鈺も白楽天も連想しないんだもの。黄軒が器用すぎるんですね。

陳情令でも有翡でも、たるんとしたほっぺが子どもだなあと思いましたが、今回はほほを隠すような髪の毛も触覚もなく、きちんときれいに髷を結うのに、ほっぺたがあんまりたるんとしてないんですよ。もう坊やではないんだな。

すごく上品でお坊ちゃんに似合ってた。

武思月を演じるのは宋茜。王一博同様に韓国でデビューしたらしい人です。「f(x)のビクトリア」がこのお方だそうな。メイクのせいか、韓国受けする顔っぽくないんだけど、韓国向けではなくて中国向けのメンバーだったんでしょうか。若作りというか、若く見せようともせず、「現代なら35歳前後のそこそこのキャリアのある女性」的で良かった。キャラクターの年齢は多分20代前半ではなかろうかと思うけれど、唐の20代前半の女性って、多分現代の30代半ばくらいにあたるんじゃじゃないですかね。

とにかく、体が柔らかくて、アクションをしているように見せられる。広告ではご本人の声だろうけど、多分アフレコを自分でやってるっぽいんですよ。低めの声で良かった。

ラストはどっちかがアレだなと思ったけれど、やっぱりそういうことになって、まあ、そうなりますね。

多分、高秉烛と武思月のカップルにはイラっとくる人はあまりいないと思うんだけど、キッツ…と思うのが、柳家七娘こと柳然。演じるのは宋軼。「贅婿」では賢い苏檀儿を演じていたので、うるさくない役をちゃんと演じられる人です。なので女優さんはちゃんと演じられる人だということはわかってるので、これはキャラクターとしての話。「ああらぁん」「ああらぁん」(二郎、二郎)とほとんど押し掛け女房的なんだけど、行動が浅はかで浅はかで。その浅はかさで物語をドライブする役割ではあるのだけど、アホかいなと。ちと、イラっとしました。最後は七娘のおかげでみんな助かるけれど、それくらいやってくれ。

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