面白かった。第二季も期待。
大学生の張慶(チャン・チェン)は教授に自身の研究を認めてもらうため、難病に侵された青年・范閑(ファン・シエン)が、現代の記憶を持ったまま乱世に転生する物語「慶余年」を書き上げる。
物語の舞台・南慶国では、皇子たちが皇位継承を巡って争い、陰謀が渦巻いていた。笵閑は高官の隠し子として生まれるが、生後すぐに母を失い、田舎で武術や医術を叩き込まれて成長する。
ある日、都からの使者がやってくるが、同時に命を狙われてしまう笵閑。その理由と母の死の真相を明らかにするため、笵閑は上京を決意するが、都に到着した范閑を待ち受けていたのは、皇帝・慶帝の命による縁談だった。
莫大な富を生む商売・「内庫」を管理している慶帝の異母妹・李雲睿(リー・ユンルイ)の娘、林婉児(リン・ワンアル)と結婚し、その権利を取り戻せというのだ。実は「内庫」は笵閑の亡き母が起ち上げた一大事業であった。
しかし、笵閑は、都に向かう道すがら偶然出会った、鶏肉の足を食べていた娘に一目惚れしていた。“鶏肉の君”と結ばれるため何とかして破談に持ち込もうと画策する笵閑は、図らずも宮中の権力闘争に巻き込まれ、数々の謎の核心に迫っていくことになる。
庆余年 2019年
感想
中国語字幕版をちらりと見たんだけどいまいちピンとこなくて、面白いと言うのが理解できなかった。
が。日本語字幕がついたものがBSに出てきたら、面白いじゃん!?いや、なんでつまんないと思ったのかわかんないくらい面白いじゃん!
おそらく理由は、主人公の范閑を演じる張若昀のドヤ顔に慣れたんだと思う。どう見ても10年前のジェイ・チョウなんだもん、この人。ジェイは好きだが美男子とは思わない。ジェイは常にドヤ顔だが、シンガーソングライターなんだから。ジェイがドヤ顔なのはいいけど、俳優が全部ドヤ顔演技はいかがなものか。
途中でギブした天空城も、第一季は見たぞ(やたらキャストが被ってるぞ)な雪中も、笵閑と同じ演技だぞ…。
あともう一つは私の中国語能力だね。ギャグ、古典からの小ネタの引用があって。もちろん、重要なところ(なぜか秘密を握る書にされている「紅楼夢」からの引用)とか、詩会で杜甫を持ち出して圧勝するところなどは、本編で解説してくれるけど。内庫のギャグ(微妙に下品)とはさ。ほら、わかんないじゃん。
あと、出てくる連中がみんな変なやつなのも、中国語を追いかけるのに必死だとわかりにくい。
日本語字幕ありがとう!
さて、お話はですね。ドヤ顔大学生の語る、メタの物語という設定なんだけど、これは「タイムスリップ禁止令」をかいくぐるテクニックの一つだから、気にする必要はないのさ。
タイムスリップ禁止令のせいで、漫画家です、脚本家です、ゲームの世界に転生したんですけど?のオンパレードで、本作もその一つってことです。
慶余年の妹と弟で後に「贅婿」を作ったけど、これもやっぱり「小説家が書いていた小説の主人公を死なせるところでそりゃないだろと転生させた」というスタートです。それもこれも、タイムスリップが禁止されてるから。
范家の兄弟関係ですが、幼い頃范閑と一緒にいた若若は、父親の前妻の娘で、おそらくその前妻は死んでる。末っ子の思轍は後妻(二夫人)の子。後妻がやってくるときに幼い娘がいじめられないようにと自分の母親のところに預けたんでしょう。
妹に手紙で書いてやった「紅楼夢」がこの国でもベストセラーになったり、秘密があるのでは?とかおかしいwww。
あと、笵閑がメアリー・スー(ただしジジ転がし)状態なのも、普通はなんか飽き飽きするのだけど、本作の場合はどういう意図なのかなと期待しちゃう。持ち上げに持ち上げた上に叩き落としていくのが中国ドラマというか、この手のライトノベルの醍醐味のような気もして、楽しみにしてる。
キャラもの作品なんだけど、私が一番気に入ってるのがガンダム(高達)さん。後半に入ってからじゃないと出てこないけど、とても良い。
地理について
さて、私は「贅婿」の方を先に見て、楽しかったのだよね。あっちは宋(北宋)時代の、宋と遼の「澶淵の盟」のところが舞台なんだなと言うのがわかった。
こっちは北方に「北斉」という国があり、もう一つ独立国ではあるがあんまり大きくなさげ…と言う感じの「東夷城」がある。おそらく東夷城とは陸続きなので、日本ではなくて朝鮮半島を想定してるのではなかろうかと思う。高麗か、李氏朝鮮か。いや、遡って新羅かな?と。
北斉と言えば、南北朝時代の北朝の鮮卑系の国の一つ。一応、このお話は「中華的な思想を持つ、フィクションの国に転生した」という設定になっているので、実際に北斉が存在する南北朝時代が消えるんじゃないかなー。
でも、長公主が権力者だったり、笵閑の母親が偉大な人だったりして、慶という国では結構女性が強い。現代中国で作るから女性が活躍しないとならないので仕方がないのだけど、実際(漢化していく)鮮卑系の王朝は結構女性が活躍したでしょ。則天武后以前に、北魏の馮太后のように国家の繁栄の基礎を作って天寿を全うするケースもある。馮太后以前に太后が国家をドライブした例は後漢の董太后がいたけど失脚してて、その前なら前漢の王政君(玉璽を投げつける人)か呂后かしか思いつかないのだけど。
意外に、南にあるっぽい慶国こそが、南北朝時代の北朝系だったりして。…統一が終わってない隋とか?
キャスト
こっちの転生男が文学に強かったのに対して、贅婿の転生男はマーケティングに強かった。まさしく寧毅は笵思轍が現代人だったらこういうタイプだっただろうなあ的な。若若の行動力からしてもむしろ商家の娘の方が似合うような気もするよ。
張若昀の良さは相変わらずわからないけど、愛嬌があるように見えて来た。
弟を演じる郭麒麟は贅婿の方がかっこよく見えた。どっちかというとだめだけど愛嬌のある弟(商売はできるけれどおそらく科挙は通らない)と、おそらく素質はあまり変わらないだろうに自分に合った「経営学」の教育を受けることができたのではないか(と書くと、あー、中国さま万歳!に見えるが、あれですよ、現代社会万歳ですからね)と思われる寧毅(の中の転生男)とをきちんと演じ分けられてるわけだ。演技が上手くなったという意味でもある。
若若を演じた宋軼は、結局「贅婿」の檀児との違いが見えないというか。どちらも好感の持てる賢い女の子キャラクターを好感を持てるように演じているのだけど、演じ分けが微妙。つまり戸部侍郎の娘が太子のところに一人で乗り込んで行くような行動力のある若若が、深窓の令嬢っぽさがあんまりなく。檀児が寧毅を尻に敷くのも、先妻の娘の若若が後妻の息子の思轍を踏んづけているのも同じに見えるというか。
「洛陽」よりはキャラが良かったのだけど、若若も檀児もよく似たハマり役だからこそ、演じ分けがほしいんですよ。洛陽の迷惑女との演じ分けはちゃんとできる人ですよね。あと少しなんだよ。
さて、演じ分けといえばです、李純。今回は北斉のスパイの司理理。これまた敵国の女で、どっちかというと悪役。なんですが。「花千骨」の漫天の闇落ちパターン、「如懿伝」の嬿婉の欲深くなっていく様子とは違って、理理さんはあんまりキッとやるタイプではないようで。ただ、もうちょっと違う役をもらったほうがいいと思うんですよ、わたくし。
海棠朵朵を演じる辛芷蕾もまた、演じ分けというか。「如懿伝」でも「斗破苍穹」でもそうだが、悪女系ばかりで見る女優さん(すごく綺麗なのだがなんか下品)枠になってしまっている。ただ、今回はコミカルで村娘みたいに品がない聖女というキャラクターには下品さまで含めてぴったりではある。ぴったりだからこそ、いつもの通りだよなあという感じで。
ただし、アクションをしているように見せることができるのはいいことですよね。
ここまで無視したわけではないが、ヒロインの林婉兒を演じる李沁。「斗破苍穹」ではコミカルな医神で第二ヒロインだったっけ。この人も「如懿伝」でお妃の一人を演じていて「如懿伝」と「斗破苍穹」オンパレードなのはなぜだろうか。今回は肺病持ちのくせに中国語の「元気満満少女」という変な役である。悪くはないが特に良くもない。それはキャラクターのせいで、女優のせいではないと思う。
劉美彤が北斉の皇帝(男装の麗人)を演じていて、やっぱり「如懿伝」と「斗破苍穹」組。ツンデレ系お嬢さまではなくて、むしろ「猎罪图鉴」の役の方に近いと言いたくなるほど、同じように演じてしまう。衣装のせいか首が詰まって見える見えるが、「猎罪图鉴」では首が長くてスラーっとした少年体系だなあと思っていた。この人で詰まって見えるのだけど、皆さんどんだけ首が長いんですかね?
肖戦は目のちっちゃい張若昀と並ぶと、目が不自然なほど大きいというか、なんか。美男子だけど。言氷雲のキャラがクソ真面目で、ふざけた范閑と良い対比。ドヤ顔で演技するけど張若昀というか范閑の方が好きだな…キャラの話ね。