投資会社の敏腕ブローカーのクワンは“トリプルタップ”を撃てる射撃の名手。IPSC射撃大会当日、順調に勝ち進んだ彼は香港警察No.1の腕を持つチョン警部を決勝で破り優勝する。表彰式後、会場から帰る高速道路で債券輸送車の強奪事件に遭遇する。白バイ警官が撃たれ、とっさにクワンは大会用の銃で強盗団3人を射殺するが犯人の1人を取り逃がしてしまう。クワンは警察に連行され、競技用の銃を使用した殺人罪で起訴される。この事件を担当するのは、射撃大会で2位になったチョン警部だった。世間はクワンを英雄視し、彼の裁判は無罪となる。だが、チョン警部は強盗団が襲った4億ドル債券の行方と投資会社マネージャーであるクワンにある疑問を持つ…。
槍王之王 Triple Tap 2010年
感想
監督はイー・トンシン(爾冬陞)。レスリー・チャンの「ダブルタップ」ではプロデューサーだった。
イー・トンシンは。人間模様を描かせるとピカ一。イー・トンシンのミューズのダニエルとジョニー・トーのミューズのラム・シューとルイス・クー。久々にダニエルは途中で死ななかったけれど、ラム・シューは死んだ。まあ、ね。
クワン;君は僕の判断をすべて却下した。外貨も債券も
アンナ;だってすべて間違えてるんだもの。あなたのためよ
クワン;尊厳を取り戻したいんだ
アンナ;尊厳がなによ?結果がすべてでしょ?
という男と女のすれ違い。うまいなあ。
ジョニー・トーなら、ラストのクワンの妄想の銃撃戦(クワン大活躍、警官皆殺し)で終わっただろう。けれど、イー・トンシンは違う。光をあて、射撃の名手に的が見えなくさせ、一騎打ちさせる。そして、死んだ交通警官の双子に仇を討たせる。
ダニエル・ウーは狂気じみたところもなければ、嬉々として殺されるわけでもない役だった。最近珍しい。
ルイス・クーは「アクシデント 意外」の終盤を思わせるような狂気だった。
珍しく、アンドリュー・リンに台詞と重要な役が与えられていた。狙撃隊と交通課の双子の兄弟役だ。
チャップマン・トーは相変わらずうるさい(ほめている)。うるさいラム・シューのポジション狙えるね。
シャーリーン・チョイがいつもの元気いっぱいの女の子役ではないのはいいのだが、ただの花瓶だったのが残念。「妄想」のような演技ができる人なのに。本作は男の映画だから仕方があるまい。
リー・ビンビンは「僕は君のために蝶になる」とは違い、きれいだった。やり手のトレーダーでいい男をペットにしようとしている、という役もぴったり。やはり「蝶になる」のおばさんじみた雰囲気は作ったのだな。それはそれで精神を病んだ人役なのでよかった。けれど、「王朝の陰謀」の男装の麗人ほどのきりっとした美しさはない。古装の方が似合う。