追撃者 ~逆局~

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東林市ー 新旧が混在するその沿岸都市で連続殺人や死体発見が相次いだ。
警察の秘密裡に捜査が行われていたが、情報が流出し一斉に報道されると、東林市は犯罪都市と名を馳せることとなる。
警察の捜査が行き詰っていたころ、捜査の誤りを指摘する1本の電話が鳴った。
それは多くの罪悪人が収容されている東林監獄からだったー
警察へ情報を発信したのは、なんと 囚人No5710の梁炎東(リャン・イェンドン)。彼は新人警察の 任非(レン・フェイ)にある事を条件に捜査への協力を申し出る。
時を同じくして、監獄内では 謎の殺人事件が発生。それは一見、自殺のように見せかけた奇妙な殺人事件だった。
一連の事件で、囚人 梁炎東(リャン・イェンドン)は、背後にはより邪悪な勢力が潜んでいると考えー。
取引を交わした2人の危険な旅が 今、始まる。

逆局 2021年

U-Nextで公開だそうな。

最近特に中華圏のものに強いのがU-Next。
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感想

悪との距離」をお手上げしたところで、しばらくして始まったのが「逆局」。中国ドラマは、視聴率(再生率)を取りに行くときには、金・土・日で3話ずつ公開くらいするけれど、台湾は週に一度、一話だけ、二話だけ、というペースですね。比較的まとめて一気に見たい派のわたくし、溜まってから身始めました。毎度のごとく、わたくしのやることなのでがっつりネタバレかましてるからね。サスペンスでネタバレされるとげんなりする人は要注意

台湾ドラマとはいえ、本作は爱奇艺。ちょっと複雑で、台湾側が2019年くらいから中国の台湾への文化的うんぬんかんぬんということで、愛奇藝台灣站が停止したのが2020年。本作は、シンガポールベースの爱奇艺海外总部ということでクリアなんでしょうかね。これがまた、中国の爱奇艺(アプリ)では見られなくて、国際版のiq.comで見ましたのよ。VIP限定もしくは日本にジオブロがかかる前にさっさと見てしまえ作戦。

そこは台湾

ロケ地協力に、台北市、新北市と入ってくるように、オール台湾ロケの模様です。刑事が追いかけて走り回るシーンも、はっきりとここであると言うことはできないけれど、まさしく懐かしい台湾の裏路地ですよね。台北駅の北側とか。中山の裏とか。民権路の裏とか、あの雰囲気。

流石に、台北101は写ってないし、都市の名前も「東林市」という設定だけど、しゃべる人の訛りが、私が聞き取りにくくなってる(びっくりだよ)台湾の中国語。hを抜く、台湾華語。いたるところにある文字が繁体字。そして、画面越しに感じる湿度は台湾の湿度。

市場のシーンも永樂布業商場や中山市場を思い出したし。映ってたお店の看板仕立て屋とかもあったしね。永樂布業商場

あそこは、台湾。

台湾のセンスと中国のセンスはちょっと違っていて、それは台湾には言論の自由が比較的あるからなのかもしれないのだが、台湾の方がグロめかなあ。マイクを突きつけてくるメディアの品のなさも描き出すけれど、台湾のメディアの自由度が高いかどうかは別として、センセーショナルに煽るイエロージャーナリズムが台湾メディアの特徴とは思う。土足で踏み込まれて人生を破壊されるという11話のあれはそうですよね。日本の、週刊誌的な煽り方を新聞がやる。とくにりんごだけど。

しかし、中国ドラマのクオリティ

しかし、ストーリーテリングの、伏線の回収も、演技も、撮影技術も、台湾ドラマではなく、ここ数年の中国ドラマ。具体的に私がこれまで見た中で位置付けるなら、バーニング・アイスオリジナル・シン的な。あと、唐人街のドラマ編ね。あのクオリティで出してきました。この三つ、本作同様に愛芸奇なのよ。もちろんバーニングアイスとオリジナルシンはプロデューサーが同じ香港が目立つ中国ドラマだし、唐人街のドラマ編だって映画ありきの作品ですよ。しかし、直接作品にはクレジットされない人たちの「目」の蓄積が愛芸奇にはあるんでしょうね。そして制作チームが80年前後のお生まれなので、おそらくアメリカの刑事物その他を見て育ってるのではなかろうかなというのも、台湾ドラマの新境地を切り開くことができた一つのきっかけかなと。

そして、主演の周渝民をはじめ、キャストの多く(犯人とか。被害者とか)が、あの人は、あの人は、の連続で、台湾ドラマの演出がガラッと変わるとそんなこともできたんだー感がありますね。

この街の刑事司法制度が謎。裁判の公開原則はないん?

さて、仔の演じる「梁炎東」は弁護士だったのに、強姦殺人未遂の罪で控訴中。元々は司法試験に合格しているが、警察官としてプロファイラーになっていたのかな。十二年前の銃撃事件で恋人(妻?)を失い、警察もやめたという人。そこはいいや。

かなり微妙だと思ったのが、日本国憲法では、82条1項の裁判の公開原則ですよ。これ、この国ではないの?姉さんは法律を多少は学んだ人ですし。この国の憲法・刑事訴訟法が気がかりになってしまったってわけ。

フィクションにこういう突っ込みをするのは野暮ってもんだけど、気になるんだから仕方がない。

12話の法廷劇パートで明らかになるのだけど、この裁判って非公開なんですよ。日本でも非公開裁判は可能だけど、ごくごく例外の話であって、基本は公開。

この裁判では被告人が無罪を主張して検察側と見解を一致しているのが「被害者は強姦殺人未遂にあって昏睡している」だけです。自分が犯人であるということについては全面的に争う。のちにこの人は亡くなるので、罪名が強姦殺人罪に変更されるけれど、「(この人は)昏睡ののちに亡くなったことは認める。しかし死亡の間の因果関係が証明されていない」と、強姦殺人罪の適用も争うわけです。

この全面的に争う状態で、日本で非公開裁判にすることはないだろうと思うんだよなあ。争ってるんだから。秘密裁判で不透明な裁判手続きによって裁かれたらたまったもんじゃないですよ。事実、捜査段階で謎の「証拠」が出てくるじゃないですか。あの証拠の妥当性を争いたいじゃないですか。梁炎東は(訴因変更によって)死刑判決を求刑されてたんだもの。

確かに性犯罪ゆえの被害者保護が求められるんだよねえ。しかし、日本の場合、被害者のプライバシーを秘匿する必要があるならば、それは名前を隠し、傍聴人から家族を隠すことで可能ですし。殺人シーンの動画が見つかりこれを再生するけれど、これはおそらく被害者家族に見せることはない。裁判官と検察官と弁護人とだけで証拠として再生されるものだと理解してる。

一審と二審の検察官が同じ人だというのは、公務員を異動させれればいいだけですから、日本でもあり得るのかもしれません。そこは気にならなかった。

日本でも三審は事実を争う場所ではないので、二審で負けたらほぼアウト。法律を学んだ人ならみんなそこの緊張感を共有できると思う。

そして、東林看守所。これ、刑務所でしょ?梁炎東は一審では有罪だけど刑が確定していないので、未決拘禁者ってことでしょ。日本だったら「拘置所」にいるんですよ。死刑囚も拘置所にいるんですけれども、それは有期刑無期刑の刑の執行とは刑務所での収容ですが、死刑囚の刑の執行とは文字通り死刑の執行だから、という論理であったとおぼろげながら思い出します。拘置所って作業するんでしたっけ?そこはもう刑事政策のエリアだったような気がして、もうわかんなくなったぞ、姉さん。有罪判決の確定した受刑者の中には拘置所での作業(例えば介護が必要な死刑囚の介護とかさ)をすることはあるので、いないわけではないんだけど、本作で描かれたような、粗暴犯と未決拘禁者が同じ刑務作業をしているということはないのではないかなあ。

昭和40年版 犯罪白書 第二編/第二章/一/4

刑事もの、探偵ものって、違法捜査のオンパレードなんですよ。実際にその証拠で公判を維持できるかというとまあ無理。違法な捜査だから証拠から除外されるし。でも、自白があるとほかの証拠がそういう風に見えてくるというのもあるからさ、虚偽の自白をしちゃうとひっくり返すのは難しいから要注意とは言っておくよ。心理的に落とす過程で刑事にハニートラップをかけられたとされる、滋賀の呼吸器事件のように再審請求されて無罪になることもありますけどね。楊羽璐が違法な証拠で公判を維持できるかと突っぱねてみせたところは、おー!刑事訴訟法的に正しい刑事じゃないのーって思いました。

非公開裁判と、証拠の扱い、刑務所の描き方がものすごい違和感があった。とはいえ、刑事訴訟法の専門記事を書きたいわけではないから、そこんところはアルマでも読んでておくれよ。(法律を学ぶなら、たいていめっちゃ退屈なんだけど有斐閣アルマはうまく通説を網羅してると思う。)

刑事訴訟法(第6版) (有斐閣アルマ)

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でもまあ、外国ですし。言うほど台湾は自由で民主的でもないし、汚職もあると私は思ってるのよね。だから梁炎東のような「闘士」が存在し、そしてその「闘士」を邪魔に思う人間が存在することは多いにあろうかと思います。

お話は

一章では、梁炎東の方可茜強姦殺人未遂事件、連続妊婦殺人事件、ダークウェブ、東林看守所の四つが軸ではあるのだけど、浮かび上がる陸振聲紀念醫院。

梁炎東が方可茜に接触したのは、陸振聲紀念醫院の医療過誤訴訟の、依頼人だった原告の吳玉馨との関係がこじれたので、吳玉馨と仲の良い同僚だった方可茜に接触を試みただけだった。この医療過誤訴訟は心臓移植だったけれど、その執刀医は張逸帆だったんですよ。張逸帆って…産科医なんですよね。流産と前後して臓器移植に失敗し、その後に患者()に騙されて堕胎手術をさせられて凶行に及ぶようになる。

この東林市の各種制度設計の謎ぶりは刑事訴訟法の各種制度なんだけど、医事も妙なんですよ。 張逸帆、スーパー医師じゃないですか。移植の外科医が産科医でもあるの?それとも、外科医が闇の堕胎屋になって連続殺人事件を起こすようになるの?

と思いつつ、第二章に突入するわけです。ここで副分局長の楊羽璐として出てくるのが、張蓉容。仔と張蓉容は「山田太郎」で兄と妹を演じていたのだけど、今回は同じ先生に習った先輩後輩関係で、おそらく学生時代に顔を合わせたことはなかったのではないかな的な距離感です。それがいいんですね。手段を選ばないできる独身キャリアウーマンと、できる独身男(偏屈)が恋愛関係を持った上で…というのがアメリカドラマというか、日本のドラマ、いや香港映画もそうかなあ。第一章が性犯罪だったけれど、第二章は性の匂いがしないのが、2020年代っぽさがありますかね。

この「学校」というのは警察学校的なところで、終えれば修士課程相当ということになるんでしょうか。そこは学校制度で各国にはいろいろあっていいと思うんですよ。警察、消防、軍のような危険任務にあたる人には教育も授けますというのは一つのあり方。軍に関してはアメリカは経済的徴兵が問題視されつつありますけれども。

前半が性犯罪(それもグロいの)だったので、 楊羽璐 も、と思ったけれど、そうじゃないんだよね。日本もアメリカも香港もアマゾネスを性犯罪の被害者として描くことがあって、あれはミソジニーなのだと気づきはじめたじゃないですか。表現者側も、見る側も。そこをクリアしたのもまた、2021年。

キャストについて

仔仔のドラマをがっつりと見るのは、「回家」以来かな。

個人的に台湾ドラマの最高傑作は「痞子英雄」だと言い続けて十年。現実世界では在天と女神さまが結婚しちゃうし、相変わらず在天と英雄が、だしということで、伏線が回収されぬまま、十年。

あれから、仔仔はコンスタントに、とはいえ、年にドラマ一本、映画一本、しかも主演ではなかったりするけれど、きちんと演技を続け、台湾ドラマのサスペンスに戻って来た。

F4の四人の中で、おそらく出演数と主演数が多いのは旭。ところがこの人はある意味サービス精神が旺盛で、求められるもの=同じ役を演じているような気がする。もう、タイトルとあらすじだけで見る気無くすもん。

一方の仔はイケメンも演じた。皇帝も演じた。だめ男も演じた。そして40の壁を脱イケメン、脱アイドルで超えたいのでしょう。

今回は、髭面の囚人として現れる梁炎東は「美男子」ではない。眉毛の作り方と言いますかなんと言いますか。表面上も、性格も愛嬌もなく愛されるタイプの人間ではない。闘士であることは理解されても、そのやり方が強引。新境地でしょうね。

ブラック&ホワイトでは伏線が投げっぱなしだったけれど、今回は続けられるよー程度のクリフハンガーで終わってて、続くんじゃないかなあ。

仔としても、今の中国で撮影したいかというと、最近は台湾出身者は何かと踏み絵を踏まされるじゃないですか。大陸資本が入っているけれど、大陸で公開するとは限らないような作品のほうが、演じやすいでしょうね。

アルファベットでは相変わらずSandrine Pinna表記だった、張蓉容。この人は演技ができるのは知ってたんだけど、白人の血が濃すぎる顔つきと体型がちょっと役を狭めてしまうところがあった。 それを逆手に取ったのが「妖猫伝」だった。今回は、別にどんな容姿の人であろうがかまわない役だったから、自由に演じられたところがあったのかも。後半、正体がばれ始めるところ、自分が肝臓を失ったのがなぜだったのかを知ったところから形相が変わるけれど、もうちょい悔しさが中心でも良かったんじゃないかとは思うけど、それはたぶんキャラクターの理解の違いなんだろうね。

そして私は大声で叫びたい。ねええええ、在天の話をしてほしい。痞子英雄よー。

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