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ルージュ

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新聞社員の下に現れた女性の霊が、心中相手の生まれ変わりを見つけるために広告を出したいと言うが…。

原題:胭脂扣 1987年

感想

監督はスタンリー・クワン(關錦鵬)、なんとプロデューサーはジャッキー・チェン。今ならこんな作品のプロデュースはしそうにない。ちらっとも映ることもなかった。

レスリー・チャン

レスリー・チャンが得意とした30年代文芸物の中で最も早いのが本作だろうか。多くは中国の作品だったが、本作は香港の映画である。ストーリーにしても演出にしても、仮にこれがチェン・カイコーなら現代に現れた昔の芸妓の色気の「通じなさ」をどう描いただろうかと思う。舞台が香港では否応なしにコメディになってしまう。香港映画はこういう機微を描くのが苦手だ。晩年レスリーが多く中国映画に出演するのはそういった理由だったのだろう。

90年代半ばの色気だだ漏れの頃かと思った。レスリーは実際の年齢よりも若い役を演じることが多かったし、本作もほぼ30歳で24歳を演じているのだけど。確かに、30代後半から40代に入るころのレスリーの色気は半端ではないけれど、たまにやりすぎるのがレスリーだった。本作はまだ色気がだだ漏れになってどうしようもなくなる前らしく、やりすぎ感はない。

レスリーがアイドルからスターに脱皮する時期がこの頃か。まずは「男たちの」が86年。「挽歌2」と「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」が87年。幽霊の撮影はおそらく「ゴースト・ストーリー」へのオマージュだろうか。それとも幽霊ものが流行っていたのか。

「挽歌」の少年、「挽歌2」の少し大人になったけれどやっぱり青い感じ、「ゴースト・ストーリー」の母性本能をくすぐる頼りないけれど屈託のなさ。そして本作でのムンムンの色気。アヘンでいい気分になったアニタを抱き上げ、服を脱がせるシーンよりも、アヘンでいい気分になったレスリーにアニタが服を着せてやるシーンの色っぽさ。同じ人の同じ時期の作品とは思えないほどの演技の幅広さだ。やはり最高の俳優だった。

しかし、本作の主演はアニタ・ムイ。アニタの指名でゴールデン・ハーベスト製作の本作に、シネマ・シティと契約していたレスリーが出演することになったということだ。

さすがにアニタ・ムイはレスリーの良さを理解していた。優雅さ、高貴さ。登場シーンの流し目(流し目をくれてやる相手が超ファニーフェイスなのでいやおうにも効果がます)、アヘンのシーンの色気。高いところから満足そうにアニタを見る得意げな顔、窓枠からアニタを見送る顔。京劇の格好をしてみせるところ。どうしようもなく、生活能力が低そうなところ。本作以前にレスリーのそれをきれいに映し出したものはあったのだろうか。慧眼である。

もう一つ、レスリー・チャンという俳優の良さは「消費されること」を厭わないところだった。アイドルというものは男性であれ女性であれ、消費される存在だ。アイドルを卒業してもレスリーは消費された。同じ消費されるならば、いかに美しく消費されるのか、そこに心を砕いた人のように見える。

ただし、それが顕著になるのは90年代の作品であって、これまで散々見てきた80年代のものではこれまでは見つけられなかった。レスリーもの、とくに90年代のレスリーものを見ていると、「レスリー・チャンとは男でありながら犯される存在である」と言いたくなる。90年の「欲望の翼」はそうでもなくても、93年の「覇王別姫」あたりからは特に。レスリーがそういう俳優になっていくことを、近くにいたアニタは見抜いていたのだろう。慧眼である。

ところで、ラストの醜悪な小柄な老人の張十二少はレスリーが演じているようだ。かつらもあきらかなかつらだし、顔もあきらかに老けマスクだ。鼻はレスリーの鼻だし、その奥の目が老人にしては鋭すぎる。どう見ても失敗メイクだ。しかし動きは完全に老人。実際には老いることなく亡くなったレスリーが老人を演じたのは本作だけだろうか。

それと声は本人だろうか。アニタは本人の声だが、レスリーの声は若い頃からハスキーだったが、本作ではそれほどハスキーに聞こえなかった。

京劇のシーンはメイクしてもレスリーは一人美しい。原作者は「覇王別姫」と同じ人らしい。本作がなければ、「覇王別姫」はなかったのだろう。

アニタ・ムイ

肝心のアニタは本作で賞を総なめにする。終始抑え気味で、それが現代香港に通じない過去の人の色気とか。

しかし、一番の芸妓というには、アニタ・ムイはファニーフェイスすぎる。それでも、女の情念それ一点で押し切る力技はお見事。隣にいるレスリーが世間知らずの美しいおぼっちゃまくんだから、よく似合っていた。生活能力のない美しいだけの男と、芸妓のしっかり者の姉さん女房、という感じ。と思ったのに、アニタは63年生まれなので、レスリーよりも7歳も年下だった・・・。レスリー、恐ろしい子。

その他

レスリーと同じ画面には出なかったが、チョーを演じた女優は「挽歌」でレスリーの相手役をした女優ではないかな。キャラクターが近いからかもしれないが、演じ分けができていない。

パトリック・ツェーの名前があったが、客役だった。画面のせいか、「武林世家」よりもはるかに老けていた。

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