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追憶の上海

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革命の嵐が吹き荒れる30年代の上海。アメリカ人医師の前に美しい女が現れ、「ある男の命を救って欲しい」と懇願する。その男こそ革命の指導者・ジンだった。

原題:紅色戀人 1999年

感想

プロパガンダ

映画など、突き詰めてしまえばすべてはプロパガンダである。ヒトラーを出すまでもない。アメリカの娯楽作品がどれだけ他の国の人々に「アメリカ」への憧れを植え付けて行ったのか。日本で行われた3S政策を出すまでもない。

レスリー作品で言えば「覇王別姫」は明確に文革批判であり、本作は明らかな共産党礼賛である。かつて紅衛兵に捕まえられ「演劇界の怪物」と首から紙を下げさせられたレスリーが、今回は人民服で踊る。

ラストシーンでペインと娘のシーンからカメラがずっと引いて撮影風景を表し、そこから現代上海を表すところで、本作がプロパガンダの他に目的がないことを明示する。「この上海の繁栄は、共産党によるものである。そしてジンと秋秋のような熱い心を持った人たちが共産党にいて、彼らの血の上に上海はある」と宣言する。

「アメリカ人にも中国人の精神を理解してもらえると思う」と俳優もメイキングで言っていたではないか。

キャスティングでも意図は明らかだ。共産党の闘士が香港のレスリー。この世代で、見るに、聞くに堪える長い英語のセリフが回せて、演技力のある俳優は、ジョン・ローンかレスリーだろう。とくに美しく発作を起こせる俳優はレスリー一人だけだからだと思っていた。違う。1998年の作品だ。1997年、香港は中国に返還された。香港は中国の一部であること、レスリーを配することによって、それも明確にする。主な活動舞台が香港ではなかったジョン・ローンでは不可能だった。98年でなければ、アメリカで活躍するジョン・ローンの方が適任なのだが、アメリカ生活の長い俳優にとってはこのような使われ方は好まないかもしれない。

ストーリーも海外の外国人の目を通すことにより、36年の革命家を「美しく」描く。

異様なメイキング

メイキングが異様だった。

というものは普通、とうとうと監督が思いを語り、苦労を語る。そして主演俳優がこの作品は、と語る。このシーンを演じるのに苦労してね、と。スターではない出演者が共演した主演のスターを褒め称える。

それがこれに関しては、18分を越してようやく出てくるのだ。それまでは、ところがシーン、シーンで監督の撮影の様子、あのシーンの撮影風景、があり、ラストの行進のエキストラが弁当を食べているシーンとか。

そうしてようやく少しインタビューが入り始める。「独立制作」と言っていたけれど、そうでなければ共産党色があまりに強くなりすぎ、「アメリカ人にも中国人の精神を理解してもらえる」ことが不可能になるからだろう。

監督の葉纓(イエ・イン)は、レスリーの気品とかいろいろいっていた。彼の雰囲気があの時代の主人公にぴったりらしい。レスリーは「活動家は初めてだし、香港には資料がないし」とか。借りてきた猫のようなレスリーのメイキングインタビューだった。このあたりも異様だった。

レスリーの起用と出頭シーンについては一悶着あったらしく、字幕を担当なさったマダム・チャンがお書きになっています。追憶の上海 マダム・チャンの日記

レスリー・チャン

本作がレスリーの出演した唯一の英語(メイン)作品だろうか。メイキングでも「主演・レスリー」という通り、出演時間は短いにもかかわらず、ずーっとレスリーの存在感に満ちていた。これこそ、物語の主役と狂言回しの良い関係である。

パッケージではレスリーの髪が相当薄く見え、しかも太って見えた。レスリーは小柄である。チビ・デブ・ハゲかよ・・・と恐れていたのだが、大丈夫。そんなにハゲてない。いや、薄い。とんでもなく薄いぞ、レスリー・チャン。雨のシーンはやめてー。お願いだから、撮り方に気をつけて!あまり太ってないけれど、服はなんだかぶくぶくしてるじゃない。やめてー。チビ・デブ・ハゲで、感の強そうな高音の声って「セクシーなアジテーターの選んだ悲しい選択」に説得力がなくなる。レスリー病だからそれもありなのだけど。港女に「不細工の条件がこんなに揃ってるのに全てを許してしまった!」というと、港女曰く、それこそレスリーの「気質」だそうな。いやー、ただの単なるレスリー病なんだと思うけど。この雨のシーン以降はレスリーの髪にばっかり気を取られていた。

でも、レスリー、登場時点でぐったりとしていて妙に色っぽい。あんなシーンで色気を振りまくな。発作で苦しむシーンとかひどくエロいんだけど。こっちももう病気だなあ。苦悶の表情のレスリーが苦手だったのに、色気を感じるようになってしまった。女を混同しているシーンの目が完全にイッてるところとか、いいぞ、いいぞ。レスリーに中毒すると、苦手だった部分すら愛おしく思えてくる。生前からのファンでなくてよかったと思う。今こうして、この年齢でレスリーを楽しめるから。

演説シーンではレスリーは感の強そうな高音でしゃべっているけれどなんだか毛沢東を意識している感じ。(髪の薄さも?)
さすがに歌手としてコンサートで沸かせる人だけあって、女たちがどっと沸くのがぴったり。この作品にレスリーを配したのは英語のためが一つあるだろう。ただレスリーの問題はむしろ北京語かも。北京語だろうな、というはわかるのだけど。耳が台北訛りに慣れすぎてしまったらしい。

ラストシーンで踊るレスリー(ペインの妄想)の田舎っぺぷり。結構似合ってるじゃない。

お願いだから、飛び降りる、とか、鳥のようだった、とかそういう話をしないでいただきたい。
恐ろしいくらい、レスリーは作品中で飛び降りたり、死んだり、死をほのめかしたりする。今回は処刑。そこで、微笑まないでください。その後のレスリーを知らなければ、まだ良いのだけど。

レスリーの北京語作品ではあまりいい女優がいない。けれど、今回の女優、梅婷はなかなか。こっちでも凄まじかった。

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レスリー・チャン, メイ・ティン, タオ・ツァオルー, トッド・バウコック, ロバート・マックレー
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コメント

  1. […] もう一人同情の余地が一切ない人物としては荀皇后。前作の越貴妃によく似た性格のキャラクターなのだろうけれども、どう見ても言皇后・静妃と比べると品がないし小物感が漂う。女優としても、こうやって演じることはそれなりにリスクがあるだろうに、梅婷はよくやったと思う。ドシン!と演じると同情させてしまう。キャラの重さとしても(誉王とは異なり)同情させては不正解。 […]

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