裕福な養母に育てられるが、産みの親が分からないまま心に空白を抱えて生きる男、ヨディ(レスリー・チャン)。彼はサッカースタジアムで働くスー(マギー・チャン)と恋仲になるが、堅実な関係を望む彼女の気持ちに応えられない。そのため彼女を失ったヨディは、間もなく踊り子のミミ(カリーナ・ラウ)と付き合いはじめる。一方、別れたもののヨディを思い切れず、夜ごと彼の家に向かってしまうスー。彼女は夜間巡回中の警官タイド(アンディ・ラウ)に話を聞いてもらうことで、自らの心を慰めていた。やがて、実の母親がフィリピンにいると知ったヨディはひとりで香港を出るが・・・。
原題 阿飛正傳 Days of Being Wild 1990年
感想
何度も何度も映る時計。何度も何度もBGMのように聞こえる時計の刻む音。時計の音がしなければ、雨の音。列車が走る音。どれも規則正しく、時を刻む。
そういえば、「恋する惑星」も時計が何度か出たなあ。何か意味があるのだろうか。
若さ。
30をすぎて思う。
20代、無尽蔵にあるように思えた私の時間、いつまでも続くと思った私の時代。
あっという間に30歳を過ぎた。時間はそれほどあるわけではない、らしい。ようやく、気づく。
無軌道なヨディに残された時間は短い。でも、ヨディはそれを知らない。若さどころか、この人には命がないのに。
もう一つは警察官。今回はアンディ・ラウが警察官だ。ヤクザが出てきたり、殺し屋が出てきたりするなら、警察官も出る。そんなところだろうか。みな、死と隣り合わせの人々だ。
ラストのトニー・レオンだがなんなんだ?何の脈絡もなく出てくるのだが。ちゃんとした続編予定があったのだろうか。
いずれにせよ、次の「花様年華」では、主役がトニー・レオンに変わる。ラストに唐突に出てくる、天井の低い部屋で身支度を整える、あの男だ。
本作はあの「花様年華」のチャウの書いた物語なのだろうか。
さて、マギー・チャンの清楚な美しさと、カリーナ・ラウの肉感的な美しさ。
今は貫禄のある姉御になったカリーナ姐だが、スタイル抜群でセクシー。肌の内側から輝き出るような生気。いたずらっぽい目。トニー・レオンがノックアウトされるわけだ。
ロケ地がフィリピンだったと思うけれど、タイに行かせていただいたとき、バンコクからアユタヤに行くときにふと欲望の翼を思い出したの。