8月の真夏日。父親が失踪したと知らされ、オクラホマにある実家へ集まった三姉妹。真面目すぎて暴走しがちな長女バーバラと、反抗期の娘、実は別居中の夫。ひとり地元に残り秘密の恋をしている次女アイビー。自由奔放な三女カレンと、その不審な婚約者。彼らを迎えるのは、闘病中だが気が強く、率直で毒舌家の母バイオレットと、その妹家族。生活も思惑もバラバラな“家族たち”は、つい言わなくてもいい本音をぶつけあい、ありえない“隠しごと”の数々が明るみに―。家族バトルのリアルさに胸を衝かれながらも、予想外の展開に笑いと驚きが止まらない・・・一瞬も目を離せない極上の2時間が、今、幕を開ける!
August: Osage County 2013年
感想
監督はジョン・ウェルズ。
救いのない・・・。アメリカ映画らしい作品だといえばその通り。「フライド・グリーン・トマト」のようなハッピーエンディングでは決してない。
毒母ぶりも、それによくにたバーバラの毒舌ぶりも、見ていて爽快になるタイプではない。うまくいかないことの原因はあなたにあるのに、と言いたくなるタイプの人を思い出す。ジーンもいずれはそうなるだろうし、穏やかそうに見えるアイビーだってそんなものだ。カレンは確実だな。
ただ、女優魂を見た。老けたどころではなく、完全に老婆、しかも可愛らしい老婆ではなくてミス・マープルの上を行く毒々しく卑しい老婆のメリル・ストリープ。前髪はきっと白髪染めだろう、と思わせるようなジュリア・ロバーツの老いぶり。どこかで見覚えのあるジュリアンヌ・ニコルソンの全てを負わされた感。先がなく、ダメ男にしがみつくしかないジュリエット・ルイス。それをとっても一級品だ。この層の厚さがアメリカ映画の強みだ。ジーン役のアビゲイル・ブレスリンに若い頃のジュリエット・ルイスの小悪魔っぽさがないのが残念だった。
俳優はというと、なぜかイギリス男が二人もいる。まずはバーバラの夫役のユアン・マクレガー。久々に見る。その性格ゆえにバーバラを愛しているのに、同時にそのバーバラの性格ゆえに憎んでいるというところがよく表れている。ベネディクト・カンバーバッチのリトル・チャールズ。気弱なだめ男をよく演じていた。それでも、女優たちの迫力の前にはなすすべがない。