悪徳不動産会社の社長・ウォン(アンソニー・ウォン)の愛娘が誘拐され、その後、遺体で発見された。犯人からの身代金要求があった際、ウォンはヤク漬けのうえに反抗的な娘の自作自演だと決めつけ、警察に通報することもしなかった。その結果、身代金を奪われたうえに、愛娘も失うという最悪の結末を招いてしまう。娘を思うあまりのことが最悪の結果となったウォンは、犯人への復讐を誓い、自分の忠実な部下でボディガードであるイウ(リッチー・レン)とともに、犯人を探し始めた…。
報應 Punished 2011年
感想
監督はロー・ウィンチョン。
ジョニー・トープロデュースだからか、テンポがあまり良くないようにも思った。娘をなくした悲しみであったり、その強引さゆえ「成功者」となったウォンだが、その強引さゆえに子供たちは反発したこと。恩義のある社長のためとはいえ、足を洗ったはずの裏社会に戻ることになってしまった男は、息子と別れて「ロシアに行く」ことになる。そのつらさを描くにはこのスピードが良かったのかもしれない。
テンポはたまに悪いのだが、一時間半に長さが抑えられているし、ストーリーもシンプルなので、結局この展開で正解だったのだろう。
ストーリーはとにかくシンプルに「復讐」するだけなのだ。後妻は何かたくらみそうなのだが、たくらまない。途中、ウォンの手がけていたトンウォ村の再開発からも手を引こうとしていたのだが、解雇したはずの責任者は村で死んでしまう、という話もあるのだが、伏線になるのかと思ったのだがならない。ウォンの仕事や、強引で自己中心的なウォンという人物の性格と「うまくいかない」ことを表現しただけだった。
復讐譚であることは間違いない。けれど、復讐して何が残ったのだろう。
うまくいかなかった娘との時間。息子のそばにいてやれないこと。死者を弔うために復讐するのだが、残ったのは生きている間にできなかったことへの後悔だけだった。恩義のある人に尽くすけれど、息子のそばにいられないというつらさ。
香港の復讐譚といえば、派手なドンパチだ。本作にも銃撃戦も肉弾戦もないわけではない。けれど、とても静かで、そして現実的な、いわば体温の感じられる復讐譚だった。
ンソニー・ウォンは自分の命を懸けて小さな女の子の母親を助ける決断をする葛藤をさらっと演じたのは良かった。
リッチー・レンという俳優は、ルイス・クーやダニエル・ウーのような派手さはないのだが、なんだか実直そうなイメージのある俳優だ。裏切るよな、裏切るよね?裏切らないわけないだろう?と思うのだが、裏切らないのだ、これが。ダニエル・ウーだったら嬉々として途中で死ぬだろうし、ルイス・クーならやっぱり裏切るだろうが、リッチー・レンは死にもしないし、裏切りもしない。