虞書欣と丁禹兮のコンビは「月光変奏曲」から二度目。あれは途中で(登場人物がみんなありえんだろ?という行動をし始めるので)ギブしたんですが。どうやら、月光変奏曲のセリフがいたるところに散りばめられているようで。これはネタが…あれだ。
タイムスリップは禁止されているので(文面を見るとどんなSFかって話ですが)、禁止されていないゲームの中に入ります、本の中に入ります、というパターンが多いけれど、今回は本というか物語の中に入ります。という本繋がりのキャスティングだったんでしょうかね。
お話は。
凌妙妙は少女時代に父親を亡くしていた。あの日いじめられていた同級生を助けようとして取っ組み合いになり、理不尽にも叱られて、呼び出された父親が交通事故で死んでしまう。今は平凡なOLをしているけれど、浮舟が三年ぶりに発表した「捉妖」というネット小説に夢中だ。しかし、女主人公の慕瑶の終わり方に大変不満があり、浮舟に抗議のコメントを送る……となんと気がつくと「捉妖」の世界にいた。しかも、悪女・林虞……
なぜ柳拂衣は慕家の「山海図」を狙っているのか。その師父の思心先生とは…
養子の慕声の、本当の両親は誰なのか…
慕青时はどうして妙妙そっくりなのか…
怨女の行方。
柳拂衣の遺恨と選択。7年前の真実を知った慕瑶の選択、記憶を取り戻した慕声の選択。そして妙妙の選択。浮舟の作品の中にどうして妙妙の死んだ父親がいるのか…そもそも「捉妖」は新作なのか?
というわけで、これ「悪役令嬢に転生したら、女主人公の弟の黒蓮華に惚れられました」的なラノベ的コメディとしてスタートします。最後はそこまでコミカルではないんだけど、割に良い終わり方ではないかな。
黒蓮華(黑莲花)というのは、ネット用語というかこの手のラノベ用語っぽいんだけど、主人公をいじめる美人の悪役(特に男)のことらしい。対義語は「白月光」じゃないかな。本作では黒蓮華=慕声。「捉妖」の中ではシスコンの慕声は敵討として林虞を妻にして虐待する……
入った先は小説のはずなのに、ゲームみたいな「系統(シートン)」がいるところなんか、(BLの)「穿书自救指南」そっくりだけど、パターンなんでしょうかね。
凌妙妙を演じるのは虞書欣。悪女林虞のところが本当にいいんだけど、ぶりっ子演技が三周くらい回って中毒してきたwww。というよりもぶりっ子してるだけで笑いが出てくるもん。得難い。慕青时のところも、「記憶を対価にして林虞になってしまった妙妙」もきっちり演じ分けてくる器用さ。
困惑顔の慕青时は林虞とも妙妙とも別人だし。戦いに行く慕青时と戦闘シーンの妙妙も別人。
大好きだわ〜。
丁禹兮はこの手の役は「虎われて」でもやってるわけで。あなたもうちょっと演じ分けられるでしょ?「月光変奏曲」の昼川のツンデレを求められたのも「本か!」と気付けばわかるんだけど、それでも演じ分けができるでしょ?と結構不満。最後の2話はむしろ慕声の物語だけど、んんんん。あなたもっとできるでしょ?とやっぱり不満。細かな表情を作れるところはやっぱりいいんだけど、虞書欣の器用さを見せつけられてるわけで…
祝緒丹は初めて見たと思ったけど、三生三世の玄女か、そうか。本作の主人公ではないけれど、慕瑶は「捉妖」の主人公として、大変立派な努力家だった。しかし真実を知った慕瑶の選択。
柳拂衣は絶対偽君子と思ってたんだけど、初めから最後まで立派な人物だった。なんで偽君子かと疑ってたかというと楊仕沢は「寒夜暖」のイメージが強くて、今回も変身するかな…と思ってた。この人も月光組。
それにしても、ジリアン・チョン。このときちょうど乗風の直後か何かだったんですかね、体がシュッとしまってて、どう見ても25歳じゃん…それは言い過ぎでも35歳じゃん…一番恐ろしかったね…
以下ネタバレしがちな考察なので反転させます。右クリック不可にしてるから見られないと思う。
少年時代の浮舟にとっては凌妙妙こそ憧れの太陽であり。だから慕青时は凌妙妙そっくり。「慕青时がかつて世界を救ったときに使った武器」の上弦月は凌妙妙が忘れて行ったペン。慕瑶と柳拂衣の高潔さも、一人でいじめられっ子を救おうとしたかつての凌妙妙の高潔さ。しかし凌妙妙は父の死と転校というバッドエンドを迎えてしまった。だから「捉妖」の世界は破滅しなければならない。それを食い止めようとした現在の妙妙…それを知る慕声、そして過去の浮舟が慕声に「僕たちを助けて」と言っているということは、浮舟も慕声として物語の中に入っていたのかな。これ、「虎われて」同様じゃないですか。あっちはコミカルに終わったし、男女が逆ですが。
割にいい終わり方だったと思うけれど、ますます丁禹兮に「あなたもっとできる人でしょ?」と言いたくなった、というわけです。役選びが悪いと言われる人だけど、確かに…もっと役の幅を振り切った方がいいと思う。