恋人との思い出の曲が収録されている500枚しか製造されていないCDを探す女が、その過程でさまざまな音楽フリークたちと出会い、大切なものの存在に気づいていく物語を描いたラブストーリー作品
尋找周杰倫 Hidden Truck 2003年
感想
監督は、オーブリー・ラム（林愛華）。
主人公はポポ。これが初主演作らしい。そして、本作以外に見た記憶がない。
顔立ちはいわゆる「ファニーフェイス」。まあ、ぶちゃいくなわけです。前髪を下ろしても額が半分くらい出ているような変な髪型のせいもあるかと。ただ、ラスト、カメオ出演のジェイにケーキを運ぶシーンでははっとするほど綺麗に見える。いわゆる万人受けする美人ではないが、とても魅力的だ。冒頭の失恋シーンのみじめっぷり。悲劇のプリンセス気取りの痛さ。どれをとっても身につまされるくらい、演技もうまい。
相手役はショーン・ユー。中古CDショップを経営していて、そこで寝起きをしている、という設定。2003年なので、インファナルアフェア２、３の撮影の前後ではないかと思われる。若い。だが美し、くないのだ。愛犬をなくした悲しみから立ち直れないのだけど、小汚いったらありゃしない。撮影秘話で「寝起きで仕事に行ったのは初めてだ」というくらい。ひげはぼーぼーだし、設定はひょっとしたら中年男か、と言いたくなるくらい冴えない。
ポポの出会う人たちはみな摩訶不思議だ。金魚屋の姉のところでは金魚が自殺するし。ショーンは何を飼っても死んでしまう。イーソンはいわゆるスピ系。タクシー運転手のデニス・ホーは男好きでしかも相手によって名前が変わる。ダニエルは一見マッチョでセクシーな「理想の恋人」。なのに、デートに母親を連れてきて、しかも初めて会ったかのように装う、最悪なマザコン男。デニスが「あんたにそっくり」と会わせてくれた阿牛はゲイ。設定はいい。
中国でのポポをふった恋人はちっとも洗練されていない、いわゆる「大陸の男の子」で、家もとても古びて外観は汚い。そのくせ、中はキッチュな魅力溢れてる。ショーンのCD屋もそうだ。汚くて、きっとショーンの体臭がしていそうなのにかわいいものにあふれている。無駄にビジネスクラスで香港へ行くのだが、それ例外はかわいらしいものにあふれている。
ショーンがアイスクリームを食べながら歩いている坂(犬に追いかけられる)はセントラルからビクトリアピーク側への坂だろうか。お店はセントラルの下町だろう。香港の「かわいさ」はこの近辺にあると思う。
なのに、何かが悪いのだ。途中にクレイアニメ風のCGアニメが挿入されるのだが、これのせいだろうか。あのアニメでファンタジックな世界が強調されていて、これのせいではないのだが。演技もいいし、カメラワークも悪くない。香港のかわいらしい部分を見せているのに。作りたかったのは「アメリ」だろうか。気取ったパリと、気取ることなく喧噪の香港と。何が違うのだろう。舞台の場所が悪いのだろうか。ほとんど人ごみも、高層ビルも出てこなかったのに。舞台が裏原だったらどうなるだろう。成立するだろう。おそらく、同じくらいキッチュにいける。ロケ地は表参道ヒルズの同潤会アパートが残してある部分を使うかもしれないが。主演女優は二人ともファニーフェイスで万人受けする美人ではない。演技も二人ともうまい。
きっとバランスだ。微妙な微妙なさじ加減が悪いのだろう。ポポはアメリみたいな犯罪はしないし、お節介でもない。アメリになれてしまう人はいないだろうけど、たいていの女の子ならポポにはなれる。むしろポポは痛いけれど常識人だもの。アメリのファンタジックさが「アメリ」というキャラクターにあったのに対して、本作のファンタジックさは設定の方だ。ここでレシピが変わってしまった。それで、微妙、としか言いようのない映画になってしまったのではないかと思う。
みどころ
ラスト、幸せになったポポはウェイトレスになったようなのだが、そこへ味がわからなくなってしまった青年がやってくる。これが茶髪時代のジェイ。2003年だもの。不満だらけできっつい目をしている。本編中に流れるのは初期のジェイの曲ばかり。
主題歌もジェイが担当して、「幻の歌」もちゃんとEP版を出している。日本版はないけれど。実はこれは一緒に入ってるMVの方が本編の様なところはあるんだけどね。曲は「軌跡」（Gui Ji） 「斷了的弦」
（Duan Le De Xuan）
