女信長

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天文3年5月、土田御前(高畑淳子)が授かった子は女子。側室がもうけた男子に家督を奪われることを恐れた土田御前は生まれた女子を男子として育てることを決意する。
その女子こそが、のちの織田信長(天海祐希)だった。父である織田信秀(西田敏行)がその事実を知ったのは、信長が織田家嫡男と世に知れ渡った後のことだった。

嫡男として育てられる信長。やがて元服の後、かぶいた行動から城下でうつけ呼ばわりされていた信長と美濃の斎藤道三の姫、御濃(小雪)との縁談が決まる。
父、信秀が亡くなり、その後信長のうつけぶりをたしなめるかのように平手政秀(平泉成)も自害する。
平手の遺書には信秀と平手の信長に泰平の世を作り上げて欲しいという願いがしたためられていた。決意を新たにした信長は家督を奪い取るべく斬りかかってきた弟・信行を返り討ちにし、織田家の家督を継ぐ。
そして、天下を統一し、泰平の世を作ることを心に誓う。

ある日、信長は病に伏せる。信長は御濃と御市により織田家に仕える侍女、御長に姿を変えられ城下の診療所を訪れる。御長は突如暴れ出した馬に襲われ、意識を失ってしまう。
一部始終を見ていた若武者が御長に駆け寄って介抱をするが、その若武者こそが織田家との同盟の話し合いのために羽柴秀吉(伊勢谷友介)が招いた浅井長政(玉山鉄二)だった。

後日、長政と2人きりで対面した信長は長政に秘密を明かし、結ばれる。女として長政を愛してしまった信長は、嫁ぐことのできない自身の身代わりとして妹の御市を長政に嫁がせようとする。
その頃、将軍家からの使いという武将が信長を訪れてきた。武将の名は明智光秀(内野聖陽)といい、この男こそが後に信長の運命を大きく左右する人物であった。

2013年

感想

勘弁して。

気分が悪くなるくらいミソジニーにまみれていた。もう2010年すぎてるんだよ?「花と将軍」のジェンダー感の方が随分と良いじゃないの。
私は、「源氏物語」から流れてきて、「漢:天海祐希」が見たいだけなんだ。男装の麗人:天海祐希じゃなくて、「男」が見たいわけよ。

「男」をやってるときは「男」だった。さすがだった。特に腹から声が出ていて、最近吹き替えものの中国ドラマばかり見ていたので、ああ、舞台育ちの人ってこうなんだ!!!とある意味新鮮だった。

「武士の誇り」なんてものは、「やるかやられるか」の殺伐とした時代である戦国の世の中で、どこまで通じるのか。
公家化した室町将軍に対比する形であれば、武力でのし上がっていく織田軍にそういうものはあると思う。

しかし、話の中でもずっと言ってたじゃないか。「織田信長は初めて戦い専属の人々と農民を分けた」って。そういう設定であれば、公家と対比する形以外には「武士の誇り」などというものは存在すまい。つまり、彼と我を分けてから「武士の誇り」というものは存在しうる。半士半農の人々にはあるまい。城主クラスになっても、そんなものは言ってられない話だ。だって、そこにいる農民は刀を持ち、自分を刺しうる存在なのだ。「武士の誇り」なんてものが確立するのは身分制度の確立した江戸時代だろう。戦乱の世ではなく、太平の世において、刀が意味をなさないからこそ発生しうるものだろう。室町時代ならば、応仁の乱以前だ。いわば、「武士の誇り」なんてものは刀にしか自分の存在価値を見出せない、悲しい下級武士のものだろう。

さて、女として生まれたのに男として育てられた信長は、非力だからこその火縄銃や長やりでの戦略を構築してのし上がっていく。嫁取りまですることになるが、お濃は信長の良き理解者になる。浅井・朝倉との同盟のためにやってきた浅井長政に一目惚れする信長だが、お濃は信長の恋を応援する。信長と長政は結ばれるのだけど、天海のアニキ、ここまでずっと男なんですよ。流石なんですよ。女の格好をしても、帯はかなり下に結ぶわ、歩き方も男。どう見ても女装した男。なのに長政の前で髪の毛を下ろすと(あの茶筅髷であんなに長いかよ?)、一気に女になる。うっひょー。天海祐希、お見事でした。

しかし、いきなり仕草も何からなにまでたおやかな女になる。長政に、そして長政の裏切りの後には光秀(!!)に「天下を譲る」と言うのだけど、いやねえ、「やるかやられるか」の中で、苦しみながらも「太平の世」を作るために奔走していた人ですよ。その先を見ていた人なんですよ。それが「天下を譲る」となるかしらねえ。自己評価のすごく低い人ならそういう発想をするのは理解できる。重荷なんだって。ところがそういう人が「天下を譲る」ということになると、設定はおそらく天下人の娘。なんなら男色家とも言われている徳川家光が実は女の子で知恵伊豆・松平信綱と・・・みたいな。読みたい。めっちゃ読みたい。話は戻すが、自己評価の低い人には天下を取る事業をなすことはできまい。どちらかというと、長政は「天下を譲りたい」と言われていたのではなく、信長(=恋人)に下僕にされて「天下を奪い取りたい」ために離反する。それならわかる。

信長と光秀は互いの性的魅力に抗えない。ただし、光秀が信長の事業に口を出し、それが受け入れられている間は良かったのだが、信長が受け入れないことが増えて謀反。そうでしょう。「信長」から解放してやる!で「女は逃げろ」は確かに面白いアイディアではあるけれども、一話目の前半の「信長」ではあり得ない。だって、あれだけその先の「太平の世」を見ていた人なのだもの。秀吉による統一と自分を見守ってくれた家康による江戸幕府成立の間の、戦さをどうするわけ?誰かに渡したいというなら、そこまできっちりやってから渡すよね、あの人。途中で放り投げる人じゃないでしょう。

そして、結構あっさりと信長さんは自分が女だとバラしちゃうものでね。恋人たち以外に藤木直人の徳川家康、伊勢谷友介の藤吉郎は女だと知ってる。利家はほとんどでなかったけれど、かなり長く出ていた中村獅童の勝家は小さい頃から弟の信行に仕えていたようだし、多分知ってる。ってみんなが女だって知ってるのよ。それでもついていくんだよ、信長姉さんに。そういう人でどうして「重荷だ」ってなるんだ。更年期障害か、生理痛か?ってレベル。

お濃はどう見ても天海のアニキと男の睦言を楽しむ腐女子ポジション。小雪の能面のような演技が、余計に、無表情を装うけれど心の中は萌えまくってるようにしか見えない。ただ、カツラが変だった。あと、信長に「光秀はお長が好きですよ」と煽るのに、実際に二人がくっつくと嫉妬。うーむ。うーむ。そしてどうしてサルは「お濃どの」と自分の主君の正室に呼びかけるのか。「北の方さま」でしょうに。

今回のヒールはどう見ても秀吉なんだが、いやー、伊勢谷友介、良かった。信長を脅すんだけど、これがまたねじれにねじれたBLって感じだった。あと、お市の長澤まさみ。若手トップ女優扱いだった頃はほとんど見てないのだけど、いいねえ。爛れた感じがすごく良い。

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