「指輪物語」の60年前にさかのぼる。
一人の中年ホビット、ビルボが魔法使いガンダルフのひょんな思い付きから、失われた王国を取り戻すドラゴン退治へ行くドワーフの王子の一行に、「しのびっと」としてついていく物語の前半。
もちろん瀬田貞二の訳で育ってるものでねえ。しのびっとですよ、しのびっと。
監督はピーター・ジャクソン。
この「冒険」の次に「指輪」が書かれた。長さは「指輪」の六分の一である。なので、これでまた三部作、と聞いて何をどうふくらませるんかい?のんべんだらりとした編集で時間をかせぐんかい?と思ったのだが、その心配はない。トールキンに関してはPJに任せときゃ安心。きちんと原作をベースに膨らませて作ってあった。
シルマリルまでPJは映画化するんじゃないかと思うがどうだろう。むしろ、話にのぼっていたトゥックじいさん(本物の馬にも乗れたホビット)の物語をオリジナルで作るとか。
各エピソードを丹念に描き、さらに「LOTR」にきれいにつながるようにしてあるのだ。ガラドリエルやサルマン、そして死人使い(サウロン)に、クモ。異変は60年前から徐々に進行していた、というわけだ。
おそらく、PJで出ているタイトルから見るに、2部でVSドラゴン、3部で戦争、なのだろう。そして、トーリンは(泣)。PJ、ついていくよ。
ホビット 思いがけない冒険
ホビット族のビルボ・バギンズはある日突然魔法使いガンダルフに誘われ、恐るべきドラゴンに奪われたドワーフ王国を取り戻す為、危険な冒険へと旅立つ…。
2012年 The Hobbit: An Unexpected Journey
感想
あー面白かった。2013年一発目の映画館作品がこれで良かった。
映像
いくつか3D作品は見たが、「グリーン・ホーネット」「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」と、2D作品として撮影されたものを3D処理する、という作品だった。監督の見せたいところに焦点を当てる、というちょっとおせっかいさが鼻につくなと思ったのだった。
ところが、これは違う。たとえば、失われた人間の町のシーンなど、好きなところを見ることができるし、私の見たいところが3Dの焦点にあっていなくて見られなかった、というのはエルフ王の出るシーンのいくつかだけだった。
3Dを見た後に2Dを見たのだが、あれほど鮮やかだったホビット庄や色鮮やかなシーンにドットが見られ、ノイズがかかったように、また画質が悪く感じられた。暗いシーンになれば気にならなくなるのだが。
言い回し
瀬田貞二の指輪とホビットを愛読していたので、ゴラムとかストライダーと言われると嫌な感じ(ここはゴクリと馳夫さんと言って欲しい)に言い回しが気になるのであったが、大丈夫。スメアゴルはちょっとしかでない。(ちなみにテレビで予告編を見たとある人は「スター・ウォーズ」に出てるやつが出てると言った。それは、ちっちゃな緑の生き物ですか?と聞くとそうらしい。マスター・ヨーダをスメアゴル扱いかよ…)
吹き替え直後に字幕版を見たが、やはり俳優の生の声が一番だ。イギリスの俳優が多いのだがイギリス訛りが強くなくて聞きやすかった。
言葉で面白かったのはうすのろトロルたちだ。オーストラリア訛りに近いと感じたのだが。「今日もマトン、昨日もマトン」のところが「トゥダイ」「イエスタダイ」に聞こえたのだ。
ビルボ・ゆるキャラ疑惑
何はともあれ、マーティン・フリーマン総受けじゃない。
ガンダルフ、あなたはなぜビルボを連れていくと決めたのですか?本人にもわかってないとは。この旅のマスコット、ゆるキャラ扱いですか?
ドワーフたちの臭そうなこと。トーリンは頭も固いし。嫌いじゃないが、ずっと一緒はきつそうだ。よし。この「こいぬ」を連れていって、旅の慰めにしよう。役に立つこともあるだろう。と懐に「こいぬ」を忍ばせるがごとく、「こいぬ」の代わりに成人(中年)の「ほびっと」を忍ばせたんですか?
ドワーフたちもドワーフたちで、バーリン、ドワーリンを始め、ボフールに若いキーリとフィーリまでビルボを愛玩してるじゃないか。愛玩犬ならぬ、愛玩ホビットですか。
このドワーフに家を荒らされる(片付けるけど)とき、困ったような顔をするマーティンは、ホームズに翻弄されるジョン・ワトソンのとき同様かわいいかわいい。こんな顔をされるといたぶりたくもなる。特に、「今夜はおいしい焼き魚定食にしよう」と用意していたのに、焼き終えてさあ食べよう、としたところにやってきたドワーリンに魚を頭からむしゃむしゃやられるシーンで、隅っこに座ってしている困った顔。良いねえ。良いよ。ポスターのようなしゅっとした表情は一切ありません。華がない中年ホビットだなんて言っちゃいけません。私はフロドのイライジャ・ウッドよりはるかに好きなのだが。
トーリンに至ってはビルボに疑いをかけていたのに、命を救ってもらって抱きしめるのだが、この時、ビルボを「私はお前が足手まといだと言った。お前はこの旅に耐えられないとも言った。私の不覚であった(ぐわしっ)」とツンデレ攻め。ツンデレ王子、って本物の王子か。
そういや、ドラゴンはカンバーバッチだし、このドラゴンと戦う物語だからビルボさんをいたぶるじゃないか。死人使いもカンバーバッチだが絡むだろうか
分裂しているスメアゴルだが、善側はたまに妙にキュートだったスメアゴルだが、ビルボに色目を使ってないかい?と思ってしまうほど毒されてしまった
読んでいてもそう思ったが、映像で見ると、あんな気の毒なスメアゴルの落し物をパクるわけで、指輪取得のくだりはやっぱりビルボが悪い。スメアゴルが「騙された!」「バギンズにくむう」と怒るのもわからんではない。あんたがこんなもんを拾ったから、フロドは苦難の旅にでなければならかったのだから。
好きなシーンはトロルのところだ。
ぽかんとした若いドワーフ(二人、なのか、二匹、なのか?それとも、二頭、なのか?)にハートをわしづかみにされたというのもあるのだが。鼻水だらけになったマーちん@しのびっと(しのばびっと)と、驚愕するトロルのシーンは思い出すだけで笑えるもの。
キュートなドワーフども
ちなみに、ひげ面は好みではない。デブも嫌いだ。この映画はいわゆるBeard Bearばっかりが集まっているのだが、キュートなドワーフどもだ。
ビルボに出会ったときに、みんな「お見知りおきを」(英語じゃなんだっけ?)とぴょこんと頭を下げるのだがこれでやられた。これは原作通り。指輪も読んだし、見ているのだがこんなにキュートなイメージはなかったぞ。
ただ、13人もいるので、キャラクターの描きわけが難しく、トーリン(おかしら。ツンデレ王子)、バーリン(副官扱いのじいさん)、ドワーリン(獰猛)、キーリ(きれいどころ)、フィーリ(きれいどころのコンビ)、デブの食いしん坊、帽子のいい奴、まではいくつも台詞があるので区別しやすいのだが、補聴器、変な髪形、斧がささったの、世話好きのじいさん、とああ、あと二人ほとんど記憶にない。あと二作あるのでそれぞれ活躍するシーンを作ってやってくれよ、PJ。
ビルボの家の暖炉でトーリンを囲んでドワーフどもがドワーフの歌を歌うのだが、これまた良い。エンディングソングで別の方が歌っているのだが、字幕版では実際にドワーフどもが歌っているようだ。吹き替え版は日本語の声優さんたちが歌っておられるようだが、やはり迫力不足だ。歌いだしの、ぶおおおおおおお、と低音を響かせるところでぞくぞくくるほどなのに。けれど、子供が見ることを前提にしているのだろう、日本語にせざるを得なかったのかなあ、と思う。
キーリ
おっさんマーちん萌えに行く予定だったのに、若いのを初頭に見つけてよだれを垂らさんばかりに見たのである。
キーリ役の俳優さんのかわいいこと。ひげ面ではないし、オーランド・ブルーム的「きれいどころ」に置いたんだろう。ただ、おーりーさんには萌えられなかったのだが、このエイデン・ターナー、いけます。良かった。完全におっさんにはまり始めたのかと動揺していたのだが、大丈夫。
弓の名手なのでよくトーリンに「キーリ!」と命じられているが、どうもトーリンが一番かわいがっているのがこのキーリ。
トロルのシーンで馬がいない、とぽかんとしているとことでハートをわしづかみにされた。
(続編の「ホビット 竜に奪われた王国」ではレゴラス(オーランド・ブルーム)と同じ画面に写るばかりか、同じ人を好きになっちゃうという・・・こちらでもハートを鷲掴みにしてくれた)
他のひげもじゃドワーフたちも実はイケメンが隠れているかもしれない。
ツンデレ王子トーリン
さてトーリンである。
LOTRにおける、国のない王子アラゴルン同様、トーリンも国のない王子だ。二人とも勇敢な戦士ではあるがアラゴルンが受動的だったのにたいして、トーリンは非常に能動的だ。
指輪物語の馳夫さんは嫌いではなかったが、LOTRのストライダー、アラゴルンはヴィゴ・モーテンセンが好みではなかったのがいけなかった。もっぱらメリーとピピンに感情移入してしまい、フロドも好みではなかったので、「ホビットの冒険」の方が感情移入しやすかった。
原作のトーリンは爺さんなのだが、映画では今回は比較的若い。壮年のドワーフだ。
偏屈さは長老ゆえかと思っていたが、どうもそうではないようだ。ガンダルフとしょっちゅう衝突している。
実は他のドワーフやビルボが何をしているのか非常に視座が高いところにあるというか、よく見通している人だった。ビルボ側から語られる「冒険」ではこういう見方はなかなかできないところである。
ビルボが参加するにあたっても「命の保障はできないんだ」とガンダルフに語るのだが、ドワーフでもない者を加えたくない、というよりも、巻き込んで死なせたくない、というふうに私はとった。
ずっとビルボを気にかけていて、ビルボを見ているのだが、それは責任感からだろう。
本当に足手まといだと思うなら、トロルにビルボがつかまったシーンでもビルボを見殺しにしただろう。児童小説なので殺しちゃまずいか)。生きて帰らせる、それだけだったのだ。
けれど、ビルボに命を救われてからのシーンはツンデレ王子にしか見えなかった。とうとう私は腐ってしまったではないか。
エルフ
エルフ王はどこか見たことのある眉毛、と思ったら「The Fall」のイケメン眉毛、リー・ペイスではないか。どちらかというとワイルドなドワーフのほうが似合いそうだと思っていたのだが、気取ったエルフの王だったじゃないか。化けるね。
ガラドリエルでケイト・ブランシェットが出ていた。「エリザベス」では下品。「リング」でもむしろ下品だったけれど、ここに来てなかなかの変身ぶり。
ホビット 竜に奪われた王国
小さくて臆病なホビット族のビルボ・バギンズ。ある日ひょんなことから、勇敢なるドワーフの一行と共に、彼らの王国を取り戻すため危険な旅に乗り出すことになる。王国を奪ったのは、一頭の竜。行く手にあるものはすべて炎を吹きかけて破壊する、恐るべきスマウグだ。
さらに、ビルボたちの旅を阻むものたちが次々と現れる。森でどう猛で巨大なクモの群れと戦い、エルフの牢獄に閉じ込められ、激流を下りながらオークと死闘を繰り広げ、たどり着いた湖の町では人間たちに捕まってしまう。そして、彼方にそびえるはなれ山に待つ最強の敵、スマウグ――果たして彼らは竜のもとにたどり着き、王国を取り戻すことが出来るのか――?
2013年 The Hobbit: The Desolation of Smaug
感想
今回はビヨルンに出会うところから失われたドワーフ王国のあったはなれ山に忍び込み、竜のスマウグからアーケン石を奪い返そうとする物語。
ようやく見ることができた。1月に香港に行ったときにかかっていたのだが、IMAXで二千円とか日本並みの値段だったし、香港なのだから香港映画を見るべきである。「救火英雄」を見たのだ。今回ようやく見られるようになったのだがやはり時間がなくて、3D吹き替え版しか見られそうにない。(3D吹き替え版か2D字幕版の二択なのだから仕方がない)。
正直に言うと、前作の方が萌え萌え度が高くて面白かったのである。
今回はトーリンがツンでもデレでもなかったからなあ。
今回の見所はまずビルボが指輪に囚われて行くところ。もう顔が悪い悪い。純真な(おっさん)ホビットはどこにいった。旅のせいで悪に引きずり込まれたなあ。「いとしいしと」って言いそうだったぞ。
そして、キーリとレゴラス。やっぱりキーリを演じるエイダン・ターナーは顔要員であった。
この人は顔はカエル・ガルシア・ベルナール並みに濃いが、ラテン系ではなくアイルランド人。
原作にはいない森のエルフの近衛兵タウリエルは確かにガラドリエルを演じたケイト・ブランシェットに少し似た雰囲気であった。エルフのタウリエルとドワーフのキーリ。この二人はどうなるのだろう。意識がもうろうとして苦しんでいるところで「タウリエル?まさか。タウリエルなわけはない。彼女は遥か遠くで星の下を散歩しているはずだ。彼女は僕を愛してくれるかな」というシーンがとても好きだった。
王子レゴラスは想いをよせるタウリエルのために恋敵(しかも見下しているドワーフ!)のキーリを守ることになった。いいねえ。私はこういう男が凄く好きなのだ。
レゴラスは「ロード・オブ・ザ・リング」に引き続きオーランド・ブルームが演じている。メイクのせいもあるのだろうが、ちっとも老けない。良い意味では10年前に自分が演じた人物の過去を演じなければならないのに、違和感が全くなかったこと。筋肉が増え過ぎもせず、やつれたようでもなく、頬の柔らかさも体のラインも昔のままだ。当時はまるで興味がなかったのだが(あのときはむしろ、ピピンとメリー辺りに萌えていた)、いいじゃない。悪い意味では成長がない。
レゴラスの父、森のエルフの王、スランドゥイルを演じたのはイケメン眉毛ことリー・ペイス。あいかわらず眉毛維持である。
ドワーフを捕らえてトーリンを「助けてやっても良いが」というところはなんとなくは虫類的であったが、美しかった。スランドゥイルの偏狭さがお耽美になるとは思わなかったけれど。
ベネディクト・カンバーバッチは、スマウグの声なのだが、今回は吹き替え。残念であった。動きもベネディクトらしいのだが、「ホーリー・モーターズ」のモーション・キャプチャーのようにして撮影したのだろうか。
もう一つベネディクトの「声」が吹き替え版でも聞けると思うのだが、それは死人使い・ネクロマンサー。低音が良いわ。炎の中の姿(まるで獣の眼、今回ならスマウグの眼のような)が出てくるのだが、その細身の姿がベネディクト風だった。
どうも、スマウグの顔のモーションキャプチャーをしたようだ。画像があったので上のまとめに貼付けておいた。
ホビット 竜に奪われた王国 エクステンデッド・エディション(特典映像付)(字幕版)
ホビット 決戦のゆくえ
世界を真っ二つにする最大の決戦。壮大な冒険が今、感動のラストを迎える!
ホビット族のビルボは竜に奪われたドワーフの国と財宝を取り戻すべく冒険の旅に出た。
旅の仲間は13人のドワーフと、魔法使いのガンダルフ。やがて、森のエルフたちも加勢して、いよいよ竜と対峙する。
火炎を吐く竜の凄まじい襲撃、財宝の奪還によって生じた仲間たちの対立、その裏側に忍び寄る
さらに巨大な敵の存在――ついに明らかにされる冥王サウロンの邪悪な企み!
押し寄せる敵の大群に、破滅の足音が近づいてくる。団結か全滅か。
大地を二分する壮絶な戦いの火ぶたが切って落とされる!
2014年 The Hobbit: The Battle of the Five Armies
感想
よかったよ。本当に良かった。なんかどこから手をつけていいのかわからなくなってきたけれど。
エンドロールを見ていると主題歌が「ビリー・ボイド」。
あれ??ピピンじゃん。指輪のお気に入りは(小学生の時に原作を読んで以来なのだけど)メリーとピピンなんだよ。えええ、この声、ピピンなの?ケイト・ブランシェットみたいな声であった。
アクション、アクション、またアクションであった。実はわざわざ4DXで見るために北九州は小倉まで行ったのである。それについてはまた後ほど。結論だけ言えば、3Dで、また4DXで見て本当に良かった。
見事だったのはトーリンのリチャード・アーミティッジである。「ホビット 思いがけない冒険」でのツンデレ王子っぷり、「竜に奪われた王国」の指導者ぶり。そして今回の強欲による人格崩壊とそこからの立ち直り。トーリンというキャラクターは原作を読めば決して移入しやすい人物(というかドワーフ?)ではない。それなのに、なんかわかるなあ、というのがこの人の力量だろう。
しかし、その上を行ったのが、リー・ペイス。お耽美で冷酷で強欲なエルフの王、スランドゥイル。タウリエルに「お前に愛の何がわかる」と言い放ち、のちにキーリの遺体を抱きしめるタウリエルを見つめる表情。ラスト、去ろうとするレゴラスに「母はお前を愛していた」とようやく告げた。この三つでこの人(というかエルフ)の本性がわかる。ナルシストで極めて愛情深いにもかかわらず、感情表現が極めて下手なのだ。溺愛する息子レゴラスにその愛は伝わらず、お気に入りだった側近のタウリエルにも去られる。まさか、スランドゥイルに同情する日が来るとは思わなかった。
愛玩用ホビット、ゆるキャラ疑惑の子犬系のマーティン・フリーマンのビルボは、今回も総受けぶりを発揮しないわけでもない。キュートな存在ゆえにスランドゥイルも(嫌味ったらしかったが)アーケン石を受け取ったのではないかと思う。それがマーティン・フリーマンの魅力だ。
しかし、残念ながらそこかしこに「シャーロック」のジョン・ワトソンの影を嗅ぎ取ってしまった。困り顔とか。ふとしたところが「ジョン」が出てくるのだ。残念ながら演じ分けができていない。ちなみに、私はカンバーバッチ派ではなく、マーティン派である。
レゴラス!
レゴラス、こんないい男だったんだ。知らなかった。
私の好物の三角関係は思い合う男女がいて、二人の前途は多難。その女を助けるもう一人の男がいて、というものだ。この報われない二番手くん(花澤類タイプ)が大変に私の好みである。
オーランド・ブルームも一時のイケメンではなくなってきたけれど、魅力が増している。というよりも、この人、こんなにいい男だったのか。じゅるりん。
湖の街を去るキーリはタウリエルに「一緒に来ないか」と誘う。タウリエルの背後からレゴラスが「行くぞ」と声をかける。日本語吹き替えだったが、この声が冷たく冷たくて。わざと空気を読まないキーリはタウリエルを包み込むように迫るのね。目で。もう!タウリエルったら。迷うよねえ。忠誠心の厚いタウリエルは行きたいけれど行けない。
でも、このキーリとタウリエルは低身長のドワーフ男と高身長のエルフ女。キーリ、ちっちゃい・・・。キーリ、かわいいよ。かわいいよ、キーリ。
さて、レゴラスに戻る。
レゴラスは嫉妬心からタウリエルを行かせなかったのか。それとも、キーリを思うタウリエルのために行かせなかったのか。キーリ(というよりもトーリン一行)をオークが追っていたこと、スマウグが死に、財宝をめぐる争いが起きることは容易にわかる。タウリエルのためになることとは、キーリを助けることであった。レゴラスにその意図があったのだろうか。
トーリンが物見の罠にかかり、そこにキーリを連れて行ってしまう。タウリエルはキーリのために物見まで行く。レゴラスはついていく、というよりもタウリエルを連れていく。キーリやトーリン、そしてタウリエルのためにオーク達を射、そして剣を振る。その甲斐なく、キーリは死んでしまう。
その後、タウリエルは一度フェードアウト。戦争の終結まで出てこない。しかし、レゴラスの奮闘はここからである。タウリエルの代わりに敵を引きつけ、倒す。さらにはトーリンも助けてやる。おいしいところを一人で持って行ってしまうのだ。もう♥こっちはメロメロだ。
戦争ののち、レゴラスは旅に出る。ストライダーことアラゴルンに出会うらしい。タウリエルとはどうなったのだろう。原作には出てこないキャラクターなので、「ロード・オブ・ザ・リング」のときにどうしていたのかが気になってしまう。
「ロード・オブ・ザ・リング」がイケメン俳優オーランド・ブルームのピークだろう。その後に日本でもCM出演するなどしていたのを思い出す。当時私はどうも乗れなかったのである。イケメンは好きだ。しかし、あの当時はなんだか軽すぎるように感じていたのだ。ただ、あの頃だよ?私が「あの」軽薄そのもののエディソン・チャンに「かっこいい〜」なんて言っていたのは。
画像検索すると「ロード・オブ・ザ・リング」でのレゴラスの画像が山のように出てくる。一世を風靡しただけある。その美しいこと。しかし、今の方が私は好きだ。人気は下降気味。指輪と海賊もの以外にろくなヒット作はなく、私生活でも離婚。どう見たってドツボにはまっている。20代でアイドル状態になり、30代前半ははっきりいって棒に振ってしまったような俳優だ。決して良い歳の重ね方をした俳優ではない。しかし、ガキっぽかった前回のレゴラスよりも、(設定ではさらに60歳も!)若いはずなのに表情を殺した顔、タウリエルを深く愛する様子。アクションのキレ。とても綺麗なのだ。キャリアがそれほど順調ではなかった分だけ、演技の深みが増したのだろうか。
契約
今回意識させられたのは「契約」である。
バルドはトーリンに「契約したではないか」と金の配分を求めた。おそらく瀬田貞二の役では「約束」にしてあったのではないかと思う。これは「契約」でなければならない。イギリスは契約社会である。そのイギリス人が書いた作品である本作の「中つ国」もやはり契約社会なのだ。契約は履行されなければならない。しかし、トーリンは独占欲からこれを不履行にしたい。その言い訳が「対等な立場ではなかった」なのだ。つまり、強制的に結ばざるを得なかった契約は無効である、トーリンはそう主張したのである。日本で言えば「民法90条により、公序良俗に反するため無効」というわけだ。
次がビルボがホビット庄に戻った時だ。公的文書を求められ、トーリンとの雇用契約書を出す。そうだった。ビルボはトーリンと忍びの者として雇用契約を結んでいたのだった。やはり、中つ国は契約社会だった。
4DX
4DXで見てきたのだが、大正解。
3D眼鏡をかけ、座席が動き、水しぶきがかかってくる。しかも、香りまで楽しめる、というやつ。
値段は通常料金に1300円増しである。なかなかなお値段だこと。もちろん、こんな遠くまで行けるのは土日だけだ。なので、通常料金分は前売りで事前に調達してある。
結論から言えば良い。とっても良い。
四人掛けの座席が一組になって動く。この四人掛けの座席の端の方が揺れが大きいのではないだろうか。揺れが大きい席で満足満足。
キャラクターが刺されてみたり、ぶつかるたびに座席の背中からぽこっと出てくる。マッサージチェアのようなものだ。
苦手だったのが後ろから首筋にかけてかかる風だ。これが気持ち悪いのだ。マフラーを頭からかぶれば大丈夫。
それより嫌だったのが香り。トイレの芳香剤レベルの香料がぶわっとかかるのが嫌だった。しかも、場面で変わるわけでもないような・・・。リアルな香りだったらどうするよ。饐えたドワーフの汗の匂いとかじゃん。お断りだ。
作品を選ぶが、「ホビット」シリーズに限って言えば、4DXで見に行って正解だった。