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ミッドナイト・イン・パリ

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ハリウッドの脚本家ギルは、婚約者とその両親と共に憧れのパリに滞在中。 そんな彼がある夜、0時を告げる鐘の音に導かれて迷い込んだ先は、芸術花開く1920年代だった! これは夢か幻かと驚くギルの前に、次から次へと偉人を名乗る面々と、妖艶な美女アドリアナが現れて・・・。

Midnight in Paris 2011年

感想

監督はウディ・アレン。

たまたま手に取る作品がはずれが多かったので、あたりがひけて単純にうれしい。
ウディ・アレン作品とはあまり相性が良くないのだが、相性が良いときは徹底的に良い。傾向としては相性が悪いのはニューヨークを舞台にした作品で、相性がいいのはヨーロッパを舞台にした作品だ。そして監督本人が出演しない作品も相性がいい傾向がある。今回はヨーロッパ。主演俳優がコメディをさせればぴか一、オーウェン・ウィルソン。監督は影も形もない。期待しちゃう。そしてその期待は外されない。

イネズ一家とギルの不協和音ははじめからだ。ギルは典型的なハリウッドの民主党員。対するイネズの父は「ティーパーティの連中は国を愛するまじめな連中だ」という。何の仕事をしているかはわからないが、経営者側の共和党員だ(おもしろいことに、アメリカでは中間層は民主党員、貧困層と富裕層が共和党員、ということが少なくない)。イネズとギルはどうして婚約したのだろうと思うほど、価値観が違う。このすれ違いの面白さと同時に、観客をギル側に立たせることによって、俗物のイネズ一家を一刀両断にしてみせる。(そうすれば、「馬鹿なアメリカ人」を見て喜ぶアメリカ人以外と、「馬鹿な共和党員」を見て喜ぶ民主党系のアメリカ人に受けるだろう、という計算もありそうだ。)

ペダンチック、という言葉に「知識人ぶった」と字幕を当てたのが上手かった。まさに。ポールの間違いだらけの知識の披露の仕方も二流のアメリカ人らしい。知っていることは全て吐き出さねばならないという強迫観念にでもとりつかれているのだろうか?と思われる人に出会うことがあるのだが、そういう方は大抵ポールのような二流のインテリだったな、と思い出す。

タイムスリップしたというギルの説明を難なく受け入れるのがダリたちシュールレアリスト、というのもすとんと腑に落ちる点だった。

ギルは「価値は時代によって変わる」という一節をそのメタ小説の中に入れるのだが、これが本作の主題かな。2010年代の現在から見れば1920年代のパリは黄金時代。そこにいるアメリカ人芸術家たちはキラ星に見える。1920年代の価値は2010年ではインフレを起こしていると言っていい。けれど、渦中にいる人物(アドリアナ)にいわせれば、「パリの黄金時代は1890年代、ベル・エポック」。しかし、1890年代のドガにいわせれば、ルネサンスこそあこがれ。そこから教訓を垂れ流そうとしないのがアレンの良いところ。垂れ流すならアドリアナには1890年代に残らせないし、ギルにもパリに残らせない。

だが、そんなものより、いちいち男前な発言をするヘミングウェイ、ギルを追いかける探偵の末路など、くすくすと笑いながら見るべき映画である。

キャスト

主演のオーウェン・ウィルソンは東海岸人ウディ・アレンにしては珍しい西海岸人役だ。一人太陽にあたっているような顔をしていて、「場違い」なパリにいるのが面白い。演技ではなく、アドリブ、といった感じで非常に上手かった。一番は、はじめに1920年代に行ったときだ。「え?1920年代?」と気づき始めるシーンで口をポカーンと開けて、周囲(というかゼルダ)にあわせて笑っていく様子が絶妙。

アドリアナ役にファニーフェイスのマリオン・コティヤール。芸術家たちのファム・ファタールにして、主人公ギルのファム・ファタールなのだが、美人ではないところが逆に魅力的であった。

フィッツジェラルド役のトム・ヒドルトンは、線の細さ(というか、なんだか女を殴りそうな雰囲気)が上手く「精神の安定しないゼルダに振り回されるフィッツジェラルド」によく似合っていた。むしろ、エイドリアン・ブロディだろう、と思っていたのだが、ヒドルストンでいい。

ブロディはブロディでダリにはまっている。サイ、サイ、とうるさいダリさん。いいね。一番好きだったのがこのダリさん。

カーラ・ブルー二は当時「大統領夫人」だった。ファーストレディがガイド役を務める映画はそうはない。ただし、演技はできないし、英語で朗読するシーンもつっかえつっかえだった。まあ、リアリティがあるといえばそう。カーラ・ブルーニ→サルコジ、で笑ってしまうのは「ブラック&ホワイト」のせい。決してサルコジ前大統領本人の問題ではない。

ヘミングウェイ役のコリー・ストールは多分初めて見るのだが、男前すぎるヘミングウェイの発言に笑ってしまった。けれど、確かにこの人はスペイン内戦にも参加しているし、裏があるから迫力がある。「キリマンジャロに狩りに行った」というのは「キリマンジャロの雪」だな。

何より迫力があったのはキャシー・ベイツ。ピカソを目の前にこき下ろし、マティスをお買い上げになるガートルード・スタイン。太って年をとってもいいんだね。

ミッドナイト・イン・パリ [DVD]

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キャシー・ベイツ, エイドリアン・ブロディ, カーラ・ブルーニ, マリオン・コティヤール, レイチェル・マクアダムス
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