ナイロビの蜂

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ナイロビに駐在する外交官ジャスティン(レイフ・ファインズ)の元に、突然妻テッサ(レイチェル・ワイズ)の死の報せがもたらされた。警察は情事のもつれによる殺人として処理しようとするが、ジャスティンは愛した妻への疑念を抱きながらも、独自に妻の死の真相を追い始める。そしてテッサの想いを継ぎ、巨大な組織を相手に、命がけの孤独な闘いを始める・・・。

The Constant Gardener 2005年

感想

監督はフェルナンド・メイレレス。

正直なところ、「泣ける」映画にはほとほと食傷していて、「感動」コピーには冷笑を浴びせる私である。今回も同様。大企業のエゴ、アフリカの矛盾、上手く立ち回れなかった女(ちょっと視野も狭いかも)と、その女を愛した男、の四つがメインテーマなのだが、私には一番アフリカの矛盾が突き刺さった。外交官や白人など一部の人々の極めて豊かな生活と、現地の人々の生活の差。何をするにも「お茶」として賄賂を請求され、援助をしても援助をしても、してもらって当然という態度、援助によって私腹を肥やす者。一方、人々のために尽力するのは先進国の人間だけではなく、現地の人にもいること。この映画は赤い大地のアフリカの問題点を如実に描き出している。行ったことはないが、行って自分の目でこれらを見たような気分にさせられた。実際に行くのは当分いいよ。

次に刺さったのは、そんな矛盾だらけの社会の中で懸命にアフリカに尽くしたテッサはイギリス人社会の鼻つまみ者になり、相手にもされないのに、その夫であれば相手にされるという点だった。確かに、テッサは「外交官の妻」でしかなく、いわば専業主婦だ。夫は「外交官」でしかもかなり上級だから、社会的な立場、特にナイロビのイギリス人社会でのインパクトが変わるのだが。時間が行ったり来たりするせいで、テッサの努力が空回りして行く様が、ジャスティンの捜査とほぼ平行して描かれて、痛々しさを増す。この映画は助演女優賞ではなく、作品賞の方が良さそうだ。2005年の作品賞は「クラッシュ」。未見だ。見なくては。

ファインズ兄弟は二人とも熱演型だが、兄レイフは弟ほどくどい感じがしない。「深い愛」役に抜擢されるのはそのせいだろうか。今回も「イングリッシュペイシェント」のイメージを引きずる。ケニアと北アフリカの砂漠という違いはあるが、アフリカである。けれどなんだか変態チックに見えてしまうのは「レッドドラゴン」を見たせいだろう。多分そうだろう。本作では非モテと見るが、決して変態ではない。ただの、園芸が好きな内気な外交官だ。ちょっと童貞っぽかったが。

妻役はレイチェル・ワイズ。「ハムナプトラ」に引き続き、なのか知らないが舞台はアフリカである。才色兼備だがいわゆる「吠える女」を熱演する。アフリカに行く、という目的のために、非モテな外交官の園芸オタク君と結婚したけれど、その結婚そのものは愛に満ちて幸せだったようだ。

ちょっと気になったのは、テッサのPCはジャスティンが見ることができなくされるのだが、テッサのいとこのギークな息子によってジャスティンはテッサの残したデータに触れることができる。ただ、このいとこはテッサと特に親しかったらしいのだ。親しかったなら、当然このいとこはマークされるのではないだろうか。ギークな息子はそこも煙幕をはることができるのか?また、ジャスティンは殺され、ジャスティンとテッサの本国イギリスでの葬儀(というよりも追悼集会)で、このいとこの手によって告発は成功する。けれど、いとこに頼るよりも、自分で告発した方がテッサは喜ぶと思うのだが。確かにジャスティンの死によって相手は油断したし、深く愛した人が死んでしまえば、生きる価値すら感じなくなるのもわかるのだが。それは「ジェイ・チョウを探して」を見てだね…

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