魔術師マーリン (最終シーズンまで)

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生まれながらに不思議な魔法の力を持っているマーリン。しかし王国キャメロットでは魔法が禁じられており、魔術師は死刑にされていた。地下に閉じ込められたドラゴンの予言により若きアーサー王子の召使となったマーリン。表向きには魔術師であることを隠しながら修行を重ね、アーサーと王国を支えていく。

2009-2012

感想

私の好物の中に中世騎士物語というものがありましてね。アーサー王もローランも好物。

こっちはまだ積ん読になってる。

しかし、私はこれで育った。

手を出した理由は、「赤毛のアン」のシャートットの乙女の、あれですよ。

毛色の変わった「アーサー王」

さて、本作「マーリン」なのだけれども、シリーズ1から3くらいまでは、おいおい、アーサー王が学園ドラマになっちまった、という感じで正しく聞き流すにふさわしい。

マーリン役のコリン・モーガンはファニーフェイス。アーサーは「王子」でわがままいっぱい。アーサー王子役のブラッドリー・ジェームズは端正な顔立ちなのだが、品がない。二人の演技はなんだか微妙だし、女優はというと、なんとグウィネヴィアがメイドなのはいいのだけれども、なんとアフリカ系。この人の演技は初めから割りに良かった。

ひどいのはウーサー王の宮廷に引き取られたという設定のモルガーナ。湖の貴婦人モーガンですよ。この人がなんといいますか、「モルガーナ姫」と「姫」扱いされるのがなんだか変な感じ。グウィネヴィアがメイドとしてこの人に使えています。

登場段階では「ウーサーによって魔法を禁じられたキャメロットに、宮廷医師のガイアスを頼ってマーリンという少年が訪ねてくる。母は魔力のあるマーリンを旧知のガイアスに託した。」マーリンは嫌な坊ちゃんに出会うが、それこそがアーサー王子。マーリンは王子を助けたことにより、アーサーの従者になって、グウィネヴィア、モルガーナと知り合います。アーサーのピンチを幾度となくマーリンが助けてやる。

ここで私は思った。

ケイちゃんはどこ!?

好きなんですよ、アーサーの乳兄弟のケイ。ランスロットにはどうしようもなく惹かれるし、その子ギャラハッドも好きだよ。でもやっぱり頼れぬ兄貴のケイちゃんが好き。

ねえ、ケイは?って最後までケイは出てこなくて、言ってみればケイの役を「従者マーリン」が担っていました。

シーズン1ではマーリンはほとんどお調子者で、お節介。ドラゴンに「あのドルイドの子は助けてはならない」といわれても、どうしようもなく助けてしまう。その名がモードレッド。異父姉のモーガン(もしくはモルゴース)とアーサーの間に生まれた不義の子モードレッドがドルイドとして登場しました。そしてその子の逃走を助けるのがアーサーとモルガーナ(とグネヴィア)。

シーズン5までの設計は一番初めから行われていたようで、初めから話がたまに脱線しかけても、その伏線はほぼ全て回収されていく、なかなかの設計でした。日本のドラマではこういうのができないのはなぜなのでしょうか。残念です。

シーズン1では日本語訳のせいなのか、モルガーナとアーサー、マーリンとグウィネヴィアの組み合わせのようにも見えていました。(王に後見されるモルガーナはアーサーと婚約している、というようなセリフがあったような・・・)ランスロットの登場により、グウィネヴィアはランスロットにすごく惹かれるのですけれども、まあ、ランスロットとグウィネヴィアはセットよね。

そこにシーズン2でお邪魔虫アーサーがグウィネヴィアに惹かれ始め、グウィネヴィアが誘拐されて偶然そこにいたランスロットは命をかけてグウィネヴィアを助けようとしてアーサーと三角関係になるあたりから私のエンジンがかかり始めました。

ランスロットと騎士達

まあ、仕方がない。私がもともとランスロットが好きなんだから。演じているサンディエゴ・カブレラがこれがまたどストライク。金髪碧眼のアーサー、黒髪のランスロットという構図は作ってるよなあ。ランスロットがほぼ脇役で、もう一人のブルネットがガウェインでこっちはずっと出ていたんですけどね。「アーサーの血縁」「傲慢なガウェイン」が脳筋のいいやつになっていました。これも可愛くてよろしい。ランスロットとガウェインの対立はない、というか、ランスロットがさっさと退場するからない。

ランスロット、ガウェインとならぶ円卓の騎士で有名どころというと、トリストラムに、パーシヴァル。パーシヴァルはまあ、中世あたりの騎士といえばまあ、実際のところはこういう感じだったんだろうな、というなんか野獣めいた人でした。トリストラムとイゾルデが密輸業者とか、そこであの人を使いますか!という楽しみがありました。

私のケイちゃんですが、「レオン」という古参騎士がいるのですけれども、これは「ケイ」と名前を変えるべきじゃないかと思いつつも、「ケイ」のピエロ的なところと「騎士団の二番目」はやっぱり合わないので、やはりケイちゃんはマーリンの中に回収されるのでしょう。

「モルガーナ」の変貌

「モルガーナ」は湖の貴婦人・魔女モーガン。アーサーとは父の異なるsisterのはずなのだけど、まあ、予知夢に苦しむ魔女だけれども、と思ったのですね。やはり出生に秘密があり、ウーサーの不義の子という設定。きたね、18禁。(といいつつも読みまくっていた中学時代)

マーリンはモルガーナに自分同様に魔力があることを知り、その苦悩に同情し、モルガーナをほとんど愛していた。けれど、マーリンが良かれと思って行うことがどんどん裏目に出る結果になる。本来はそこで死んだほうが良いモードレッド、そしてモルガーナ。ドラゴンにこの二人は助けてはならないと言われてもマーリンは助けてしまう。

そしてモルガーナもマーリンをそこそこ憎からず思っていただろうに。アーサーとグネヴィアとは異なり、二人が愛情を確かめ合うことすら一切ない。このモルガーナが自分の出生の秘密を知り、全てを恨み始めるところで物語は急展開していきます。

そう。演じているケイティ・マクグラスが化けた。最後の最後までグウィネヴィア役のエンジェル・コールビーが変わらなかったのだけれども、それはグウィネヴィアを演じるために求められたことと、モルガーナを演じるために求められたことが全く違ったからなのでしょう。

キャメロットを狙う魔女・モルガーナになるとメイクなども変わってこれがまた似合っていないし、軽くしゃくれたアゴもやっぱりなんだかなと思うけれど、そうだよ、モーガンってそうだよ、これだよ!という感じでした。

即位前後になれば、アーサーも下品な雰囲気がなくなり、より王子らしくなっていくし。そうだよ、あのアーサーって厳格で正義を貫こうとする(だんけど、なんだか融通が利かない木偶の坊)ってところも良く表現されています。

アーサー王ものの齟齬のつじつまの合わせ方

アーサー王ものはたくさんありますが、齟齬がたくさんあります。いわば、二次創作のオンパレードなので、イギリスでAさんの書いた薄い本がフランスのBさんの書いた薄い本と違っていて、どっちも読んだフランスのCさんがこの二つを良いところ取りしてさ、という世界なんですよ。だから仕方がない。

一番の齟齬が、気高いランスロットがこれまた高潔なグネヴィアを愛し、そこまではいいとしても二人は不義を働く点でしょう。映像にしたら18禁だろうし、それってどうよ?それが、グウィネヴィア(かつて愛してくれたけれどもう別の男のものになった)への愛のために命を投げ出したランスロットが、モルガーナによって蘇り、魔法をかけられたグウィネヴィアが応じてしまった、という形でつじつまが合うわけです。

マーリン本人、モーガンもそうで、偉大なる魔術師でキャメロットの味方のはずのマーリンが、アーサーを狙うモーガンと何かがおかしな関係になっていたり。モーガンもキャメロットにとって善人なのか悪人なのか。そもそもモーガンがものによっては悪女だし、しかしものによっては湖の女神モーガンですらあります。それは本作では少年マーリンのモルガーナへのほのかな愛情と全てが裏目に出たこと、湖の少女を愛したという話でつじつまが合うようになるのですから。「モーガン」を分けちゃったのね。

ラスト、モルガーナはマーリンの手にかかって死ぬのだけど、なんかこう、初恋の人、幾度となく助け助けられた人を自分の手にかけて殺さなければならない、いや、それはひょっとすると相手にとっては救いなのか、という、性癖をついてくるので、ヤバかった。本当にラストのモルガーナとマーリンのところはヤバかった。

BL

モルガーナとマーリンも大変良いものだけど、シーズン5は完全にBL。

いやまあ、シーズン1からもいわば無能の人に偽装したマーリンが魔術師であることを隠して宮廷にやってきているので、言ってみれば男装の麗人的だったけど。そして私は男装の麗人ものが大の好物。

アーサー王は魔法への理解はあるけれど、許したわけではない。特にウーサーを治療すると言ってやってきた魔術師(実は加齢の術を使ったマーリン)が、モルガーナの黒魔術によって術が逆になるようにされてウーサーが死ねば、「魔法は禁じるべきだ」と考えている。そんな状況のもとではこれがモルガーナによるものだということは、マーリンは何も説明すらしない(できない)ので、アーサーは事件の真相を知らないまま。

アーサーは真相を何も知らない事件は他にもたくさんある。騎士として加わったモードレッドもその魔力を隠しているけれど、モードレッドは偉大な魔術師のエムリス(マーリンのこと)がその手柄を全て誰かにやって、報われないままでいることに感嘆する。(モードレッドはドルイド娘の死がきっかけでマーリンを恨み、アーサーをあっさりと裏切っていくのですがね。)

そう、命がかかっているのもあるけれども、本作のマーリンはひたすらにアーサーに献身的です。シーズン1では「あの人を助けたい」という「あの人」は必ずしもアーサーではないのだけど、徐々に全てがアーサー最優先で、しかも必ずしも報われるわけではない。だから、優先されないモードレッドはマーリンを恨む、というのもまたなんだか、こう、性癖をついてくるBLで。

何も知らないアーサーにマーリンはついに魔術師であることを明かすけれど、私は男装の麗人が「私が女だと知ったらあの人は怒るだろうか」と悶えるところにも萌える人なもので、ここもまた萌えに萌える。そして受け入れられるようで受け入れられないような、アーサー(瀕死)もまた萌える。何がいいって「瀕死」という点。

「アルビオンの地に危機が迫るとアーサーが復活する」。だから現代もまだマーリンは一人で生きている、というシーンにも萌え以外の感情を失った。

モルガーナとマーリン、モードレッドとマーリン、そしてマーリンとアーサーと一粒で三度美味しいのだから最高。

キリスト教がないこと。アフリカ系のグウィネヴィア

キリスト教

アーサー王ものはギャラハッドと聖杯伝説に見られるように、とてもキリスト教的な物語なのです。物語の時代設定からすると、キリスト教が入ってきた頃だろうし、アーサー王が敬虔なクリスチャンという設定は多少微妙なのではないかと思う。

しかし、私はアーサーのモデルの一人はシャルルマーニュであろうと思い込んでいる。つまり、大陸には偉大な帝王がいて、じゃあ、あの島にもいたらいいよね、みたいなの。なんかサクソン人と戦った王様とかいない?みたいな。(ただ、ナショナリズムを結びつけるのは短絡すぎるのね。あくまでも「キャラを借りてきた」説)もう一人の「キャラを借りてきた」説は、トマス・マロリー(15世紀)よりも少し前の12世紀のフリードリヒ1世。バルバロッサよ。「王国に危機が訪れればバルバロッサが復活する」伝説をもらってきたんじゃないかと。ごちゃ混ぜになっててもいいくらい。

キリスト教的なのは、物語が成立しはじめた時期(14世紀・15世紀)がそうだから、というようなものだと思ってる。

中国ドラマなら、唐以前の設定なのに、「琅琊榜」で現代のような感じでお茶を飲んでたり、六部があるとか、そんなものなのでしょう。

だが、本作では彼らが何を信仰しているのかよく分からない。結婚式のシーンでも司祭的な人はいるのだけど、あの人・・・記録を保管している人じゃなかったっけ・・・。教会らしい教会も出てこない。魔女狩りも「魔法使いだから」という理由であって、神さまはでてこない。

新しい。

グウィネヴィア

そして初めにも書いたが、アフリカ系の王妃グウィネヴィア。アーサーがマーリンとともに駆け落ち失踪するので、グウィネヴィアが女王として即位する。なんて新しいグウィネヴィアだろう。

「グウィネヴィア」というと、なんというか、ランスロットが憧れに憧れるのだけど、芯がない。アーサーになびき、ランスロットになびく、そんな女だったのに、本作のこの人は違う。

何かとマーリンやガイアスを頼るけれど、それは魔法絡みでどうしようもないからであって、本質的に芯が強い。アーサーに対してもはっきりと「あなたは無礼だ」と言い、アーサーが良き王になるのはグウィネヴィアのためだと言っていい。ランスロットだってそうだ。マーリンにそそのかされて出自を偽るけれど、グウィネヴィアを見てそれはダメだと思う。グウィネヴィアはレオンに即位を促されるけれど、その即位に異を唱える人はキャメロットにも視聴者にもいない。

ハリウッドものなどでは、そこにこんな肌の人(アジア系・アフリカ系)がいるわけないでしょ、オセローでもやっててよ、と思うことがあるんですね。アーサー王ものの場合はアフリカ系の人がいても「アーサー王ものはファンタジーだし」で片付けられますけどね。これはポリティカルコレクトネスというやつなのですが。シーズン1では本作においてもそう思わないわけではないけれど、シーズン5まで見ると本作はちょっと違った。

ポリティカルコレクトネスの観点からは、金髪碧眼のアーサー王子(支配者)、肌が浅黒く、貴族ではない庶民のランスロット(非支配者)、アフリカ系のメイドのグウィネヴィア(さらにその下)というのは、ほとんど現実そのままで、差別を助長するような配役方法と言えましょう。

本作においてはメッセージは明快に別のところにあって、別にPCに配慮したわけではなかった。

そう、見ている人が若い人たちで、キリスト教を信仰しない人も少なくない。肌が白くない人が少なくない。肌が白くないと美しくないわけではない。黒人メイドだって王に愛されてその才能によって女王になれる。若い子たち、しかもルーツをイギリス以外のところに持つ人たち、特にマイノリティの女の子に向けて、「これぞイギリス」の物語を使って「受け入れていますよ。努力は実りますよ」というメッセージでもあったな、と思ったのです。

シェイクスピアではないからね、アーサー王は一つ決まった版があるわけではないからね。いい題材があるものだと思いました。

それがパターナリスティックなユニフィケーションであって・・・というのはあるんだけどね。移民のイギリス的受け入れが多様性の維持、フランス的受け入れがユニフィケーションと言われるのですが、イギリス的な受け入れが失敗に終わった(フランス的受け入れ方も問題はあるんだが)というようなことが言われていた時期のものなので、BBCは物語によるユニフィケートを試みたなのだな、と思ったのです。

ただ、それはグウィネヴィア側からであって、マーリン側から見ると「抗えないことがある」「善意が必ずしも良い結果をもたらすわけではない」なので、まあ、そういうことだ。

しかし!私は萌えた。シーズン5は萌えに萌えて、最後まできちんと伏線を回収しつつ、クオリティもきちんと保ち、物語を終わらせてくれてありがとう。

魔術師マーリン

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