80年代末に小学生低学年だった私は、リアルタイムでキョンシーブームを知っている。われわれお子ちゃまたちはキョンシーごっこをして遊んでいた。その頃、怖いキョンシーと怖くないキョンシーの話があった。テレビで怖くないほうだと思ってみたら、怖いほうで大変恐ろしい思いをしたことがある。怖くない方は、台湾の「幽幻道士」。テレビドラマシリーズである。
その怖い方の「キョンシー」は、香港映画で、日本では「霊幻道士」というタイトルになっている。「霊幻道士」と邦題にはつくものの、サモハンキンポーのプロデュースするものは、このゴールデンハーベスト(嘉禾)の四作のみ。香港コメディの古典として、見ておくべきなのはこの四作。(というよりも一作目だけでいいような気がする)
霊幻道士
化けモノ退治を生業とするガウ道士が、大富豪ヤンから先代の改葬を依頼される。
墓を掘りおこしてみると、先代は怨念を抱き成仏できないでいた。
ガウ道士は、弟子のモンとセンとともにその遺体を持ち帰るが、いつのまにかキョンシーとなって蘇った先代はヤンを殺害して逃亡。
3人はヤンの美しい娘ティンを守るため、キョンシーを迎え討つ。
原題:殭屍先生 1985年
感想
サモハンホラーの代表作。監督は、リッキー・ラウ。サモハンキンポーは、プロデュースに回っている。主演は、ラム・チェンイン。
死人がぐわっと目を見開くところで怖くなったのだろう。だが、今見るといちいち笑える。
デジタルリマスターして、音もドルビーデジタル5.1で聞けるという何という豪華な、アホコメディだろう。
アホなコメディだが、香港らしくテンポはとてもいいし、香港なのに脚本は良く練られている。メイクでキョンシーがお面だなあ、とわかったりするが、ひどくちゃちな映画ではない。今でも十分見るに耐える。ちなみに、私は当然ながら字幕で見る。
霊幻道士2 キョンシーの息子たち!
墓泥棒が盗掘中に親子3人の遺体を発見し、持ち帰ってしまう。離れ離れになった我が子を追って街に出現した親キョンシーを退治すべく、霊幻道士が立ち上がる。
原題:殭屍先生續集之殭屍家族 1986年
感想
監督は、前作に引き続き、リッキー・ラウ。サモハンキンポーはプロデュース。
つまらん。
ただ、舞台を現代にしたのは面白い。しかも、漢方医があまり役に立っていないのもリアルでいい。ラム・チェンインなのに。まあ、墓荒らしと漢方医にその娘の恋人たちがどたばたとする、というだけ。アクションもほとんどない。
ああ、キョンシーが街に出て、というシーンはパニック映画めいていた。これも面白い試みだと思う。キョンシーが車の上をぴょんぴょんと飛んでいくのだが、一瞬ワイヤーが見えたような気がした。
どたばたするし、グロいシーンはないわ、子供のキョンシー(ごんしーざい、と呼ばれていた)は比較的かわいいので、子供受けしただろうなあ、と思う。
それにしても子供たちがでぶいことでぶいこと。
霊幻道士3 キョンシーの七不思議
キョンシー兄弟と組んで詐欺紛いの悪霊退治をしていた半人前の道士・マオ。ところがある夜、本物の幽霊一家に遭遇してしまい…。
原題:霊幻先生 Mr. Vampire Part 3 1987年
感想
三度、監督はリッキー・ラウ。サモハンのプロデュースで、実は撮影に入っているのが、アンドリュー・ラウ。
前作が現代劇だったのに対して、時代劇リターン!
グロい。本当にグロい。それも、パン・ホーチョン的な笑えるグロさではなく本当に気持ちの悪いグロさだ。
馬泥棒を撃退するシーンもそうだし、手下の幻術師をおとりにするシーンもそうだし、油のところもそうだ。おえっとなる方も少なくないだろう。
笑えるシーンもないわけではないのだが。キョンシー兄弟は面白かった。けれど、キョンシーって霊魂なのか?死体ではなかった?まあ、いい。ストーリーもあまり練られていない。
そういえば、小さい頃、人のかかとを自分の足の甲に乗せて「乗り移る」っという遊びがあった。あれはここからきていたのだろうか。
カメオでサモ・ハン・キンポーが出ていたし、ちらほらと見たことのある顔がいくつかあった。
霊幻道士完結篇 最後の霊戦
山奥に暮らす道士と和尚は、長年にわたる犬猿の仲。顔をあわせては、術の限りを尽くし、イタズラと仕返しをくり返していた。そんな折り、黄金の棺に封印したキョンシーを護送中の一団が激しい雷雨に遭い、封印が解かれてしまった。キョンシーがこの世で大暴れすれば中国全土が占拠されると知った道士と和尚は、一致団結し、最凶最悪のジャンボキョンシーに立ち向かうことに。
1988年 殭屍叔叔 Mr.Vampire Saga IV
感想
監督は、リッキー・ラウ。プロデュースがサモハン。
主演は、ラム・チェンインではなく、アンソニー・チェン。
道士と対立する和尚は、なんとウー・マ。
と思うと、思い出すのは「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」。あっちが1987年で、香港は早撮り早出しだった模様なので、そのイメージで引っ張ってきた可能性はあるのかも。こっちは、嘉禾。あっちは当時新興のレイモンド・ウォンの新藝城(シネマシティー)。
このシリーズは比較的配信されやすい。
コメント
[…] いわゆるサモハンホラーの一作目。なんと霊幻道士よりも先なのだから。見慣れた人が多く、主人公はサモ・ハン・キンポー。張を化け物屋敷に連れて行くのはウー・マ。棺桶が壊れて出てくる死体もウー・マでは?霊幻道士の道士役のラム・チェンインは今回は官吏。妖術使い二人に見覚えはない。 […]
[…] 監督は、前作に引き続き、リッキー・ラウ。 […]