ミレニアム ドラゴンタトゥーの女
40年前、ストックホルムの孤島で忽然と姿を消したひとりの少女。彼女の血縁である大企業グループ重鎮が捜索を依頼したのは、名誉毀損で有罪判決を受けたジャーナリストのミカエルだった。彼は、背中にドラゴンのタトゥーを入れた女性調査員リスベットの協力を得て、事件の裏に潜む忌まわしい真実を暴き出していく―。
孤島を舞台にした密室ミステリーの魅力に加え、未解決事件の謎を追う緊迫のサスペンス。経済スキャンダルを巡る社会派エンターテインメントの要素が見事なバランスで混在。観客をスクリーンに釘付けにする。
Män som hatar kvinnor 2009年
感想
監督はニールス・アルデン・オプレヴ。
カウリスマキ映画ほどではないが、やはり北欧映画。登場人物にあまり表情がない。個人的な経験上、フィンランド人よりもスウェーデン人の方がとっつきやすい。リンドグレーンで育った者としては「名探偵カッレ君」とミカエルが呼ばれるのが少し嬉しい。ネタはこれ。
さて。
女戦士ものはやはりミソジニーの傾向がある。リズベットもハリエットも虐げられた女だ。(虐げられていない女戦士ものは少ない。)
ただ、本作の違いは虐げた男たちは、みな制裁を加えられる。
リズベットをレイプした後見人はビデオに撮られ、レイプされた上に、腹に「私はレイプ魔のサディストです」と入れ墨を入れられる。こういうときはやっぱり首を絞めたり緩めたりして遊ぼうじゃない?
ハリエットを虐げた父はハリエットに殺され、父とともにハリエットを虐待し、また父とともに他の女たちを殺した兄はリスベットによってゴルフクラブで殴られ、逃げる最中に自己の過失により崖から車ごと転落する。リスベットに助けを求めるが、当然のことながらリズベットは助けない。そして、その悪行は白日の下にさらされる。そして、ハリエットは逃げ、帰還することができた。
私の中でスウェーデンとナチはこれまで繋がっていなかった。ノルウェーはナチスと戦った(オスロに行けば、そういう展示もある)が、スウェーデンはナチスに通行させ、ドイツからの被害は比較的少なかった場所だ。ナチに入った者もいたのか、と知った。北欧やオランダは高福祉の国で有名だ。それを目当てに移民や難民が押し寄せる。それに反発する者はいて、ノルウェーでは乱射事件になった。
リスベット役のノオミ・ラパスはメイクで本当に化ける人だった。
ちょっと長かった。
ところで、スウェーデンだが、夏のスウェーデンはさわやかで気持ちが良い。決してそれほど恐ろしいところではない。どんなところであれ、大声で日本語を喋るのはどうかと思うが。(日本でも大声で英語を喋っていたら嫌がるでしょう?)
ミレニアム2 火と戯れる女
背中にドラゴンのタトゥーを入れた女性ハッカー、リスベットにたたきのめされた後見人ビュルマンは、復讐を誓っていた。ビュルマンはリスベットの過去を徹底的に洗い、彼女を心の底から憎む人物を探し出した。彼はその人物と連絡を取り、リスベットを拉致する計画が動きはじめる。その頃、月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルらは、重大な決断をしていた。ジャーナリストのダグとその恋人ミアが進める人身売買と強制売春の調査をもとに、特集号を刊行し、書籍を出版することを決定したのだった。
Flickan som lekte med elden 2009年
感想
胸のすくような思いをしたならば、それは罠だ。次の穴が待ち構えている。
誰しもリスベットのような能力を持っているわけでもないし、ミカエルが助けてくれるわけではない。
今回のテーマは人身売買と児童虐待だ。
リスベットは非情だ。そのミリアム・ウーはリスベットと一時期軽い恋愛関係にあったような相手だ。リスベットは何らかの危険が及ぶことを知っていたのだ。それなのに、リスベットは部屋を借りてミリアムを住まわせるのだ。身代わりとして。
やっぱり、ノオミ・ラパスは化粧と髪の毛で化ける。
監督は変わったようだが、長く感じてしまう。
つっこみどころが一つあって、地中に埋められたリスベットが復活するシーンだ。「キル・ビル」ではザ・ブライドは棺桶に入れられて地中に埋められる。けれど、リスベットはそのまま埋められたのだ。窒息死するのではないか。
窓辺にすわるリスベットの背景のストックホルムは美しい。
夏に行けば、結構綺麗なところだ。(地下鉄の駅の臭いを除く)
ヨーテボリにも行った。ストックホルムがフィンランド側ならば、ヨーテボリはノルウェー側。ヨーテボリというよりも、ゴセンバーグ(ゴテンバーグ)と言った方が通じる。ここは工業都市のようなおもむきで、観光客向きではなかった。
ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士
宿敵ザラチェンコと対決したリスベットは、相手に重傷を負わせたものの、自らも傷つき、瀕死の状態に陥ってしまった。現場に駆けつけたミカエルの手配で、2人は病院に送られ、一命を取りとめる。だが、彼女を拉致した金髪の巨人は逃走してしまう。この事件は、公安警察の特別分析班の元班長グルベリに衝撃を与えた。特別分析班は、政府でも知る人の少ない秘密の組織で、ソ連のスパイだったザラチェンコの亡命を極秘裡に受け入れ、彼を匿ってきた。グルベリは班のメンバーを集め、秘密を守るための計画を立案する。その中には、リスベットの口を封じる卑劣な方策も含まれていた…
Luftslottet som sprängdes 2009
感想
監督はダニエル・アルフレッドソン。
今回はアクションが抑えめで主な舞台は公判だ。今度は法廷サスペンスの様相を示す。
スウェーデンの刑事裁判は参審制だったと思うのだが、裁判官が案外質素で普通の格好をしていたのが興味深い。
一作目はかなりすかっとする女戦士物、二作目はその女戦士が足元を救われる物語、三作目は正義の鉄槌が下される物語だ。結局は勧善懲悪だが、アジア的なカルマちっくな回りくどさはなく、悪いことをした者はされた者本人に復讐される。それがヨーロッパ的なのだろうか。きちんと司法が機能していて、決着がつく、というストーリーの社会は、やはり安定した社会なのだろう。
でも、やっぱり長く感じられた。