紅樓春上春 EROTIC DREAM OF RED CHAMBER 1978年
感想
監督はカム・シン。
栄国府は淫らな伏魔殿。ということで、「紅楼夢」を舞台にしたポルノです。んー、言って見れば源氏物語を題材にして、光源氏を主人公にしたポルノがひっちゃかめっちゃか、という風に考えてくれてもいい。みんな知ってるストーリーでポルノにしちゃったっていう、古典をレイプしている感じ。というと、多分この不快さが通じると思う。
レスリーのシーン以外は早送りである。ただ、デビュー当初からレスリー・チャンがレスリー・チャンだった、というのを確認することはできる。
どういう意図をもってこんな変なものを作ったのか監督やプロデューサーに問いつめたくなる。ほとんど脈絡もなくおっぱじまるし。気持ちの悪いおばあさん(踊る人)がでてきたけれど、男だよね?しかもこの人、中盤からかなり出てたぞ・・・レスリー出せやレスリーを!おばかちゃんにレスリーの夜を語らせるな。この変な女装のおっさんの話をカットして映像で見せろや、おい。
レスリー起用の正しさ
「だから、契約したとき僕はこういう作品だとは知らなかったんだってば・・・」とレスリーは言うのだろうけど、この役にレスリーを起用したのは正しい。レスリーが下になっているのも、レスリーってそういう感じだし。レスリーをめぐってダイユィとバオチャイが争うけれど、恨むのは女同士であって、レスリーはちっとも恨まれない、というのもそういう感じだ。
そして、どの女優よりも美しくて可愛らしい。掃き溜めに鶴とはこのことよ。本作は半分ポルノなのだが(レスリーのシーンに「ラスト、コーション」のトニー・レオンの尻を伝う汗のようなものは残念ながらなかった)「小悪魔にして清純」、「エロいけど淫蕩ではない」、という背反した存在のレスリーをわかっている。いやまあ、バオユィさんは「ほほ紅たべたぁい」人だけど、好きなのはダイユィ一人だったし、他の人とは侍女が手ほどきしただけでしょう?(ただ、レイプされた侍女が淫蕩な侍女になるというのはレイプを肯定しているようで不快だった)下品この上ないラストシーンも少年の生理反応としては健全な反応。破れた太鼓を突き出されて、レスリーがにっと笑うのも小悪魔と清純さが一緒になっていて大変によろしい。
俳優としての骨格はもう出来ていた
おっぱいぽろーんな女優さんたちよりも着衣のレスリーの方が香り立つようなセクシーさだ。後にこういう表情をすることはほとんどなかったけれど、口が半開きで頼りないのも「バオユィ」には似合う。鼻がつまっていたの?という感じ。30前後からこういうぽかんとした表情を作ることがなくなったけれど、それはそういう役だったからだろうか。でものぽかんとしたのが「バオユィ」に合っている。理解して作ったのか。そうれはなかったのか。
ああ、レスリー・・・登場で「モーモー。牛さんだよ」って女を背中に乗せるとかなんだよ。で、顔が白塗り。ライナーばっちりなのは時代劇ではいつものことか。80年代前半の黒すぎるレスリーとは違って70年代のレスリーは白すぎる。「ほお紅を食べるんだ」ってあんたねえ。レスリーのラブシーンってなんだか性急すぎるのだが、それはここからか!というより、これがデビュー作だから・・・?90年代、香港映画の、そしてレスリーの黄金時代のコメディで女の子にがっつくシーンのレスリーそのまま。80年代前半の青春ものよりもこちらのトンでもの方がよほどレスリーがレスリーしている。声もレスリー本人のように聞こえる。確かに台詞回しが稚拙、とか難点はあるけれど、レスリーははじめから「レスリー・チャン」だった。20代前半で俳優としての骨格はほぼ完成していたのだろう。あとは肉付けだけだった。俳優に成るべくして生まれた人だった。
まあ、デビュー作がトンでもなおかげで代表作になってしまわなかったのは不幸なようで、幸運だったかもしれない。デビュー作がこういうトンでもだったが、後のコメディを演じるときの片鱗はあったし、後に何があっても本作よりはましだと思えただろう。(だったらどうして??なのだが)
さてこの日本のDVDの会社は「ファインアーツエンターテイメント」って笑ってしまう。しかも本作に「レスリー追悼」として北京語版の「大英雄」のレスリー部分がかなり入っていた。・・・なんなんだ?
カルチャーセンターでかかったんだってさ
香港女子曰く、レスリーが亡くなってから(直後ということ?)カルチャーセンターで本作がかかったんだそうな。かけた人はこういう作品だとは知らなかったんじゃないかと思う、と言っていた。知っていたら本当に悪趣味きわまりない。香港女子は、「フランス映画って必ずトップレスの女優出るじゃん。でも、必ずしもポルノじゃないじゃん?」と言っていたが。確かにフランス映画もおっぱいぽろーんだけど、そっちがメインじゃないじゃん。これ、それがメインじゃん・・・やっぱりポルノである。
これもレンタル。