小さなカフェを開くことを夢見るビールガール・小敏と、閉店の憂き目に遭ったフレンチレストランのオーナーシェフ・マイケル。ひょんなことからふたりは店を共同経営することになり…。
千杯不醉 Drink Drank Drunk 2005年
感想
監督はイー・トンシン (爾冬陞)。
イー・トンシンお気に入りの俳優のダニエルは熱演型で、今回は酔っぱらった様子はちょっとくどい。ミリアムの親切で喜怒哀楽が結構激しく、30前後で「女の子」なのは典型的香港の女の子だ。こういう役をさせるとこの人は本当に輝く。ミリアムとダニエルのコンビはゴールデンカップルだ。息がぴったりと合っていて、掛け合いが見事だ。ダニエル自身は決してコメディ向きではないけれど、香港コメディの女王と言ってもいいミリアムがうまくダニエルをリードしていると思う。このコンビでは三作しかないのが本当に残念だ。他には、香港映画では女優は脱がず、俳優は脱がされるのが定番だが、ささやかだけどやっぱりダニエルは脱がされること、ゲスト出演のテレンス(尹子維)が珍しく殺されないことか。
ストーリーそのものは大したことはない。安心してみられる映画だ。それよりも香港の下町の様子が見られるのが何より楽しい。カフェレストランの前が坂になっているからおそらくロケ地はセントラルではないかと思う。あの近辺には西洋料理はかなりあるのだけど、下町まで行ってしまってはフュージョンのフレンチは流行らないと思う。ドリアンライスはやりすぎとしても、香港っ子はドリアンが結構好きで、スーパーでもパックに入ったドリアンが売られている。慣れているからあんなに臭がらないと思うんだが。カフェレストランの内装は、「私の理想のカフェよ」と主人公に言わせるのにふさわしく、上品でかわいらしい。この監督にこんなかわいい作品が撮れるのかと思うくらいだった。
2012年の中華圏の新春映画の一つがイー・トンシンがトニー・レオンを迎えたコメディの「大魔術師」だった。これにダニエルもゲストに出ている。もう一つ三月公開がミリアムがショーン・ユー(余文楽)を相手役に迎えた「春嬌與志明」。これは前作の「志明與春嬌」以上にヒットしたらしいのだが、どれも映画祭以外で日本語字幕で見られる日は来るのだろうか。