1920年代の北京。権力者の雷大牛は、愛を受け入れてくれない第七夫人の柳蔭の機嫌をとる為、著名なイリュージョニスト張賢を屋敷へと招いた。実は張賢の目的は、屋敷に幽閉された師匠とその娘の柳蔭を救い出すこと。彼女は張賢の恋人だったのだ…。軍閥転覆を狙う革命団や勢力を争う軍閥たちが入り乱れ、張賢の決死の計画は二転三転していく。アクションバトル×イリュージョン満載の痛快娯楽超大作!
2012年 原題:大魔術師
感想
原作の本もあるようだ。どこまでその原作の通りなのかはわからないのだが、微かにパール・バックの「大地」、そして「幻影師アイゼンハウム」の影が見えた。
軍閥が割拠している様子、そして軍閥が決して連携しているわけではないこと。軍閥の大牛にたくさんの夫人がいて、また文字が書けないのもまさに「大地」の最終盤そのものだ。こちらはコメディなのだが。
昔の恋人を救い出すために奇術を用い、恋人が「死んだ」ことにするのは「アイゼンハウム」。けれど、こちらは一筋縄ではいかない。
大牛はなんだかんだ良い人だし、柳蔭は簡単には張賢になびかない。自分には親切だし、おばかちゃんのふりをしている大牛にかなり情がうつっている感じ。そうよねえ。3年も放っておかれたら愛情は冷めちゃうし、しかも、張賢は自分よりも奇術の方に愛を注いでいるとくれば。「アイゼンハウム」なのね、と思っていたので、案外自立した人の柳蔭にかなり好感を持った。
柳蔭を笑わせるために大牛が何でもしようとするのは、褒姒と幽王そのままだ。「褒姒の一笑国を傾く」だ。
この柳蔭を演じたのがジョウ・シュン。
カマトト、とか、女の嫌いな女、とかぼろくそに言ってきた女優なのだが、「画皮」から見直している。低音の声の北京語は聞いていて心地よい。張賢と大牛のどちらも手玉にとろうともしないヒロインを好演。
軍閥の中に「フック船長」になっている人がいるのだが、ツイ・ハークじゃないか。ダニエル・ウーはあっさり(ただし嬉々として)消え、アレックス・フォンはもう少し絡むのかと思えばほとんど絡まない。
ラム・シューと「妹」はどう見ても親子。というよりも、恋人としてトニー・レオンがおじさんを通り越して「おじいさん」にしか見えない。もちろん、ラウ・チンワンも。ジョウ・シュンも若さよりは年齢を重ねた貫禄に見えてくる。三人ともミスキャストではあるけれど、そこは春節映画。みんなスターが見たいわけよ。ある意味ハイコンテキストと言える。
そして、中国の女の子は武術の達人、日本の女の子には椅子に卓子(つくえ)までいてみんなくノ一と。
正当な香港コメディなのだが、DVDには北京語バージョンしかないのが残念。ジョウ・シュンは地声だが、ラウ・チンワンもトニー・レオンも吹き替えだと思う。サウンドトラックを一つ増やして広東語バージョンがあっても良かったと思うのに。
で、エンディングソングはジョウ・シュンとトニー・レオンが歌っているようだが、どうして音がそんなにひどいの??わざと??