清朝末期の香港。そこに、一人の男が来航するという極秘情報が流れる。彼の名は、“孫文”。腐敗した王朝打倒を掲げる革命家である彼の目的は、武装蜂起のための同志との密談。そして、西太后が仕向ける500人の暗殺団に対して、孫文を護衛する義士団が結成される。集ったメンバーは、暗殺団のスパイとして働く警官、愛する人との結婚を誓った車夫、過去の罪に囚われ物乞いとなった元御曹司、父の復讐を誓った少女ら、市井の民たち―。ある者は愛する人のために、ある者は己の信念のために、それぞれの熱い想いを胸に秘め、10億人の希望と、国の未来がかかった“壮絶なる1時間”の戦いに挑む。
原題:十月圍城 Bodyguards and Assassins 2009年
感想
テディ・チャン、アクション作品が多いけれど、本作はアクション映画と見るべきではなかろう。
前半のアクションは劇場までない。それよりも、人間模様の方が重視されている。本作の優れたところは、孫文替え玉作戦の義士団の多くが決して孫文のため、中国のため、といった目的のない人々だったことだろう。大義のために命をかける人々を描くとまさにプロパガンダになってしまう。けれど、個人的な「何か」のために命をかける人々の姿にはプロパガンダ臭が減る。
チェンの影武者発案のところは若者にさせるのではなく、自分が影武者になれよ、はん?と思ったのは秘密でも何でもない。まあ、みんな「義士団」メンバーには死亡フラグが立っているので仕方がないのだが。
豪華キャストなのだが、香港が舞台なのに、広東語ではないのが残念。
見所はやはり、再現された香港島だろう。
間の抜けたアスーのぼっちゃまへの忠義は良かった。
レオン・ライの階段のアクションシーンで、暗殺者集団で一番始めに睨みあうのが「目つきの劇悪なジェイ・チョウ」、フィリップ・ンだったか。このシーンでレオン・ライに倒される最後のメンバーの一人でもあったな。ところで、影武者一行はここでどこかに逃げ道を作って逃げろよ?と思うのだが。実際には地下道があったようだが、さっさと行けよ。レオン・ライ、死に損じゃん。
ドニー・イェンのラストは珍しく、ドニーさんの顔がぼっこぼこに腫れ上がっている。しかも、馬にぶつかってはねとばされて死ぬ、という、非常に珍しいものであった。
ニコラス・ツェーは「自分よりも強い者」に必死でしがみついて死んでいく、という、まあ、この人によくありがちな死に方であった。
車が石畳の階段を落ちていくシーンはどこかの映画にあったシーンだなあと思う。
さて、フー・ジュン。ラストの孫文と思い込んだ車を襲うシーンはまるでキョンシーであった。怖いねえ。本作の問題はここにある。暗殺者側が悪になってしまっているのだ。この人の役は、チェンに教わり、それでもなお、清に忠誠を尽くす役のはずなのに、説得力がなくなってしまう。
さて、ぼっちゃまを演じる王柏傑だが、芋っぽいエディソン・チャンというところだ。1989年生まれとまだ若いようだ。中華系の俳優はショーン・ユー、ヴィック・チョウにイーサン・ルアンといった1980年代前半生まれ(はや30歳前後)、マーク・チャオの下がいない、いない、と言ってきた。この子には少し期待ができるだろうか。「九月に降る風」にも出演していたようだが、気づかなかった。