王妃の紋章

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唐王朝滅亡後の時代。栄華の頂点には“黄金の一族”が君臨し、王家の繁栄は永遠かと思われた。しかし、宮廷内部では悪意に満ちた策謀が渦巻いていた。国王は病弱な王妃のために“特別な薬”を調合して与え続けるが、それは実は毒薬であった。王妃は事実を知りながらも逆らえず毎日飲み続ける。一方、皇太子は継母である王妃との不義の関係を解消できずに苦悩していた。第二王子は衰弱した母の様子に異変を感じ取り、さらに唯一汚れを知らず無邪気な存在と思われた第三王子の心にも深い闇が広がり始め…。

原題:滿城盡帶黃金甲 2006年

感想

何度見たってひどい。あの「HERO」の監督かいな?と思うけど、チャン・イーモウ(張芸謀)なんだよなあ。

エンドロールで流れる「菊花台」全てはこれのためです。映画館で見たけどジェイ・チョウの歌声でびっくりしたんだもの。

みんな何かを企み、それに「出生の秘密」(好きだよねえ、出生の秘密ネタ)が絡んで凝りに凝ったストーリーなのだが、演出が下手なのか、目にちらちらする色のせいなのか、退屈だ。梅林茂の音楽は悪くはないし、それぞれの演技は下手ではない、どころかうまいんですけれどもねえ。

キャスト

このチョウ・ユンファは怖い。規律、規律とうるさく抑圧的。全てはこの人の愚かさなのだが。
コン・リーは妙にテカった(くせに縦じわだらけの)口紅と真横一文字の眉毛で不気味。全てはこの人の浅はかさなのだが。

演技で見るべきはリウ・イエの目だ。DVDで見ると大したことはないのだが、映画館で見ると驚愕の表情を浮かべてみたり、医官の妻を捕まえるシーンや愛人の元へ走ってからのやくざっぽい表情であったり、王妃と服を取り合うところや、自殺未遂をするところや倒れそうな様子で体を斜めにするところなどなかなかコミカルですらある。

さて、第二王子のジェイ・チョウ。見せ場は最後までこの人のシーンにある。まぎれもないジェイの声だと思うのだが、大陸向けの映画だからか、発音がいつも(例えば「言えない秘密」)とは全然違うことに気づいた。私の耳に台北なまりは巻かない。北京なまりは巻く。空気の音が入るのも北京だ。英語で例えれば、アメリカ英語が北京なまりで、イギリス英語が台北なまりのように。英語圏の演技ではこのアクセントが重要になるのだが、中華映画ではそこまで気を配る映画はそれほどない。滑舌の悪いジェイは頑張ったんだね。

たまに歩き方などが時代劇っぽくなくて「地」なのだが、ラストの怒りの表現はとても上手かった。いや、マザコン君に「自分の手で母に毒を飲ませろ」と言えば、地で怒るか。

王妃は一心不乱に菊の刺繍をし、第二王子はそれを印に謀反を起こす。しかも、太子は菊の刺繍を知って謀反を察するのだが、「菊」にどんな意味があるのだろうか。日本では「紫式部日記」に菊の花に綿をかぶせて、というのがあるが、この時期こそが本作の舞台である重陽の節句だ。菊は皇室の紋でもあり、同時に葬式用の花だ。こうしてみると、なかなか不思議な花だ。おそらく、中華世界では共通のイメージがあるのだろうが、私にはわからない。蝶が死者の魂を象徴するように、菊にもなにかイメージがあるのだろう。

いずれにせよ、壮大な家族のけんかなのだが、こんなことをしていては国は滅ぶだろう。けんかに巻き込まれておなくなりあそばした方々が浮かばれない。(フィクションだが)合掌。

菊花台

実は、ジェイに落ちたのはここからだった。目にちかちかするし、後味の悪い物語でぎょえ、と思ったのだが、エンディングが流れ始めて驚いた。今までの悲惨な物語を中和するような、きれいな声が流れてくる。中国語ってこんなにきれいだったっけ?歌詞の訳も日本語で流れるではないか。なんと悲しい歌詞だ。誰だよ、誰がこれを歌ってるんだ?とエンドロールで流れて来るのを待つのだが。周杰倫。ジェイ・チョウかよ!

この「菊花台」という曲は「依然范特西(Still Fantasy)」というアルバムにあります。ジェイのアルバムの中では最も演歌っぽいアルバムで、異色です。

Still Fantasy

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黄金甲

戦闘シーンに使って欲しかったんじゃないかと思われる「黄金甲」という曲はEPで。DVDが付いてきますが、日本版でなくても台湾版香港版でもともにオールリージョンではないかと。私のものは香港版です。相性の悪い機種もありそうですが、見られます。DVDの収録内容は「依然范特西(Still Fantasy)」の全10曲と「黄金甲」のPVです。ちなみにCDに「菊花台」の原曲はなく、「黄金甲」と、ジェイの弾くピアノインスツルメントの「菊花台」だけです。

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電波な深読み

さて、見るのは二度目(三度目くらいか?)だが、印象が電波な妄想で変わってしまったのでそれに付いては下で。本当に電波な妄想ですからね?いいですか?

一番始めに映画館で見たときに感じたのは、紫禁城ロケだし、日本公開時が2008年なので「北京オリンピックね」だった。けれど、今回は感じるのはまた別だ。三点ある。

まず始めはキャスティングだ。主な見せ場はジェイの場面に作ってある。第二王子は観客が一番共感しやすいキャラクターでもある。だが、このキャラクターとキャスティングはいくらでも妄想できる。

当初の王との戦闘シーンも銀色の鎧のジェイと金色の鎧のチョウ・ユンファとの戦いなのだが、ジェイの鎧には金色が少し使われている。王の後継者が第二王子であることを示す。兄太子はその位を弟に譲ろうとしていた。それなのに、母のためだけに第二王子は謀反を起こし、王に倒される。そんな役に、台湾のジェイ・チョウを持ってきたことに政治的な意図はないだろうか。すなわち、中国の正統な子であり台湾が、中国の与える物以上を得ようとして中国に逆らい、倒されるのだ。それも単に倒されるだけではなく、自死を選ばねばならなくなるほどにまで追いつめられた末に。

2006年当時、台湾は民進党の陳水扁政権だった。政治は白黒と割り切れるものではないが、民進党は独立派に近かった。しかし結局、2006年初頭に経済政策を転換させ、中国との経済的な結びつきを深めることになる。本作の公開は2006年の12月だ。キャスティングはいつ決まったのだろうか。2005年中だろうか。ただ、これはただの電波であって、チョウ・ユンファは香港の人なのだ。(いや、中国に返還されてるからなあ、香港は)

けれど、制作側の隠されたメッセージは別のところにあるのではないだろうか。

第二王子の謀反は失敗に終わり、血塗られた広場は「何もなかったかのように」再び美しく花で飾られる。引き立てられた第二王子は父に語るのだ。「勝てる見込みのない戦いだと知っていました」「これは母后のための戦いだったのです」「母上、非力な息子をお許しください」そうして第二王子は自決する。強大な父たる中国に対して、民主主義や人権のために、勝てる見込みのない戦いを挑み、破れていく人たちのように。そして、父たる中国は「なかったか」のように振る舞うのだ。演じるのは、舌禍でバッシングされることも少なくないジェイ・チョウ。

そして、最後。王妃は第二王子の血が飛んで入った毒薬をぶちまけ、それは美しく盛られた台の真ん中に落ちて、金メッキを剥がすのだ。いずれ、全ては露見する。隠し通せるものではない。

ま、全ては私の妄想。そして、これだけつらつら書きながら結論は一つ。
本作は映画としてはやっぱりひどい出来だ。そのくせ、私の人生を変えた。

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