コップ・アウト 〜刑事した奴ら〜

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ニューヨーク市警コンビが、ギャングとの対決や殺人事件に巻き込まれながら捜査を繰り広げる。
愛娘の結婚式を間近に控えたニューヨーク市警のベテラン刑事ジム・モンロー。
その結婚式費用の捻出にあくせくしていた彼は、仕方なく超レア物のベースボール・カードを売り、それを費用へ充てることに。
ところが、その換金前にカードを強奪される事態が発生。
一方、ジムの相棒ポール・ホッジスは何の確証もない妻の浮気疑惑に当惑し、仕事に身が入らない状態が続いていた。
そんな中カード強奪犯を追うジムとポール。
やがて、カードの在りかを突き止めるものの、それを手にしていたのがギャングのボスだったことから、
ジムとポールは警察としての職務を逸脱せざるをえない状況に追い込まれてしまう…。

Cop Out 2010年

感想

監督はケヴィン・スミス。

タランティーノの面白さは脱線するようで脱線しない会話だとすると、ケヴィン・スミスの面白さは脱線するところだ。しかし、今回は不発。やはり、ジェイとサイレントボブなしにはこの人の面白さは出てこない。そりゃ、ところどころくすくす笑えるシーンはある。デイブのシーンは半分は笑えるし、腕利きの車泥棒はなんと7歳。こういうところは笑えるのだが、なんだかねえ。

まず、リズムが悪く、編集が甘い。編集が甘いのは昔からだから仕方がない。この人にそういうセンスはないのだから。

さらに、「ブルース・ウィリス」「刑事」「ニューヨーク」とくれば、もちろん、「ダイ・ハード」。NYPDの刑事がロスで、ワシントンで、そしてニューヨークで活躍するのだった。(あれ?4以降は?見ているのだが忘れたな)今回も、妻に去られた男で徹底的についていない。けれど、その「ブルース・ウィリス」は演技派ではない。だから、「ジョン・マクレーン」の殻が破れない。

加えて「黒人」の相棒の使い方のスティグマ。
エディ・マーフィの「ビバリー・ヒルズ・コップ」、ジャッキー・チェンとクリス・タッカーの「ラッシュアワー」、メル・ギブソンとダニー・グローヴァーの「リーサル・ウェポン」と黒人刑事が出てくるものでヒットしたものはいくつかある。しかし、どれもこれもうるさい。べらべらべらべらといらないことを喋り続け、少し間が抜けている。まさにアフリカ系俳優に与えたスティグマではないか。運動神経が悪く、リズム感がなく、寡黙なアフリカ系だっているだろうに。「ジェイ&サイレントボブ 帝国への逆襲」でのクリス・ロックの使い方を見ても、ケヴィン・スミスは各出自のスティグマをそのまま使った役の振り方しかできないのか?と思ってしまう。つまり、良い意味でそのスティグマを使うことができれば良いのだが、差別的な定石以外使えないのではないか、ということだ。

最後にアクションの不快さ。
ブルース・ウィリス作品だけあって、アクションもないわけではない。ただ、それが拷問という形をとるから非常に不快。見ていて、どうしてアメリカ映画はこうつまらなくなってしまったのだろうか、と思うほどだ。香港映画の暴力シーンは凄絶だ。特にドニー・イェンの洗練されなさはひどい。しかし、ジャッキー・チェンのコミカルさ、ジェット・リーの技巧を抜きにしても、ドニー・イェンやニコラス・ツェーの拳はあてられたものの痛みだけではなく、あてる方の痛みも表現する。監督であれば、ジョニー・トーのお耽美、ダン・ラムの火器にしたって使わざる得ないもののつらさも表現できる。編集の鈍くささ、絵のチープさ、ストーリーの失笑ぶりは仕方が無いにせよ、香港映画のアクションには人の体温が感じられるのだ。

アメリカ映画にそれがないとは言わない。まさに、ブルース・ウィリスの「ダイ・ハード」がそうだ。敵もただの悪人ではない。特に3であれば、1で殺された弟の復讐をせねばならない兄であった。そして有名な1の裸足でガラスの上を走るシーンの痛み。

少なくとも、本作にはない。

コップ・アウト(字幕版)

コップ・アウト(字幕版)

ブルース・ウィリス, トレイシー・モーガン, アダム・ブロディ, ショーン・ウィリアム・スコット
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