クラウド・アトラス

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舞台は、19世紀から24世紀。過去・現在・未来にまたがる500年の間、6つの時代と場所で、6つの人生を生きる男がいた。始まりは悪人だが、様々な数奇な経験を経て、やがて世界を救う偉大な人物へと魂が成長していく…。それぞれのエピソードが、一見アトランダムな流れに見えて、実は後に一つに繋がる圧倒的なストーリー。

2012年 Cloud Atlas

感想

  1. アダム・ユーイングの恐怖の航海
  2. ロバート・フロビシャーの「クラウド・アトラス六重奏」
  3. ルイサ・レイの命がけのジャーナリスト根性
  4. カベンディッシュ氏の大脱走
  5. クローンのソンミの最後の告白
  6. 世界崩壊後の世界に生きるザックリー

の6つの話。

連作にするのではなく、グランドホテル形式にして、しかも、つながりのあるところはほぼつなげているから、ストーリーが終えなくなるということもないだろう。演出は練られているし、3時間の長編だが飽きることはない。どこに誰がいるの?と特にほぼ全ての話に脇役でちょいちょい出てくるヒュー・グラント、トム・ハンクスを追いかければそれはそれで楽しい楽しみ方だ。演技達者をそろえているから、一人だけ下手でぶちこわすこともない。

しかし、なんとも言いがたい。

輪廻とか、業とか。前世で背負ったものを今世でも。愛した人・関係を持った人とは再び巡り会い(ジム・スタージェスとペ・ドゥナ、トム・ハンクスとハル・ベリー、ベン・ウィショーとハル・ベリー、ベン・ウィショーとジム・ブロードベント)、ある人は告発し、また告白を受ける。三島由紀夫の遺作、「豊穣の海」シリーズは一人の人の生涯で、何度も生まれ変わるある人と出会う物語だ。本作はそのスパンが長いが、輪廻を描いたところは同じ。「豊穣の海」が老いへの恐怖のせいか、最終的にバッドエンドになるのに対し、本作はいわばハッピーエンドなのだが、どうも後味が悪い。

キリスト教文化にどっぷりつかった人が書けば「なんてファンタジック」になるのかもしれないが。輪廻という仏教思想が側にある人から見れば、で?である。

「航海」はそれなりに。海が綺麗だった。

「クラウド・アトラス六重奏」はベン・ウィショーに尽きる。シックススミスとの情事の楽しそうなこと。幸せいっぱい。そしてビビアンに弄ばれてからのキッとした目。屈辱と怒りに燃えた目だが、この人をいたぶったこういう目をさせたいという人は少なくなさそうだ。ただし、その後反撃されてどうなるかわかんないぜ。

「ジャーナリスト」はそれなりに。アクションはアクションでいいじゃない。レコード店でベン・ウィショーとハル・ベリーが聞きほれているのだが、フロビシャーにとっては不倫は機械的な奉仕にすぎなかったのだろうけど、ハル・ベリーにとっては救済のようなものだったのかもしれない。

「大脱走」は笑った。ここでジム・ブロードベントが関係を持った相手はベン・ウィショー。同性愛ではなく、兄嫁を寝取ったのだった。つまり、ベン・ウィショーは女装して女を演じている。ちらっとしか映らないのだが、妖艶というよりは、あまりよろしくない。

「ソンミ」は「マトリックス」まんま。悪くはないのだが。ベストはビッチのユナを演じたジョウ・シュンか。ペ・ドゥナは流されて流されて、という感じ。無機質なファニー・フェイスが「クローン」の不気味さを引き立てる。ただ、一番引っかかったのがここでもあった。舞台が「ネオ・ソウル」。それは原作通りなのだろう。しかし、部屋の調度、そして忍者の衣装など、どうみても「イーオン・フラックス」と同じような「ネオ・ジャパネスク」。それは「マトリックス」を見てもわかるように、ウォシャウスキー姉弟が日本好みだから仕方がない。嫌だったのは特殊メイクで目を細くしているところだった。ジム・スタージェス、ヒュー・グラント、ジェームズ・ダーシーにキース・デヴィッドが目を細くする特殊メイクをしているのだが、これが不気味。もちろん、その他のエピソードでも、ハル・ベリー、ペ・ドゥナ、ジョウ・シュンが白人を演じ、皮膚を白くしたりそばかすを多めにしてつけ鼻をして、白人に似せている(が化けられないので気持ちが悪い)。あー、アジア人ってこう見えるのね、と思ったのだが、気持ちが悪かった。
「世界崩壊後」も悪くはないが、というところ。ヒュー・グラントが出てきたときに笑ってしまった。

まず出ずっぱりだったトム・ハンクス。久々に見たのだが、本作ではどこでも「キャスト・アウェイ」なのは残念。今回一番は作家のダーモットだろうか。突き落とすとはね。

全話に出ていたのはヒューゴ・ウィービング。名前でわからなかったら、「マトリックス」のエージェント・スミス。今回もやってることは全部エージェント・スミスではないか。(そういえば、「マトリックス・リローデッド」を見に行ったら、お姉さんが「エージェント・スミスさま♡」とやっていたのを思い出す。どうしておられるだろうか。)

どこかにちょこちょこ出ていたのがヒュー・グラント。最近「ヒューさま」とか「おヒュー」というとヒュー・ジャックマンだが、私はこっちのヒューの方が好きだ。

クラウド アトラス

クラウド アトラス

トム・ハンクス, ハル・ベリー, キ―ス・デイヴィッド, ジェームズ・ダーシー, ジョウ・シュン, デイビッド・ギャスィ, スーザン・サランドン, ヒュー・グラント, ジム・ブロードベント, ヒューゴ・ウィービング, ジム・スタージェス, ぺ・ドゥナ, ベン・ウィショー
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