エンジェル

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20世紀初頭のイギリス。エンジェル・デヴェレルは、幼いころから上流階級の生活に強烈な憧れを抱き、お屋敷〈パラダイス〉に住むことを夢見ている少女。その憧れを稀有な想像力と文才で小説として書き綴り、16歳にして作家デビューを果たし、思い描いていた人生を手に入れる。

Angel 2007年

感想

監督はフランソワ・オゾン。

ところで「女として生きることの醍醐味をフルコースで味わえる、女性映画の金字塔世界中の映画ファンを魅了する若き巨匠フランソワ・オゾン」というのは間違ってると思うねえ。そんなヤワな監督ではない。とはいえ、微妙な作品ではあったが。

面白いと言えば面白い。絢爛豪華な衣装、ということだが、ラストのエンジェルとアンジェリカの服装の対比、メイクの対比が面白かった。

対比といえばいくつか出てくる。
まずはエンジェルとアンジェリカ。同じ名前で全く違う人生を歩んだ二人だ。エンジェルとノラも対比される。どちらも三流の文芸家だが、エンジェルは傲慢さゆえにもてはやされ、ノラは自分を押し出すことすらできない。ノラとエスメの姉弟も不美女で目立たないノラと、魅力にあふれたエスメの対比になっている。エンジェルの一方通行の愛とエスメの一方通行の愛。どちらも才能はないのに、生前に評価されて死後忘れられるエンジェルと、生前は無視されても死後評価が上がっていくエスメ。

対比で話が進んでいくのが紋切り型であまりオゾンっぽくない。オゾンらしい破滅はエスメの死と裏切りだろうけれど、これも予想されるしいつもの破滅と破壊ほどのパワーはない。フランス語映画でオリジナルの方がオゾンは生きると思う。

エンジェルは痛い人だ。句読点一つ変えようとしない傲慢女だ。おまけに妄想が激しい。母が死ねば「母はピアニストでした」と言い、エスメが自殺すれば「夫は心臓発作でした」という始末。愛していても愛されていないエスメとの生活も「深い愛情で結ばれていた」ことになる。これは嘘つきなのではなく、妄想なのだ。貴族の娘であるかのように振る舞おうとするが、顔をしかめられるほど粗野だ。ばったんばったんと大きな足音を立てて歩く様子はとても下品だ。そんな痛い女を、痛いが故に世間はもてはやし、痛いが故に忘れていく。そばにいるノラの心痛はいかほどか。けれど、エンジェル本人は現実の世界ではなく、妄想の世界に生きているのだから痛くも痒くもないのだ。

エンジェル役のロモーラ・ガライはいわゆるアングロ・サクソン美人ではない。むしろ、マリオン・コティヤールのようなファニーフェイスの魅力だ。髪を黒くしているせいもあるけれど。その演技は終盤にかけて、エンジェルの死に向けていよいよ熱を帯びてくる。大仰でやりすぎなくらいなのだが、エンジェルその人が「エンジェル」という役を演じているような人なのでちょうど良い。

エンジェル (字幕版)

エンジェル (字幕版)

ロモーラ・ガライ, シャーロット・ランプリング, サム・ニール, ルーシー・ラッセル
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