霍小弟は、男児が襲われるのに出くわすのだが、居合わせた詹日飞と名乗る男と共に男児を救出した、のだが、失敗に終わる。詹日飞が義の人と信じた霍小弟は、重傷の詹日飞を連れて一路都を目指す。その途中で、詹日飞が南侠こと展昭本人だと知った。展昭の救出を手伝ってくれた展昭の「友人」に展昭を預け……
から始まります。展昭?で気づくべきでしたね。Based on「三侠五義」です。「三侠五義」は清に成立した、北宋の仁宗年間を舞台にしたお話。さて、久しぶりの本格武侠ということで。
展昭も、霍玲珑も、白玉堂も偽名を使って登場。それだけでなく、丁月华以下、出てくる人たちの多くが2つの名前を持ってる。何にもなかったのって、小唐・小赵?
ざっくり分けると、8集までが展昭に預けられたブツについて、18集までが地下売春組織について、27集めるまでが15年前に起きた(先代の)霍玲珑殺人事件について。その後、10年前の展昭に起きた事件からの、襄阳王。
さすが正午陽光というか。光の使い方もカメラワークも見事。楊洋の身体能力を存分に堪能できるというか。ようやくぴったりの作品に出会えた感じですね。笑顔もキモくない。実に爽やかな青年ではないですか。(なんか誰かの何かに似てるんだよな……と思って、思い出した。ブランドイベントのときの胡歌だ。その場でファンが撮ったっぽい素人くさい動画でも、実に爽やかな人ですよ、あの人)
霍玲珑は子どもの頃から邵继祖に勝ったことがないと言っていたけれど、10年前、十六歳で邵继祖・霍风・唐天浩が家に戻された、という設定で幼馴染枠なのもなんか変な気がする。さらにこの中に小赵こと恵王までいるわけでしょ?
それは良いけれど白玉堂が初登場のところで霍玲珑に「そいつ(邵继祖)に勝てるよ。勝てると信じてごらん?」と言った通り、最後の方ではちゃんと逃走できてるところは綺麗な伏線回収になってた。「展昭と一緒にいて何も教わってないのかよ?」「これは展昭に習った!こっちは白玉堂!」のところとか。霍玲珑のシーンの一番最後も。
章若楠のアクションも、多分スタントだな、というところはいくつか散見されたけど、それは仕方がないかな。そしてこの手の顔は最近の流行りでしょうか。ちょっと気の毒なのは薄味の田曦薇に見えること。あっちは「遂玉」だからなあ。あっちがコミカルだったからなあ。こっちの方がなんか玄人好みっぽい感じがあってだなあ。
ただし、どうも本国での評価はそこまで良くないっぽいんだよなあ。いやあ、すごいんだが、あのアクション。ただし楊洋のアクション以外が「平坦」みたいに表されてて、それはわからんではない。あと、台詞回しがひどいというのは、展昭のキャラが、誠実だが、感情におおきな抑揚がないタイプの人なので仕方がないのではないかなあ。
と思ってたけど、最後の2話はすごくよかった。ボッロボロになってる楊洋、すごい色気だったよ。いやぁ、まさかの楊洋からあんな色気が出るとは思わなかった。
しかし、感情を爆発させる相手が明柱儿……
結局ヒロイン……誰なのだ?邵继祖が嫉妬する通り、霍玲珑は明らかに展昭が好きなのだが。展昭も素直な人なので「ええ。好きですよ?」みたいな。自分の感情よりも優先しなければならない使命のある人なので。霍姑娘って呼んでたけど、後半では玲珑呼びしてるし「その中では霍玲珑が好きですが?」くらいなんですかね。
最後に霍玲珑はヒロインではなかった?になったのだけど。私にしては意外に白玉堂がヒロインとも、展昭がヒロインとも思わなかったんですが。この展昭、ひょっとして剣のために切ってる人だったりする?
楊洋の展昭が感情をわかりやすく表現するタイプではない代わりに、方逸倫の白玉堂は感情表現豊かなキャラなんですね。いろいろ忙しいキャラ。しかしながら、似たようなキャラを既にやってるんですよ。一念関山で。白孔雀ってあだ名されるように白い衣装だったわけで。白玉堂か于十三か、パッと見て区別がつく自信がない。木の上からの登場も于十三もやりそうじゃん。ということなので、演技もアクションも上手い「白玉堂」ですよ。なのでこれは俳優さんにとっても、作品にとっても正しいキャスティングであると同時に、間違ったキャスティングなんだなあと思う。
と思ったら章若楠の衣装が一部一念関山の劉詩詩の衣装そっくりだと話題だったんですってよ。衣装の担当が同じだったようで。みんな一念関山を思い出してしまうみたい。
もう一人、邵继祖を演じた張銘恩ですかね。霍玲珑に振られた〜展昭に婚約者を取られた〜なところがすごくかわいかった。
個人的には、とんでもなくなんでもありな仙侠よりも楽しく見てるのだけど。元々の登場人物の中に「霍玲珑」を入れてこの霍玲珑が結婚を拒否して逃走しているのがキーになるので、メアリー・スー化してしまうのがいけないのかな。
さて、革命型勧善懲悪だった「らんやーばん」を出した正午陽光。今回は、皇帝は仁宗。仁宗に対する襄阳王の反乱を鎮圧します、というタイプなので、どちらかというと反乱鎮圧型勧善懲悪の「らんやーばん2」。(そういや、「らんやーばん3」はもう撮影が終わってるよね?あれどうなってるの?)
だけど、襄阳王は「あいつが皇叔を殺せるものか!わしは太祖の孫だぞ!」「太祖嫡脉,理应得此江山,若无金匮之盟,帝位本该属于我!」と言ってたわけです。それに対すしては「己效忠的从来不是某姓之人,而是天下百姓与公道」
これ、based on「三侠五義」だからそうなるのかもしれないけど、ちょっとわかりにくいか。統一王朝の宋(北宋)の初代は趙匡胤。この人が太祖。その前、北周は五代十国随一の名君の柴栄だったけれど、早死にして幼帝が立つ。幼帝に不安を持った軍人たちは、趙匡胤を即位させてしまう。金匱の盟というのは、趙匡胤の母親が臨終に際して「お前が即位できたのは柴栄が早死にして幼児が即位したからだ。お前は幼児ではなく弟に譲れ」と言ったこと。二代目の太宗は弟なのよ。
趙匡胤の死に関しては、病死なのか、暗殺なのかと言われるのだが。皇子がいたのに皇弟が即位し、北宋はずーっとこの弟の一族です。南宋に移った初代の高宗はこの弟の一族だけど、その後は趙匡胤の子孫が皇帝です。
さて、襄阳王にあたる人物は史実にはおらず、恵王にあたる人物も史実にはいない。恵王にあたる人物がいるとすると、仁宗の次の英宗ですかね。仁宗は実子ができなかったので従兄の子を迎えて即位させた。
で、宋は軍人の趙匡胤が作った国だけど、趙匡胤は科挙を復活させ(しかも3段階目の殿試を始めて、科挙制度はここにほぼ完成)、官僚による統治、軍はシビリアンコントロールを行うんですよ。その結果、宋の軍は弱いイメージがあるのだけどそれでも北宋・南宋合わせて300年なので、舐めてはいけない。
北宋に南宋ほどの儒教のイメージはないのだが、科挙の完成ということで、儒教が結構強いんでしょう。そして「三侠五義」は清に作られた、ということで、物語の中は儒教の長幼の序が強いんでしょう、ということで。
襄阳王は架空の存在だけど、趙匡胤の孫設定。仁宗は趙匡胤の弟のひ孫だから、年齢だけでなくて世代が一つ下。だから皇叔。「もしも金匱の盟がなかったら俺が即位してたんだぞ?だからお前は俺に忠誠を誓ったはずだ」と言ってたわけです。
それに対して、展昭は「私が忠誠を誓うのは天下の民と公道」と答えてたわけ。と言っても夜叉として私刑をしていた時代を大変反省している。夜叉の名前を借りてやりたい放題の連中が出てくるから。ただ最後は儒教的規範よりも上に「天下の民と公道」を置いているので、うーむ。儒教的規範に縛られた仁宗にはできない判断を皇帝に代わって、「天下の民と公道」を用いて判断しているのだが、それは越権行為も甚だしい。
「この剣がお師匠さまに変わってお仕置きよ」とはいかないわけです。江湖の、剣に生きる連中の話ではなく。展昭は官吏として襄阳王の謀反に関する捜査をしていたでしょう。
……私刑を肯定してません?え?今の中国的に「天下の民と公道」なるもので、官吏がより上の地位にいる人を私刑する話に……よく検閲が通ったよな。最終話でほんと感心してしまった。びっくりだよ。さすが共産主義革命とは、暴力革命を肯定するからな。中国においては、日中戦争後の国共内乱によって中華人民共和国が成立。
