各社そろそろ夏休み用の作品を出してくる頃ですかね。
愛芸奇はまず本作、临江仙で勝負でしょうか。
Feudという英題で、feudalism(封建制度)??と思ったら、語源はそこにあり。中世ヨーロッパの貴族の対立を語源とする、長期間の対立、確執という意味らしい。あの人たち、三十年とか百年の単位で殺し合うからさ…ああ確かに、一千年万年単位で話を進む仙侠のコップの中の嵐には相応しいタイトルかも。
本作は三生三世みたいな何度も巡り合う話ではあるんだけど、あれは時系列に並べた。この前見てた「落花时节又逢君」は二人の一番初めの縁がどこにあったのかは最後の方に語られたけれど、本作は片方が神仙の世界から人間界に落ちて、もう片方がようやく見つけたところから始まる。
また、コップの中の嵐でしょってことになりそうだけど、テンポよく進む。ただし、これ、どっちも血まみれなので要注意。
面白くないわけではないし、特に花如月が白九思を何度も騙すのが面白かったけれど、最終的には「そうなるでしょうね」という予定調和。結局、また「語らない男、察しない女」のすれ違いだったのよね。コップの中の嵐。
お話は。
玉梵山净云宗の李青月は才能は平凡で、数多い弟子の中でもランクは低め。天賦の才能に恵まれながらも怪我をしてしまった師兄の张酸と二人、この三年間は山門を守る。李青月は妖女が襲ってきたときに怪我をしてしまったが、医学に優れる師姐は治療してくれず、薬草を教えてくれただけだった。李青月は山に登って薬草を採ろうとしたが、崖から落下…したところを、美男子に救われた。その美男子白九思を押し倒す形になってしまい、聘礼(婚約の時の贈り物)として持っているもの全てを白九思に渡した。净云宗の自室に白九思を隠すのだが、大師兄の蒙楚が妖女と通じてしまった大問題があるので、外に出すわけにも行かない。白九思が小秋果なら食べると言うので食べさせようと採りに行くのだが、大師兄を脱獄させようとした師姐に巻き込まれる。李青月も自室に男を隠していることがばれるのだが、「白九思」とは大成玄尊の名前だ。李青月は拷問を受けるが、白九思本人が現れる。白九思は李青月の聘礼を受け取った、結婚の日取りを好きに決めよ、ととんとん拍子に結婚が進み、李青月は白九思の住む九重天に登った…
と一種のメアリー・スー物語から始まっていくのだけど。
まあ、そこは中国。育ちの悪いシンデレラが王子さまとうまくやっていけると思う?思わないよねえ。身分が高く、美しく、なんでも持ってる男が、何もない女と?何か裏があるよねえ。
仙侠なので、前世の話があって。李青月が四灵仙尊の花如月、というのはすぐにわかる。シンデレラのその後がテーマではなく、白九思と花如月の間には何があったのか、がテーマなのかな?
「愚かな男がいて、決して愛してはいけない人を愛してしまった」by樊凌儿
白鹿は李青月を気持ちのいい人として演じるので、好感度が高い。登場の段階で「玉梵山のふもとで生まれ、八歳で孤児になって彷徨っていたところを師匠に拾われて、净云宗の弟子になった。そこで十一年修行をした」というので、おそらく十九歳前後。なので、いわゆる「少女」というよりも大人になりかけてる人。李青月は大した才能はなく、下働きのようなことを相変わらずやってるけれど、そこに不平もなく、修行もそれなりに努力して、真面目で朗らかな人。なのに師姐に引っ掛けられる運のない人。
念无双はなんでこのスパダリ女が自分を救うのかがよくわからないから、人間不信のメンヘラ男(子狐)が不気味がってたじゃないですか。李青月、逃げて。白九思は何かあるよ?とこっちがハラハラしてた。
ただ、そんなに気が弱いわけでもないので、師姐に「今のあなたなら大師兄を救えるので」と言われても「私が怪我をして助けを求めたとき、あなたは何をしました?あなたは大師兄を脱獄させようとしたとき、関係ない私を巻き込みましたよね」と断ることもできる。
そりゃ、张酸は惚れますよね。张酸は「三年間山門を守らされて気の毒に」と言われるけど、そばには李青月がいて、素直で真面目で、こうやってみて、と言われれば素直にそれに従うし。「あれほど幸せな時間はなかった」。
もったいないのが、今回は吹き替えで。結構白鹿の声質に似た人ではあるけど、本人が入れた方がいい。本人の声だと甘過ぎるからかな。
花如月のシーンは、花如月登場のシーンですらそこまで迫力がない。え?白鹿なのに?と思うのだけどなんでかな。「寧安如夢」の姜皇后のシーンはめっちゃかっこよかったのになあ。あれは皇后のシーンは断片だったから?ただ、最終話で、現在の花如月、過去の花如月、白九思に出会ったばかりの花如月が出てくるけれど、ここの演じわけがしっかりできていて、さすがだね、と。
曾舜晞は苦しそうな演技がすごく丁寧で上手いなと思った。これまで見たのは人のいいキャラクターがだったからか、表情があまりなく、結婚の話を進めていく白九思が超不気味で。すごく良い。
あと、ほっそい俳優さんが多いけど、この人結構がっちり体型みたいで、妙に安心感がある。白鹿が小柄だというのもあると思うけど。
张酸を演じた陳鑫海はデビューして数年くらいの若手で2001年生まれかよ、おう…割に抑制的な演技で、演劇を専門にする学校を出た人かなと思ったら、そうではなかったようで。これはすごい。
孟家のお父さん(画家)、息子(孟池)、ひ孫(孟长琴)を演じた趙弈欽の方がばたついてたけれど、それは孟长琴という暑苦しいキャラのせいもあるかもしれない。ちょっともったいなかった。
あと、結構損するキャラクターを演じていた何瑞賢が、樊凌儿で「私は二百年お前のために剣を修復してきたのに、顔?顔だけの女のために」と白九思を恨んでるけど、話が進むにつれ樊凌儿…花如月の味方だったwwwでもやっぱりちょっと損するキャラクターだったけど、なんか一人で色気をムンムンさせてたんですけど、これは演技では抑制できないオーラみたいなやつでしょうか。もうちょっといい役をさせてあげて。ただ、お顔立ちが、良い意味で観音菩薩的なありがたい感じがするのがいけないんでしょうかね…