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震耳欲聋

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聾=聋。耳が聞こえない人たちの話。西安旅行中に見てきた。チケットの買い方などは、こちらに書きました。https://kokontouzai.org/movies-in-china/ 

今年の国慶節映画の中ではかなり健闘した模様。それは、スターらしき人は檀健次一人、それも障害者家庭に生まれた人が主人公の映画という、かなり地味な社会派の映画としては大健闘では?

耳が聞こえなくても喋れないわけではない。声を届けよう、という話。

お話は。

両親共に耳が聞こえない中、李淇は苦労して弁護士になった。しかし、事務所は下町に作るしかない。有能だと認められつつも、「あのタワーに事務所を構えなさい。そうじゃないと依頼に行けない」と言われる始末。李淇は先輩から耳が聞こえない人の殺人未遂(殺人?)罪の刑事事件を手伝ってくれと言われるのだが、乗り気ではない。渋々手伝い始めるのだが、耳が聞こえない人たちが詐欺に巻き込まれていることに気が付く…

Based on True storyというやつで、実際にCODA (Child of Deaf Adults)の张琪という人が、李淇のモデルらしい。

张琪
张琪,九三学社社员,上海九州通和律师事务所合伙人,复旦大学法律硕士。现任上海市律师协会法律援助委员会委员、上海铁路法院调解员、上海残联助残律师志愿服务团成员、徐汇人民调解委员会调解员、静安区调解委员会驻法院人民调解工作室调解员,2024年作...

耳が聞こえない人の金融詐欺の裁判に関わってる模様ですね。

そういうところも、地味だなと思う。百度によると、この映画を撮るにあたって、監督の万力は上海や北京の耳が聞こえない人の家庭を取材していた、ということになってる。

震耳欲聋
《震耳欲聋》是由北京联瑞影业有限公司出品,万力执导,汤禹辰编剧,饶晓志监制,檀健次、兰西雅、王戈领衔主演,王砚辉、迟蓬特邀主演,潘斌龙特别主演,李菁菁、宁桓宇主演,周政杰友情出演的犯罪剧情片,于2025年10月4日在中国大陆上映。该片讲述了...

最张小蕊を演じた蘭西雅がわかりやすい演技のうまさ。今後に期待枠ですね。

迫ってくる現実味

今回の西安旅行中にはもう一本、ただただ「綺麗な絵」でリアリティのない「風林火山」を見たので、余計に本作の枝葉のリアリティにグッと来ちゃった。

実際のところどうなのかわからないのだけど。2008年の北京オリンピックの頃に中国に留学していた友達によると、障害のある人は閉じ込められていると言ってたのね。

この物語の中では、「大院」つまり、耳が聞こえない人たちは固まって住むところがあるということになってる。ある意味「障害のある人は閉じ込められている」でしょ?

李淇は耳が聞こえるけど両親が耳が聞こえないから大院で育ってる。张小晨と张小蕊の兄妹は遺伝的に二人とも耳が聞こえず、その大院で育った。李淇に张小蕊は「大院で育った」と言うけれど、李淇にはその故郷の大院こそがトラウマ。

健次はほぼノーメイクではないかと思うのだけど、やっぱり童顔で。李淇と张小晨・张小蕊兄妹との年齢差があんまりわからない。でも確かに、耳が聞こえる李淇は少年時代に耳が聞こえるゆえの疎外感を感じていて、それは大人になってもコンプレックスとして引きずってる。さらに同じところ(といっても大院というだけあって、それなりに結構な戸数がある)に住む、耳が聞こえない年下の子どもに興味がないのは、男の子ってそうだよね、と思ったり。

张小晨の事件を使って、李淇は名を挙げ、大人らしく张小蕊が奨学金を得られるように手配してやる。しかし、张小蕊は若者らしい潔癖さで「汚い金なんか欲しくない!」と二人は決裂。

そして李淇は毎晩のように弁護士仲間や顧客と飲み歩き、とうとう、「あのタワーに事務所を構えなさい」と言われたタワーに事務所を開設するまでになった。

飲み歩きたくて飲み歩いていたというよりも、飲み歩くのは営業活動なのよね…

突然「史記」を持ち出して申し訳ないけど、越王勾践が呉王夫差を倒した後の、その後の范蠡の話。范蠡はさっさと越王の手の届かぬところに逃げてしまうのだけど、豪商になっちゃうのね。そして范蠡の息子のうち、次男が死罪になるような事件を起こしてしまう。范蠡は遊び人の末っ子を使いに出して(賄賂を使って)次男を救出しようとするけど、長男が俺が行くと言い始めたので行かせた。長男はお金を惜しんでしまい、出すべきところで出さなくて次男は死ぬ。范蠡は「予想していたよ。長男は越を抜け出すところを知っていて、金のありがたさを知ってるから出し惜しんでしまうだろう。だから次男は死ぬ。末っ子は、苦労を知らないから、惜しまず金を出すだろう」という話がある。

それを思い出したの。

なんかそこの「お金に苦労した人」像にものすごくリアリティがあった、という話をしたかったのよ。

2時間ばかりできっちりと、李淇の、貧しさからくるお金の苦労とそれによるお金への執着みたいなのもちゃんと描いていて、李淇はほとんど恐怖を覚えてる。賃料、装飾も何もかも、お金が落ちていく音が聞こえるんだなあって。だからこそ、市政府か何かの人がやってきたときにも「頂き物のすごくいいお茶」を出そうとする。あれは誇示というよりも、「見て見て。僕は出世しました!褒めて!」なんだと思う。公務員の方はその態度に失望するけれど。

字を書けない人のこともリアルだった。

日本の識字率は高い。一方、聴覚障害者の識字率はどうなんだろう。読めるだけではなく、書く方も。

あるおばさんは、警察に通報しようと、警察署に駆け込むけれど、手話が通じないので黄毛が「通訳します」と言って脅して通報させない、というシーンもあった。

それで、20年近く前に「中国では障害者は閉じ込められている」と聞いた話。

何歳の設定なのかな。おばさん(お婆さん一歩手前)は修学期間であるべきところで文革があるかもしれない。

現実にそうなのか、そうだったのかは別だけど、教育を受ける機会を失い、文字があまり読めないから詐欺に遭いやすい、文字が書けないから助けを求めにくい、という障害者の置かれた状況を説明するのに十分なシーンだったなあと。

リアリティに欠ける点

枝葉がリアルだな……と思ったけど、そうでもないところもある。

白髪のおっさんはヤクザ者を使って追い込みをかけるんだけど、今の中国監視カメラだらけじゃない。大院の監視カメラを消去させたり、みたいなのはあると思う。しかし……わからん。

少なくとも、タワーの事務所で強迫(裁判したら今度は本物の硫酸をかけるぞ。委任状を撤回しろ)してる。刑事上はちょっと難しいのかもしれないけど。少なくとも、その際に物品を壊してるので、わかりやすく力を用いた刑法犯(器物損壊)でもあるわけで。最後に中国ドラマ・映画ではお決まりの「黄毛もつかまりました」と出てきてたけど。あの段階で不法侵入!で警備を呼べよ……あ、警備も仲間なの?みたいなことは思った。

市政府か省政府かわからないけど、金融詐欺事件に気づいた役人が李淇のところに来るでしょ?それこそ行政が取り組むべき課題の一つだと思うんですよ。

裁判制度

さてその次。裁判制度がどこまで現実の中華人民共和国の裁判制度を反映してるかわからない。

张小蕊の(民事)裁判がネット中継されることを、李淇は計算していたわけね。けれど、実際のところの中華人民共和国の裁判がネット中継されるかはわからない。

日本でも今の所はしない。公開裁判の原則から、現代の技術ならネット中継できますよね、と思わなくないんだけどねえ。固定カメラ一つでいいじゃん?

さて、日本の民事訴訟法・刑事訴訟法(どっちも苦手だったよ)をかじったおれさま。ふぅーん??と思ったのはネット中継の点だけではない。

张小蕊が訴えの提起ができるのかという問題。あの子は高校生くらいの年齢という設定だけど、いくつなんだろう。18歳?

日本の民事訴訟ならば、成人していれば訴えの提起ができるけれど。未成年は原告にはなれるけれど、訴えの提起は法定代理人がやる。つまり、日本法の下で考察すると、张小蕊には両親がいなくて兄が親代わりだけど収監されてる。兄が引っかかった金融詐欺で、张小蕊も所有する財物が、なので、张小蕊に民事訴訟の原告適格はあるけれど、未成年ならば张小蕊は単独では訴えの提起ができないんです。

张小蕊が高校を卒業もしくは中退して18を過ぎてぶらぶらしているという設定なの?不登校気味で素行不良ぎみという設定だったと思ったんだけど。

馬さんは、訴えの提起をしようとしてたから、馬さんの裁判から始まって、馬さんの民事裁判を舞台に…ならこの点はスルーしてたと思う。

最後の张小蕊の裁判では、李淇も白髪のおっさんも勝ち負けのポイントを、公安案件にするかどうかに置いていた。白髪のおっさん側は、公安案件になると経済封鎖されるから、これを拒否したい。

でも、これ、建て付けとしては民事裁判なんですよ。张小蕊(と张小晨)VS白髪のおっさん。

日本の場合、李淇が目指すべきは刑事裁判であって。日本においては民事裁判と刑事裁判は完全に別物で。民事裁判をエスカレートさせて刑事裁判に、とはいかない。この場合、李淇は弁護士だから、並行する民事裁判を前提にした、刑事事件においては被害者の支援を行うと思うんですね。(刑事事件では、被害者は証人にしかなれないんですよ!)

日本の民法だと96条1項の詐欺または脅迫による取消を求めてて。民法上の詐欺の要件は、故意・欺罔行為・錯誤による意思表示・違法性。

日本の刑法だと、詐欺は246条。構成要件は、欺罔行為・錯誤・財物の交付・財産の移転、これらの間の因果関係、そしてその間を通じた故意。

なので、民法と刑法だと刑法の方が要件が厳しい。それは、刑法犯で有罪になると身体の自由を失いかねないので、要件を厳しくしないといけないから。

なので、俺さま的にお勧めする戦い方は、被害者側に時間をかけるだけの体力と精神力と財力と怒りがある場合、としか言いようがないんだけど。刑事裁判の行方を見守り、向こうが和解を求めてくることは、蹴っておく。

被害者の処罰感情は量刑で参考にされる部分です。

刑事裁判中に民事上の和解が成立すると、被害者はもう十分だと考えている、と量刑の部分で少し緩くなりがちです。刑事裁判の被告人側の弁護士さんはそれを狙うので、和解を持ちかけてくるよ。

一方、刑事裁判中に民事訴訟の訴えの提起がなされた場合。客観的に被害者の怒りが見えるわけです。そういう状況で量刑を緩めることはまずないと私は期待してる。

刑事で有罪・無罪になったら、改めて民事。刑事で身柄拘束されてから民事訴訟の訴えの提起をしてもいいと思う。逆ではない。民事で認めたことを刑事で否認に転じることはよくあるので。刑事は身体の自由を奪うし、執行猶予がついても社会生活に問題が起きるからね。死に物狂いで抵抗するものだよ。

この点、数年前に世論を賑わせた事件で、え?そこの説明を民事の弁護士さんはしなかったの?世間的に一切知られてないの?という件があったんでメモしておく。

民事の証拠・証言をそのまま刑事裁判で採用されるかというと、基準が違うからそうはいかない。逆も然り。改めて審査するのよ。けど刑事裁判の厳しい基準で審査されて採用された物的証拠なら民事に持ち込みやすいでしょう。同じ物的証拠でも刑事では無罪でも民事では構成要件が緩いから被害者が勝つことはあり得るので。

そして、民事で加害者が行った、認めるという証言を、刑事裁判で被告人としての証言でひっくり返すことはあります。キーポイントは故意の部分ですね。人としてどうよ?と思っても、ひっくり返すことは許されます。それが刑事裁判です。

個別具体的な事件に関しては、弁護士さんにどうぞ。私に聞くんじゃない。

李淇

もう、アメリカ映画はほとんど見なくなって久しいんだけど、なんかさ、この手のヒロインと主人公がくっつきがちじゃない?偏見?李淇は高校生の张小蕊に自分を重ね合わせて、救うけど、その間には何にも発生しない。そもそも恋人らしき人もいないもん、李淇には。

…汤くん?貧乏なのに万年書生の汤くんを世話してたし?

それは置いておいても、そう言えば、性的なものが一切排除されてるんですよね、李淇。少年時代の苦労の中に、好きだった女の子に貧乏を馬鹿にされた、みたいなのもあっても変じゃないのに、それすらない。

健次の作品選びは家庭環境がおかしな人(大抵父親と拗れてる)が多いけれど。

健次の他の作品の中では「你安全吗?」の秦淮のキャラが、割に李淇に近いかなあ。秦淮はすごく変な人なのよね……ドラマの尺で描くと、李淇が秦淮に被りそうだ。ただ、明らかに恵まれない家庭に育った李淇の方が何かとタフだし、ブラック寄り。

灰色なんですよ。李淇。正義の味方一辺倒ではない。hired gunという言い方があって、要するに傭兵です。依頼人の利益になるためならなんでもやるよ、というスタイルのアメリカの弁護士に使われるし、冒頭の事務所を勝手に使っちゃうところなんかも、张小蕊に演技しろと手話で指示するところも、李淇はちょっとブラック寄り。

そういえば、撮影風景として「これがロレックスだと思ってんの?リラックスだよ」ってシーンがあったけれど、秦淮っぽいと思ったんだよね。それが本編ではなかったと思うんだけど。

手話

中国の手話どころか、日本の手話もわかんないんですけどね、私。

健次の、法廷での手話がダンスだな、と思った。特に、口で喋ってる内容と、ネットで見ているだろ耳が聞こえない人に語りかける手話で話している内容が異なるシーンがあるんです。あれはダンサーならではの動きだと思う。

武漢

健次はほぼノーメイクだろうなあ。30代半ばとしてはきれいなおじさんだけど、アップにすると、肌の凸凹がそのまんまだなあと思ったんだけど、リアルよね。身長があまり高くないのも生かしてたような気がする。薄めのウルトラライトダウンジャケットみたいなのを着てて(どうも、あれはあんまりお金があるわけではないという表現だったのではないかと思う)。雨の日の武漢、そうだったよねえ、と思った。

実は本作の撮影中に、私、武漢に行ってたんですよ。天気が悪くて、おかげで空気は綺麗だった。https://anego-skyscraper.com/25-wuh/

撮影しているところを見に行きたいというよりも、公開されたらあのとき同じ都市にいたねーと思いたいな、くらいだったの。まさか、中国の映画館で見られるとは思わなかったのでうれしい。

ほぼ毎日のように、あそこで撮影してるよ、みたいなのが流れてきてたけれど、そこには寄らないようにしてた。ある、雨の日に。この大雨じゃ昨日と同じロケ地にはいないでしょうよ、と思って。前日に「ここで撮影してるよ」というのが上がってたところに行きました。というか、通りました。

それが、江漢路歩行路。ここが武漢の漢口側繁華街なのかな、なホコ天ですが。その通りの裏に小区、社区があって、ちょっとゴミっとした雰囲気を歩くと面白いだろうなあと思ってたんだよね。どうも、はじめに構えていた事務所の周辺のロケ地がどうもその辺りのようです。ラストに汤くんの事務所になるところですね。大院もあのあたりの社区を借り上げたか何かしてそう。

実はその奥で撮影してたかもね……ほら、雨の日に汤くんを呼び戻しに昔の事務所付近に行くシーンがあるでしょ。

その晩には長江大橋のたもとに現れた、とあったんだけど、観光してるのかと思ってたら、撮影じゃないですか……翌日体力的にギブってなったんだったかな。行けなかったんだよね、長江大橋の下。

江漢路からは長江は近いけれど、長江大橋がかかってる場所とは、ずれます。しかも、対岸だと思うので。まず江漢路からは一度漢江を渡って、そして長江大橋を渡るの(どうもここは〇〇の名所になってるという話で……)。走って行くのはまず厳しいと思う。

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