殺人事件を目撃した親子は現代文明を拒絶して生きるアーミッシュの出身だった。犯人から銃撃された担当刑事ジョン・ブックはふたりを守ろうとするが……。異なる世界に住む人々の交流をサスペンスとロマンスの中に描い
Witness 1985年
感想
監督はピーター・ウィアー。
本作は二つの閉鎖的な社会を描いている。一つはアーミッシュ、そしてもう一つは警察そのもの。
アーミッシュの世界ではブックとレイチェルの関係は何も始まっていないにもかかわらず、問題視される。ブックの行動は暴力的で、平和主義のアーミッシュとは相容れない。それでも、村の作業を手伝うブックは、恋敵であるはずのダニエルからレモネードを渡される程度には、そして最後に本部長に追いつめられても村人たちが出てくる程度には受け入れられていた。
それは、「閉鎖的な社会(警察)」に生きる者として、「閉鎖的な社会(アーミッシュ)」に受け入れられようとしたからかもしれない。
自分がその文化の中でマイノリティであるか否か。自分がマイノリティであればマジョリティの文化を受け入れる。それが摩擦を少なくする最も良い方法だ。短期間、ごく数年そこにいるならそれは可能だ。しかし、そこに「生きる」つまり、何十年と滞在して、底の骨を埋めると決めたならば、単純に「受け入れる」ことは難しくなる。次第に自分の文化が懐かしくなる。それでもなお、受け入れられるために自分の文化を捨てるのか。そこに葛藤がある。
ブックにはその葛藤はない。いずれ出て行く人間、その前提でいるからレイチェルとの関係に踏み出せない。そこが上手かった。