ダーク・ディグラーという芸名でデビューしたエディは、たちまちポルノ界の寵児に。しかし名声には代償が付きもの。気がつくとダークはセックスとドラッグとバイオレンスに足をすくわれ、スターダムから転げ落ちているところだった。果たして彼は手遅れになる前に、立ち直ることができるのか?
Boogie Nights 1997年
感想
監督はポール・トーマス・アンダーソン。
尊重。言い換えれば承認要求。それは人間が最も望むことなのかもしれない。
ローラーガールは唯一自分を尊重してくれたポルノ業界に入ったのだろう。承認要求が満たされるためには、自分自身が誰かを承認しなければならない。
登場人物たちはみなどこか機能不全に陥っている。ダークは厳格な母に追い出され、「俺にだって才能はある!」と飛び出る。ローラーガールはセクシーだからこそ、見下される存在だった。アンバーは誰もを愛する母のような存在だ。アンバーに承認され、ようやくみな誰かを承認できるのだ。それでも、アンバーは家庭が壊れ、子どもに会えない。ジャックは良い作品を作りたい。それなのに、ポルノ映画にとどまるしかない。ポルノ映画の中ではジャックは承認された存在だ。
外の世界は厳しい。男優が店を開きたいと銀行に行っても「ポルノの方」を連発された挙げ句、融資を断られる。ダークも、アンバーも、ローラーガールも、ジャックもポルノ業界の疑似家族の中でしか生きていけない。
お気に入りのシーンは融資をことわらられた男優が、ドーナツ店で強盗にあい、居合わせた客、従業員、強盗みなが死んでしまって金を盗むシーンだ。あの間の取り方は見事だ。
ウィリアム・H・メイシーってこう、不幸なのが似合うわねえ。アメリカ版リッキー・ホイ?