黒衣の刺客

5.0
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唐代の中国。13年前に女道士に預けられたインニャンが戻ってくる。両親は涙を流して迎え入れるが、美しく成長した彼女は暗殺者に育て上げられていた。
標的は暴君のティエン・ジィアン。かつての許嫁であった。どうしてもティエン・ジィアンに止めを刺すことができず、インニャンは暗殺者として生きてきた自分に情愛があることに戸惑う。「なぜ殺めるのか」と、その運命を自らに問い直す。ある日、窮地に追い込まれたインニャンは、日本人青年に助けられる・・・。

原題: 刺客 聶隱娘 2015年

感想

地元では上映しないので、2015年の福岡映画祭に合わせて福岡で観てきた。

なんと「文脈」「文法」が異なる物語なのか。

映像も美しい。なお、ロケ地は大覚寺や書寫山圓教寺など、日本が多いらしい。

わかりにくいと言われるが、言葉だけは饒舌な香港の王家衛の作品と、台湾の侯孝賢の作品は対極をなすように思う。

とくに人間関係がつかみにくい。しかし、女と領主の関係など、進むにつれ何であったのかがわかるようになる。赤い仮面の女だけは誰だったのかわからないが、元氏だろう。それでも、決して不親切な物語ではない。でも、領主にあんなに喋らせなくてもよかったかもしれないな、と思った。

一番は問題だったのは事前に流れた情報が「殺人組織に誘拐された少女が故郷に戻り」というところだろう。もう一つは妻夫木聡を大きく見せたかったのか、女の心を、のようなところだ。どちらも違うなあ。

異人=遣唐使の随行員が女の心を溶かしたわけでもない。もともと、女は剣の道に生きるには情が強すぎるのだ。憐れみの心があり、子供の前では殺すことを躊躇する。そういう人なのだ。

しかし、それは本当に役に立たない。しかも暗殺者としてはまるで役に立たない。殺せ、と命じたら確実に仕事をしてくれなければ困るではないか。

最近あったことなのだが、ある方に私は仕事を頼んだ。頼んだことのアウトラインは完璧に伝わっていた。メモっていたところは見た。それが、「下絵」でプランが上がってきたときに、とんでもない代物になってしまった。理由は自分の頭で考えてしまったことだった。しかも、その「考えたこと」ということの意図は見えるのだけれど、全て的を外している。任せる、とは言ったのだが「最低限押さえて欲しいこと」というものは伝えたのだ。目的と目標まで伝えたのになあ。それを無視したので「自分の頭で考えた」ことが全て的外れになってしまったのだ。

そういうことなのである。

あの女は暗殺者としては生きて行けず、かといって表の世界に戻る場所はない。アウトサイダーである遣唐使以外に女を受け入れる人はいないのだ。遣唐使。いずれ帰国するかもしれないが、阿倍仲麻呂のように一生帰国できない者も少なくなかろう。

日本版では忽那汐里と妻夫木聡のシーンは加えられたということだ。オリジナルで見るかなあ。

なお、イーサン・ルアンはちょい役。スー・チーは苦手な女優だったけれど、これはすごくよかった。

Amazonに動画が出ていることも。

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