恐怖の政治が国を覆っていたスペインの暗黒時代に、少女オフェリアは生を受けた。優しかった父が死に、身重の母親と二人で直面する現実は目を覆うようなことばかり。新しい父親はまさに独裁のシンボルのような恐ろしい大尉。生まれてくる自分の息子にしか興味を示さず、オフェリアの生きる世界は閉ざされていた。そんなとき、彼女が見つけたのはうす暗い森の中の秘密の入り口。妖精の化身である虫たちに導かれて、迷宮の世界への冒険が始まる…。
El laberinto del fauno 2006年
感想
監督はギレルモ・デル・トロ。
美しく、悲しく、暗い物語だ。
始めからオフェリアのバッドエンドが示されている。おそらく、この男が殺すのだろう、と大尉を見るわけだ。そして、この男はどうなるのだろうか、と。思わなかったのは、現実と「冒険」がオーバーラップして進んでいくことだった。
オフェリアはどうしてぶどうを食べてしまったのだろう。物語には「するな」といわれたことをやってひどい目にあう人の話であふれているではないか。子供だもの、ではすまない。「オフェリアは優秀で賢い」という前提が崩れてしまう。満足に食べてられなかったのではないだろうか。母親は妊娠して手一杯。メルセデスは綱渡り中。誰も気を配れないのだろう。そのシーンが一つあれば現実味が増すのに。