香港を舞台に警察とマフィアが10年以上に渡って互いにスパイを送り込み、壮絶な闘いを繰り広げたサスペンス・ドラマ三部作の最終章。ヤン殉職前後の2つの時期に焦点を当てつつ、警察内部に潜伏し続けるラウの、自らの運命を懸けた最後の戦いを追っていく。
原題:無間道III:終極無間 2003年
感想
ヤンの殉職から10ヶ月後の話。
時系列で並べれば、「インファナル・アフェア2」「インファナル・アフェア」「インファナル・アフェア3」と並ぶ。
三作とも、監督はアンドリュー・ラウ(劉偉強)とアラン・マック(麥兆輝)のコンビ。脚本は、アラン・マック(麥兆輝)とフェリックス・チョン(莊文強)。
1と比べると落ちるが、2と比べれば外連味が薄くて、もってまわったような演出がないのがいい。
3を見ると、1で良かったのは、謎がたくさん残っていたことだったと思った。例えば、ヤンはなぜ腕を石膏で固めていたのか。どうして精神科医のところに行くようになったのか。それの説明なしにぽんと進むので、まるで数日を切り取ったかのようにリアルだった。その謎を解いてしまったから、面白くなくなってしまう。
1が善人であるか悪人であるかわからなくなったヤンの物語だとすると、3は善人になろうとするラウの物語だった。そして、この三部作は善人になりたいがなることができない、死にたくても死ぬことすらできないラウの無限地獄の物語だった。それにふさわしく、アンディ・ラウは熱演するのだが、ちょっとやり過ぎだ。
それに対してトニー・レオンは肩の力がほどよく抜けていて良い。ラウの妄想の中のヤンは1のアイデンティティを失いかけているヤンではなく、むしろ2の絶対的な善人のヤンだ。それをうまく演じ分けていた。
レオン・ライが恐ろしいのなんの。「目的のためには手段を選ばない」ヨンはむしろ悪の側にいる。それが端正なたたずまいだから怖い怖い。めがねの奥の目は決して笑わないし。鋭い目つきのアンディ・ラウですら目も笑っていたぞ。ただ、「警察学校では書き方でAだった」というヨンは運動神経も射撃の腕もあまり良くなかったらしく、あっさりと射殺されてしまうのだが。(別に殺されなくても良かったと思うのだが。それにしても、1のヤン、2のハウ、3のヨン、とヤンの側の人々は必ず額に一発ぶち込まれて死ぬなあ。)
ケリー・チャンは綺麗なのだが「花瓶」だった。なくて良いのだが、仕方がない、ラウを狂わせる装置として必要だった。
さて、つっこみ。
2ではため口、1では「兄貴」と言っていたキョンだが、3では「俺の唯一の相棒」になっていた。どういうこっちゃ。日本語字幕の問題なのだろうか。それとも、2でキョンの立ち位置が変わったために、3では2に合わせた、ということなのだろうか。
ラウはなぜ自分がサムのイヌだと知ったマリー(妻)を消さなかったのだろうか。2ではあっさりと自分のものにならなかったマリーを売って殺させたくせに。善人でありたかったからなのだろうか。マリーもマリーだ。ラウを売らないのだろうか。ラウへの恐怖ではないだろう。離婚するし。むしろ、子供の父親を逮捕させたくない、というのがあるのかもしれないが。(リーは医者なので守秘義務があるから喋らなかった、でいいだろう)。