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ニュースの天才

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ヘイデン・クリステンセン主演。ある不祥事を起こしたジャーナリストの実話を基に。

Shattered Glass 2003年

感想

監督はビリー・レイ。

面白いのが、高校生の前での講演が「スティーブンの妄想」オチなことだ。
上辺だけなぞる「ためになる」言葉の数々。これを聞かされ続けると、真っ当な言葉のように聞こえてくる。
記者を守ってくれるマイケルは良い編集長、そして記者に厳しいチャックは悪い編集長、というように。ところが、実際には、記者=スティーブンの不正を見抜けなかったマイケルは悪い編集長だし、記者=スティーブンのおべんちゃらに惑わされないチャックは良い編集長だ。しかも、スクープをものにできないチャックは駄目記者だし。スティーブンとくれば、他の記者もうらやむような記者なのに!

スティーブン・グラスの空虚な言葉

一度目に映画館で見たときは大学院進学が決まったところだった。その前に就職活動もどきをしたのだ。そのときに出てくるのはどの会社も「スター社員」。その言葉は自信に満ちあふれているが空虚なのだ。まさに、このスティーブンの言葉のように。だから、ここが非常に受けたのだ。今回見直しても同じだった。ちなみに空虚だな、と思った会社は現在同業他社に吸収合併されてみたり、身売りしたり、存続が危うい会社になっている。イケイケだった会社ほど。それからも「空虚だな」と感じたら、それを信じて正しいことが少なくない。ベンチャー会社から大企業相手までプレゼンしていた時代があるのだが、相手に会って「ああ、スティーブがいる」と感じたら、こちらからお断りしていた。理由を聞かれると、「スティーブン・グラスがいたから」と答えるわけにも行かず、「あの方とお仕事したくありません」と言うだけだが。本当に親しい相手には「ニュースの天才って映画、見た?」と言うのだが。そして、他の方が拾ってポシャっている。

能力か、コミュ力か

それと、もう一つ思い出す。
「仕事において重要なのは能力やスキルなのか。それとも、対人関係力(いわゆるコミュ力)なのか」というお題だ。
しばらく前に「そりゃ、コミュ力でしょ」と某大企業の役員さんに伺った。だめだな、この会社、と思ったのであった。実はその会社の株主だったので、さっさと株を全て手放し、その会社のサービスも全て解約した。案の定、今その会社は業績悪化に苦しんでいる。そりゃそうだ。大前提に「一定以上の能力とスキルがあること」が抜けてしまっているから。

スティーブンを見れば良い。グロリア(秘書?)というおばさんにも「口紅変えた?」だの、恋人の記者にも気を使い、もう一人の女子社員にも、わざわざコーラ(ペプシ)のボトルを冷やしておいてやるし、ガムを配る。気配り上手でスティーブンは「ニュースの天才」というよりも、むしろ「コミュ力の天才」であった。そのせいで非常に人望があるのだ。恋人でもある同僚は「クビになんかしないわよね?」「どうしてクビにするのよ!?マーティの忠臣を切り捨てるの?」と、スティーブのためにチャックに迫ってくれる。

おそらく、前述の役員さんも人当たりの良さ、コミュ力で役員まで上り詰めたのだろう。しかし、仕事をこなす能力やスキルが絶望的にないのだ。そういう人ばかりが出世していく会社なのだろう。だからその会社の提供しようとしている商品に対して、顧客のニーズを満たすことができなくなっている。

さて、本作でコミュ力の王様のスティーブンに対するチャックは、前任者のマーティが人望があったのもあり、記者の中で人望がない。絶望的にコミュ力がないと言っても良い。

けれど、雑誌を救ったのは誰か。そもそも、雑誌記者の仕事は何か?
雑誌記者の仕事は、真実を暴くこと。そしてその雑誌を危機に陥らせたのはスティーブ。救ったのはチャック。

対人関係力は確かに必要だ。けれど、あくまでも「一定以上の能力とスキルがあること」が前提なのだ。スティーブンには対人関係力はある。けれど、ノンフィクションライターとしての能力もスキルもなかった。

ヘイデン・クリステンセン

さて、スティーブンは自分で自分の嘘を「信じている」。言ってみれば「演じている」のだ。良い演技ができる俳優というものは、おそらく、役と一体化している。演じている間だけだとしても、その役の人生を生きている。スティーブンを演じているヘイデン・クリステンセンを基準にすると、生身のヘイデンがいて、次にスティーブンがいる。そしてそのスティーブンは「スティーブンの信じるスティーブン」を演じている。メタになっているのだが、「生身のスティーブン」はラストの体をガタガタ震わせておびえる若者、それだけだ。その矮小さと虚像をよく演じていたと思う。

ニュースの天才(字幕版)

ニュースの天才(字幕版)

ヘイデン・クリステンセン, ピーター・サースガード, クロエ・セヴィニー, スティーヴ・ザーン, メラニー・リンスキー, ハンク・アザリア, ロザリオ・ドーソン
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